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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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オズの魔法使い②空野さんとの出会い

凛「着いたよ」


車を降りると辺り一面に青々としたジャガイモの葉がびっしりと敷き詰められていた。


凛「あそこの小屋にいると思う」

凛「会いに行くって伝えているのかい?」

私「はい」


凛「じゃあ、私はここまでだね」


私「ありがとうございました!」


私たちは凛さんにお辞儀をして、凛さんは車で帰って行った。


私「行こっか!」


小屋へ向かった。


小屋に着くと麦わら帽子を被り後ろで長い髪を括った女性がジャガイモの土を落としていた。


私「こんにちは」

麦わら帽子を被った女性「ん?こんにちは」

麦わら帽子を被った女性「あっもしかして…」


私「はい。私、篠崎です」

麦わら帽子を被った女性「やっぱり!空野です。」

空野「空野陽葵そらのひまりです」


陽葵「本当に来てくれると思ってなかった」

陽葵「遠かったでしょ?」


私(あれ…空野さんと目線が合ってない?…)


私「まぁ…」

陽葵「そちらの皆さんは?」

陽葵「ふーん…」

陽葵「もしかして、あっちの世界の人?」


私「あっ…」

私「はい…」


陽葵「やっぱりね。髪の色とか瞳とか全く違うから…」


?「お母さんっ!終わったよ」


五歳ぐらいの男の子が入ってきた。


男の子は驚いたように私たちを見つめた。


陽葵「あぁ。ウチの息子の亮太です」


私「こんにちは」

亮太「こんにちは」


陽葵「亮太少しお父さんのところに行っておいて」

陽葵「お母さん少しお客さんと話すから」


亮太「はーい!」

亮太「バイバイ」


亮太くんが私に向かって手を振ってくれた。


私「バイバイ」

私(可愛い…)


私も手を振り返した。


陽葵「さて、本題に入ろうか」

陽葵「二階に上がって…」


私たちは小屋の二階へ上がった。

二階の壁には沢山の絵が壁にかけられていた。


私「すごーい!」


陽葵「大したことないよ」

陽葵「絵を描くのが好きでね」


陽葵「ドロシーは私の絵を好きって言ってくれた…」

陽葵「また、会いたいな…」


陽葵「さぁ、かけて」


椅子に腰掛けた。


空野さんが壁にかけてある木の本棚から一冊を取り出して机の上に置いた。


陽葵「これが私の絵本『オズの魔法使い』よ」


表紙の色は白っぽい薄橙色をしていて、ところどころ金色の装飾がなされていた。


私(綺麗…私のものと全然違う)


私「綺麗な絵本ですね」


陽葵「そうかのかな。確かにそうかも」

私「私のものは茶色一色なので…」


陽葵「そうなんだ…」


陽葵「でも、知っての通りこの世界も滅んでしまったの…」


空野さんはページをパラパラめくる。


各ページは真っ白だった。


陽葵「私が悪いの…私が…」


空野さんの表情が突然暗くなった。


私「何があったんですか?」


陽葵「ごめんね。話したくないの…」


私「すみません…」


陽「いいえ…」

陽葵「私こそごめんなさい…何年も経っているのにね…」

陽葵「今でも尾を引きずっている自分が恥ずかしい…」


私「そんなことないです。私だって…」


陽葵「あなたもあっちの世界の犠牲者ってことなのね…」


私「はい…」


空野さんはずっと晒していた目線を初めて合してくれた。


陽葵「あなたの目…」

陽葵「ごめんなさい。私もあなたのような時があったなって…」


陽葵「諦めていないのね…あなた…」


私「はい」


陽葵「そう…」


陽葵「わかったわ。協力するわ。あなたに…」

陽葵「本当はね。断ろうと思っていたの…」


私「えっ…」


陽葵「そう。有栖川さんにも伝えたわ」

陽葵「もう思い出したくないって…」

陽葵「でも、会うだけ会ってほしいって言われた…」


陽葵「そして、会って強く感じたわ」

陽葵「この子本当に諦めてないんだって…」


陽葵「私も昔はそうだった…」 

陽葵「ドロシーとみんなにもう一度って…」

陽葵「でも、ダメだったの…方法が見つからなかった」


陽葵「でも、あなたは見つけられたのよね…」


私「いや、でもその方法が正しいのかわからなくて…」

私「でも、今はそれを信じるしかなくて…」


陽葵「ううん。それでもとても羨ましいわ…」


私「私が叶えられたら陽葵さんも…」


陽葵「いいえ。今の私には大切な家族がいるの」

陽葵「亮太は私の宝物なの…」

陽葵「もしあっちの世界に行けば帰って来られないかもしれない…」

陽葵「そんなリスク背負ないわ…」


私「軽はずみな気持ちで言ってしまいました…」

私「ごめんなさい…」


陽葵「ううん。いいの。私のことを思って言ってくれたのはわかっているから…」


陽葵「有栖川さんから聞いたんだけれど、あっちの世界のことを砂時計を見ながら思い出すのよね?」


私「はい…」

私「嫌ですよね…すみません…」


陽葵「ううん。それぐらいのことは協力させてもらうわ…」


陽葵「それに私に叶えられなかったことをあなたに叶えてほしい…」

陽葵「必ず叶えて!」

陽葵「あなたならできる!そう思うわ」


私「ありがとうございます…」


陽葵「じゃあ、砂時計をちょうだい」


私はカバンから砂時計を取り出し、陽葵さんに手渡した」


陽葵「へー…不思議ね…この砂落ちないんだ」

陽葵「世界には色々なものがあるのね…」


陽葵「こうかしら?」

私「はい!」


陽葵さんは砂時計を見つめた。



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