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厨房から出てきたJacquelineの顔は輝きを放ち、背後のRamonの優しい光が彼女を包み込んでいた。


「Anna、ありがとう。じゃあ、失礼するわ。」


私は彼女を店の外まで送り、怖れとともに店の中に踵を返した。新しく作られた次の世界に私の席はない。蚊帳の外で盗み見るだけだ。


「Jacquelineの話、聞いたでしょ?」


Ramonの弾む声は晴れやかに煌めき、私の影を照らすことなく通過する。


「ええ、すごいチャンス。頑張ってね。」

「いいの?ここを辞めて、ニューヨークに行ってもいいの?」

「いいに決まっているじゃない。あなたにはその力があるんだから。チャンスを掴んで。」


彼は私を抱き寄せて高く抱き上げる。彼の喜びは私の固まった寂寥を天まで持ち上げる。


「まだ決まったわけじゃないけど。来月面接に行くんだ。それ次第だから、まだ・・・」


彼は私をCassisに残していくことを気遣っているのだろうか。


「あなたなら絶対大丈夫よ。合格に決まってる。」


私はまずJean-Lucに報告して、Ramonを面接に行かせてくれるように話した。彼は前途洋々なRamonの未来に祝福を送ってくれた。


「求人を始めたほうがいいけど、話が決まってからかな。」

「そうね。準備しておくわ。ありがとう。」


その後Raphaelも快く受け入れてくれた。Marieには話が決まってから話すことにして、成行きを見守る。



去年のようにRamonの誕生日を二人で祝う。しかし今年は特別だ。ベガ・シシリアの赤ワインを開けることにした。彼の未来を祝いながら、私は彼の誕生日まで生きていられたことを祝った。きっと一緒に過ごせる最後の誕生日だろう。


「34歳の誕生日おめでとう!」

「ありがとう!」


グラスを合わせると赤ワインの波がさざめく。血のようにさざめく。嘆きも憂いも虚無も孤独も血に溶かして飲み干す。私の血になる。


「今年は特別ね。お祝いがRamonの誕生日だけじゃなくて、未来のニューヨークのシェフの誕生日だもの。」

「まだ決まったわけじゃないよ。」


と言いながら、彼はどんなレストランにしたいのか、どんな料理を出したいのか、具体的な構想を細部に至るまで話し出した。言葉は電飾のように煌めき、彼の顔は眩しくて直視できない。


そして彼がいなくなること、彼との時間がなくなること、それがこんなにも苦痛を伴うとは、自分の覚悟など取るに足らないものだったと思い知らされる。最初の契約にサインしたことを悔やんでみる。彼のこの先の人生に私は組み込まれていない。歴然とした事実を飲み込む。


「面接が6月の下旬になったんだ。今年は一緒にAnnaの誕生日を過ごせないよ。ごめん。」

「どうでもいいわよ、私の誕生日なんて。そもそもめでたくないんだから。」


私は精一杯笑った。惨めさが心をすぼめてみすぼらしくさせる。


「ニューヨークに食べに来てくれるでしょ?」


それは、一緒に来て欲しいという意味ではない。彼の次の人生の計画に私は必要ない。契約書に書いてあった。期間限定であることを初めから承知してサインしたのだ。契約終了日がきただけなのに、愚かな老女は何を期待していたのだろう。


「そうね、休みが取れたらね。Restaurant Angelaを守らなきゃ。」

「誰かに任せるとか、何とかなるだろう?」

「もちろん考えておくわ。」


彼への愛が終われば、私の人生も消える。もう生きる力も薄れてきた。好都合かもしれない。神様は本当に上手に私の人生を設計してくれた。投げ遣りな心に変化して、私は乱暴にグラスを宙に掲げる。私の終わりに。


「おめでとう!乾杯!」



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