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「今、前菜で出しているクロメスキのソースを変えたくて、作ってみたんだけど、ちょっと味見して。」
Ramonが夕食を兼ねて試作を出してくれた。彼は常に料理のことを考えている。きっとシェフが天職なのだろう。私のような根無し草には羨ましい。
「いいんじゃない。今のソースともっと違いを出すなら、酸味を足したらいいかもね。」
「うぅん、なるほど、いいかもしれないな。」
「そして、ソースをどちらか選べるようにすればいいんじゃない?」
「それもいいね。」
整った顔立ちをわざと顰めさせて、Ramonは頷いて考えている。
「Jean-Lucと相談して決めて。特別な材料を使ってなければ、予算的には問題ないと思うから。」
「わかった。特に新しい食材は必要ないし、来週、Jean-Lucに話すよ。」
「さぁ、仕事は忘れて食べましょう。今週は疲れたわ。」
意図せず店の乱闘騒ぎの話になった。
「俺はストレートだけど、Raphaelがゲイだって構わないよ。俺に関わらないなら何も問題ないもん。」
「そうよねぇ、他人の恋愛にどうこう言う必要ないもの。」
「でもEdithはどうなんだろう。大丈夫なのかな。よく結婚生活続けられるな。」
私はEdithの言葉を一言一句思い出していた。
「EdithはJean-Lucを愛しているのよ。それでいいの。それだけ。」
「そうだな、まぁ俺には関係ないことだし。俺はスペイン人と結婚したいな。同じ国で生まれ育って、同じ価値観でないと結婚は難しいよね。同じ言葉で話したいし。」
私は大きな掌で冷たい平手打ちを食らった。
ずっと彼といられると思っていた浅ましい愚かな自分が露見して、辱めを受ける。彼との時間は幻想だということを、思慮のない私は忘れようとしていた。そして人生は私に間違いだと突き付けてくる。殴られて気づく。愚かだ。
人は骨の上に設えた肉で恋をする。肉は乾燥し、張りをなくし、腐っていく。生理がなくなり、子供を産む能力が消え、女の人生が終わる。もうすぐ50の女に、もう始まりはない。私の皮膚は茶色い斑点に覆われて、細かな乾いた凹凸はその数を増し、肉はもう恋ができなくなる。
私は朽ちて終わっていくのをただ見ながら無力に待つだけだ。
「珍しいね。飲まないの?」
Ramonがワインのボトルを私のグラスの上に翳して聞いてくる。濃い睫毛は瞬きの度に天使の気配を感じさせる。髭に覆われて僅かに残された頬には一つの凹凸もない。
33歳。人生が始まるだろう。人生を終えようとしている私は、グラスに残ったワインを一気に飲み干して、次の一杯を注いでもらう。アルコールは優しい。




