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数日後、Jacquelineは約束の時間通りにカメラマンと一緒に店を訪れた。Jean-LucとRamonには早めに来てくれるように頼んでおいたが、Jean-Lucの顔が見えない。
「Ramon、Jean-Lucはどうしたのかしら。遅いわね。」
「さぁ、何も連絡ないんだ。」
Jacquelineにシェフがまだ来ていないことを告げたが、彼らは今日夕方の飛行機でニューヨークに戻らなければならないと言う。
「Ramon、Jean-Lucの代わりにお願いできない?」
私はRamonの腕を信じていた。Jean-Lucに劣らない。すでに店のメニューをすべて作れるようになっている。Jean-Lucもそれは認めていた。
「はい、わかりました。」
RamonはJacquelineから頼まれていた店の人気メニューを作り始める。前菜とメインとデザートを作り終えると、カメラマンがJacqueline の指示で写真を撮り始めた。シャッターの音が厨房で響き続ける。音の途切れたのを見計らって、私はテーブルに案内した。
「こちらのレストランはいつから始められたのですか?」
私は試食するJacquelineの隣に座って質問に答えた。彼女は食べながら器用にメモを取り、質問を続ける。
デザートに移ろうとする頃、Ramonが厨房から一皿運んできた。
「よかったら、これもどうぞ。メニューにはないけど、折角来ていただいたから。」
黒い皿の上では、赤いトマト、ラディッシュ、ビーツが何かを飾っている。メインは黒い塊だ。赤と黒の一皿。Jacquelineはお世辞なのか嬉しそうな驚きを作って迎えた。
「うわぁ素敵ね。クリスマス用かしら?メインなの?デザートなの?」
「どうぞ召し上がってみてください。」
Ramonは自信ありげに微笑んで、質問には答えずに勧めた。Jacquelineのナイフとフォークが、戸惑いながら皿の中央にある黒い塊に侵入していく。
「美味しい!何?チョコレート?そうでしょ?でも、中味は何かしら。」
アメリカ人のサービス精神なのかもしれないが、Jacquelineがその美味しさに驚いているのは明らかだった。
「茄子です。洋酒やシロップで漬け込んだ茄子をフランベして、チョコレートでコーティングしてあります。」
Ramonは簡単に種明かしをして、Jacquelineに微笑んだ。
「茄子!こんなに美味しいの?それにデザート?野菜のデザート?チョコレートは全く甘くなくて苦味がある。だからほんのり甘い茄子が引き立つのね。硬いチョコレートと柔らかい茄子の食感が堪らないわ。」
「ええ、野菜は食事という決まりはないから。」
「そうね。最近はビーガンの人口も増えているし・・素晴らしい一品だわ。ありがとう。」




