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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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オズの魔法使い③オズの世界へ

陽葵さんは砂時計を見つめた。


しばらくすると、陽葵さんの目からポタポタと涙が溢れ落ちた。


陽葵「…ごめんね…」

陽葵「ごめんね…ドロシー…みんな…」


砂時計の砂が黄色く光り出した。


私「陽葵さん…終わりましたよ」


ポケットティッシュを陽葵さんに渡した。


陽葵「ありがとう…」

陽葵「そう…終わったのね…」

陽葵「…」

陽葵「恥ずかしいわ。大の大人が人前で泣いて…」


私「そんなことないです!」


私「誰でも悲しい時は泣きます」

私「でも、それでいいと思うんです」


私「それだけ、陽葵さんが真剣に向き合っていた」

私「涙はその証拠だと私は思います」


陽葵「…」

陽葵「ありがとう…」


陽葵「まさか、私より歳が十個以上も下の子にそんなこと言われるなんて思いもしなかったわ…」


私「あっ…すみませんっ!」


陽葵「フフッ…いいの!」


窓からの木漏れ日に照らされた陽葵さんの笑顔はまるで向日葵のようだった。


私「綺麗…」


陽葵「えっ…」


私「あっ…なんでもないです…」



陽葵さんは絵本を私に差し出す。


陽葵「行くんでしょ?」


私「はい…」


私は陽葵さんから絵本を受け取った。


私「お借りします!」


私「メアリさん…ネムさん…」

私「行ってくる」


新聞紙を広げて絵本を開き、床に置いた。


メアリ「アンタ一人で?」


私「私が間に合わなかった時の為にここにいて欲しいな」

メアリ「縁起でもないことを…」


私「ごめん…」


メアリ「わかったよ..」

メアリ「行ってきな…」

ネム「朱音さん。必ず戻って来て下さいねっ!」


私「うん!必ず帰ってくるから!」


私は砂時計を床で叩き割り、砂を絵本にまぶした。


すると、絵本はペラペラとめくり上がり、絵本から黄色い閃光が放たれた。


絵本から出る引き込まれる風によって、私の髪はなびいた。


私は後ろを振り返った。


私「行って来ます!」


私は絵本の上に足を乗せた。


陽葵「篠崎さん…」

陽葵「もしドロシーに会ったらよろしく…」

陽葵「あと、銀の靴は五回打ち鳴らさないように」

陽葵「必ずドロシーに伝えてほしい…」

陽葵「そうじゃないと…」


私「えっ…」

私「はい!」


体は黄色い光に包まれ、眩しいあまり目を閉じた。


足元がストンっと穴に落ちたような感覚がした。


私「落ちるっ」



そして、ゆっくりと目を開けた。


私(来たんだ…)


目を開けると背の高い無数の向日葵に囲まれ、燦々とした太陽に照られた一本道に私は立っていた。


私(陽葵さんの最後に言った言葉を聞けなかった…)


私(それにしても暑い…)

私(…夏?…)


私(ひとまず、どこか木陰に行かないと…)


私は上を眺めた。

空には前と同じく亀裂が入っていた。


私(急がないとっ!)


私(とりあえず、この道を進むしかないか…)

私(前と後ろどっちに進んだらいいの…)


どちらも緩やかな上り坂で今の場所が窪地になっており、先が見えなかった。


私(『迷ったら前。後ろを振り向くな』ってよくお父さんが言ってたな…)


私はひたすら一本道を歩き続けた。


私「暑っ!」


ようやく坂を登り切った。


すると、上から見る景色は圧巻だった。

所狭しと首を出す向日葵の光景が目に入ってきた。


私「すっごーい!」

私「これ…全部向日葵っ!」


道の先には一軒の家が見えた。


私「あのお家で少し休ませてもらおう…」


その後もひたすら歩き続けた。



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