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今夜は予想だにしなかったことが起こったが、私はどうにか店の体裁を整えられたことに安堵しベッドに入った。
そしてRamonへの愛を見つめていた。お遊びのじゃれ合いなのか。愛と軽々しく認識していただけの張り子の虎なのか。終わることを最初に約束して始めた恋愛ごっこ。Edithの言葉にあざけ笑われる。
同時に揺るがないRamonへの想いを感じる。Edithと比べることに何の意味もない。私の愛は私のもの。私はRamonを愛している。誰も否定できない。人がたとえ否定しても、私は愛を持っている。
彼に何があっても、彼が私を愛していなくても、彼の愛が去っても・・・私は彼を愛し続ける。それは根拠のない空想なのか、とりとめのない現実なのか、わからない。私はしがみついているのだろうか。
翌日、店の中はいつも通りに流れて行った。昨夜のことには誰一人触れず、いつもの時間と繋がっていった。私もただEdithの言葉だけを胸にしまって、慣れた手順で体を動かしていった。
忙しい土曜を終えて、みな家に帰って行く。
「うちに来る?」
Ramonが今夜の二人の住処をどちらにするか、いつものように尋ねてくる。
「うん、ちょっと書類片付けてから行くわ。」
「明日でいいじゃない。なんか作って待っているよ。」
「ありがとう、すぐ行くから。表の鍵を掛けていってね。私は裏から出るから。」
「了解。あれ?鍵そこにない?ポケットに入っていたはずなんだけど・・・家の鍵と一緒にしたよな・・」
私は壁のフックに掛かった彼の鍵を見つけて、
「行くわよ!」
と彼目がけて鍵を投げた。
「ありがとう!」
彼は背中越しに手を挙げて店を出て行く。いつものやり取りをいつもより大切にしまって、私は階段を上がる。
私とRamonの関係に口を挟んでくる人はいない。仕事に支障がないからだろうか、老女と時間を無駄にする若者に注意をする人はいない。若い男に入れあげる老女を諭す人もいない。Raphaelの愛にケチをつける輩はいるのに、世の中は不公平だ。愛に種類も上下も善悪もない。愛は愛だ。誰かを愛することは美しい。愛は美しい。それだけ。
幾つか仕事のメールをチェックして、私はRamonの家に向かう。Cassisの夜の空気が冷たくなっている。また冬が来る。見えない水蒸気が冷やされて頬に当たる。入口のドアは、一度蹴るだけでもう開けることができる。一年半も通い続けた道を今夜も歩く。この歩みが当たり前の習慣になってしまったことに恐怖を感じる。空気の冷たさは、怖れかもしれない。




