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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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白雪姫⑧

ヴィクター「女王!お主は決してっ…決してっ…」

ヴィクター「決してっ許さんっ!」


テオ「ヴィクターそう熱くなるな!相手の思う壺だ!」

テオがヴィクターを押さえ込む。


フェリックス「女王!マリーに何をしたっ!」


女王「私は何も…」

フェリックス「何もだって…何もしていないわけがないだろ!」


女王「ただ、私はあの子と契約をしたまでのこと…」


女王「可哀想なマリー…私のマリー…」


女王「っうぅ..ううぅ…」


私(...泣いて…いるの?)


女王「っうぅ…うう…うはは…」

女王「うはは…ウッハハッハッハハー」


女王「死んだ死んだ死んだー。忌まわしいマリーが死んだー」

女王「本当にバカだ。ウッヒャッヒャッヒャー」


城内に女王の笑い声が鳴り響いた。


フェリックス「貴様ー!許さんっ!許さんぞ!」

テオ「いかん!誰かフェリックスを」


ヒューゴがフェリックスを止める。


コンラッド「さっき話していた契約とはなんだ」


女王「フフッ…いいわ。教えてあげましょう…」

女王「何があったのか…」

女王「私はまたあなたたちの小屋を訪れた」


女王「物売りに化けて、こっそりマリーをおびき寄せた...」

女王「マリーは私だと気付いていたわ…」

女王「そして、私は提案したの『私の提案をのめば、みんなには手を出さない』って」


女王「私の傭兵が小屋を囲むように潜んでいることにあの子は気付いた」

女王「マリーは私の提案を受け入れて私に大人しく付いて来た」


女王「私があの子に出した提案はね。私が丹精を込めて育てた林檎を食べること」

女王「そして、マリーは私の林檎を食べて、丁度あなた達がいる場所でもがき苦しみながら生き絶えたわ…」

女王「あなた達にも見せてあげたかった…。マリーがもがき苦しみながら死ぬ姿を…」

女王「ウッフフ…ハハッハハッー」


コンラッド「…チッ…」


テオ「ダメだ!コンラッドっ!」


コンラッド「安心せい!ワシは大丈夫じゃ…」


私「ねぇ。もうあなたがこの世で一番美しくなったんでしょ」

私「もう私たちに構わないで!」


女王「それがね。そうゆう訳にはいかなくなったのよ」


女王が手を叩く。


すると、家来たちが大きな鏡を女王の横まで運び込んだ。


女王「ねぇ…この世で一番美しいのは?」


女王は鏡に問いかけた。


鏡「この世で一番美しいのは、スノウ様です」


女王「ね?」

女王「あなたがスノウなのね」

女王「さっき、ロウウェルから聞いたわ」


女王の後ろからロウウェルが姿を現した。


イライアス「ロウウェル…なぜキミが…」

ロウウェル「まぁ、そうゆうことだ」


私(やっぱり、アイツ何か怪しいと思ってたんだ)


女王「だから、あなたにも消えてもらわないといけなくなったの...」


女王「さぁ、この林檎を食べて」

女王「美味しいわよ」

女王「あなた達はすでに籠の中、あなたが食べれば他の者には手を出さないって約束するわ…」

女王「あら、私を裏切った狩人さんまでいるじゃない…」

女王「あなたもこの子の判断次第で特別に許してあげる…」

ハン「いや、俺はもう逃げないね」

ハン「今俺が背負っているこの子に本当に申し訳ないと思っているからな」


私「ハン…」


女王「あなたそんな情に熱い男だったかしら…」

女王「まぁ、いいわ。すべてはこの子次第…」


女王「さぁ…どうする?」


私は一歩前へ出た。


ヒューゴ「ダメだ!スノウっ!」


私「ねぇ。貴方にとって美しさって何?」


女王「そりゃ美貌に決まっているじゃない」

女王「女はね。美貌こそがすべてなのよ」


私「そう…」


私はハンが腰掛けていたナイフを右手で引き抜いた。


ハン「お前っ!勝手に何をっ!」


私(鈴香さん…ごめんなさい。この場を凌ぐためなの…)


私はそのナイフで自分の額に傷を付けた。


ヒューゴ「スノウっ!キミは何を!」


私「これで満足?」


女王「フッ…フッ…ハッハッハー」


女王「額に傷!…随分と大胆にいったわね」

女王「ブッサイクだわ。あなた」

女王「顔に傷がある女なんて誰も寄ってこやしない…」


女王「鏡、この世で一番美しいのは?」


鏡「スノウ様です」


女王「はぁあ!何でっ!こんなにブサイクなのよ!」


鏡「スノウ様です」


女王「一体どうなっているの!」


私(鏡さん。女王って言ってくれれば良かったのに…)

私(仕方がない…)


私「どうやら、美貌だけではないようね」

私「こんな傷物を一番美しいって応えるのだもの」

私「そう。あなたはもう女として、いや、人として魅力がないなのでは?」


私「鏡さん。この世で一番醜いのは?」


鏡「女王様です」


女王「はぁあ!?ありえないわっ!」


女王は手に持った杖で鏡を叩き割ろうとした。


その瞬間、鏡は眩い閃光を放った。


私(眩しい…)


目を開けると女王の姿が消えていた。


鏡を見ると、鏡の中には女王の姿が映し出されていた。


女王「おいっ!出せぇー!」


女王は何度も鏡を叩き割ろうとするがびくともしない。


私「これがあなたの末路よ」

私「これまで犯した罪をそこで反省するのね」


女王「この小娘がぁー!うわぁー!」

女王「鏡!出せぇー!ここから出せぇー!」


鏡「できません」

鏡「美あるものに対して傷つけようとするあなたを野放しする訳にはいきません」


女王の家来たち「うっ..うわぁー…」

女王の家来たちが木の根に体を巻き取られた。

そして、一瞬でガイコツと化した。


私「みんな!逃げるよっ!」


木の根は逃げる私たちを追いかけて来た。


テオ「みんな!枯れた森を切り抜けるんだ!」

テオ「おそらく、あの根はそこまでしか追って来られないはずだっ!」


私たちはなんとか全員無事で枯れた森を切り抜けることができた。


テオ「はぁ…危なかった…」


後ろを振り返ると、動く木の根がすぐ後ろまで差し迫っていたことを知った。


ヴィクター「すまんかった。ワシは怒りのあまり我を失っておった」

ヴィクター「リーダー失格じゃ…」


私「違う。ヴィクター。あなたは本当に仲間思いのステキなリーダーよ」

私「きっと、マリーもみんなもそう思っているわ…」


私は落ち込むヴィクターの背中を撫でた。


空を見上げた。


私(まずい…もう時間がない…)


亀裂が空全体に行き渡っており、空の端からだんだん崩れて落ちてきていた。


私「ごめん。みんな!急がないといけないの!」

ヴィクター「みんな!理由はわからんがスノウがそう言っておる!」

ヴィクター「急ぐぞい!」


私たちは急いで小屋まで戻った。


走ってなんとか小屋に着いた。


ハンが背中に背負ったマリーを下ろした。


私はハンの背中に付いていたマリーの髪をそっと手に取った。


私「みんなごめん!時間がないのっ!」

私「ここでお別れ」

私「みんなには感謝してる!ありがとう」

私「また私、みんなに会いに来るから!」


ヒューゴ「うん!わかったよ…」

ヒューゴ「元気でね。スノウ…」


私「うん!」


私はみんなに見送られて、小屋を出た。


私(ごめんね。みんな…)

私(本当はマリーをなんとかしてあげたかった…)


小屋を出ると、こっちの世界に来た時に見た緑の光がまた現れた。


私(ついて来いってこと?)


私はその光を追った。


その先には絵本の形をした出口があった。


空が崩れ出し、辺りが粉のように消え出した。


私「まずいっ!」


私は勢いよく頭上の出口に飛び込んだ。


目を覚ますと、そこには鈴香さんと彩さんの姿が…


間一髪だった。


鈴香「おかえりなさい…」

私「ただいま…」


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