表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
92/116

白雪姫⑦

しばらく歩き続けた。


ヴィクター「ここから先は枯れた森の一帯だ」

ヴィクター「一旦ここらで休憩しようと思うが...」


イライアス「エコー...どこか休めそうな場所はあるかい?」

エコー「うーん...」

エコー「この先に洞窟があるよ」


ヴィクター「そこでいいかの?」

私「うん」


私たちは洞窟へ向かった。


エコーが洞窟前に立つ。


エコー「誰もいないみたい...」


ヴィクター「では、中に入ろう」


フリスキー「僕、みんなが食べられる木の実を集めてくるね」


私「ありがとう。気をつけてね」


フリスキー「うん」


フリスキーは木をよじ登っていく。


テオが燭台付きキャンドルを鞄から取り出し、マッチで火を付けた。


そして、薪を組み、キャンドルの火を移して、その上に鍋を置いた。


私「何か作るの?」


テオ「まぁ、簡単に。フリスキーが木の実を集めて来てくれるそうだから」

テオ「持って来た米を使って、木の実がゆでも作ろうかと...」


私「木の実がゆっ!美味しそう!」


テオ「そんなに美味いものではないぞ」

私「そうなの...?」


私「あったかい...」


焚き火に手をあてた。


暖をとっている間にフリスキーが帰って来た。


フリスキー「おーい。みんなー」

フリスキー「木の実を沢山集めたんだけど、誰か運ぶのを手伝ってくれない?」


私「分かったー。今行くー」

私「ねぇ。ハンも」

ハン「えっ…俺も?…」

私「早く行くよ!」

ハン「あぁん…わかったよ…お嬢...」


ハンと一緒に表へ向かった。


表へ出ると山のように木の実が積み上げられていた。


私「え...これ全部!?」


フリスキー「うん。この辺、木の実が沢山なっていたんだ」

私「すごいっ!」


フリスキー「へへっ...そんなことないよ...」


私とハンは両手で木の実を抱えながら、フリスキーを連れて洞窟の中へ戻った。


私とハンはテオの指示の元、木の実の殻をとって中の実を水で洗った。


ハン「なんだけあったのに意外とこれだけなんだな...」

私「本当に...殻を剥くと意外と食べられる部分て小さいんだね...」


テオは木の実をおかゆに入れ、少量の塩をまぶして蓋をした。


テオ「少し煮たせばすぐできる」


テオ「できた…」


テオがお椀を鞄から出して人数分お椀に移した。


ヴィクター「テオ...いつもありがとう」

テオ「なぁに、大したことではない」


ヴィクター「それでは、作ってくれたテオと自然に感謝をして頂こう!」


みんな「いただきます!」


私「ほのかな木の実のいい香り...」

私「いただきます!」


私はスプーンですくって口に入れた。


私(味は塩だけで素朴だけど、なんだか奥深い...)

私「美味しいっ!」

私「うん!すっごく美味しいっ!」


私(この木の実...何に近いかな...)

私(胡桃だ...)


テオ「よかった」

テオ「そんなに喜んでくれるとは思わんだよ」


みんな「美味しい」って言いながら頬張って食べていた。

ハン「うん。これ美味いなっ」


食べ終えて少しお腹を休めた。


私(すっかり忘れてた…)

私(私がこの世界に来た目的…)

私(マリーさんから髪をもらわないと…)

私(鈴香さんの命も残りわずか…今回で必ず手に入れないといけない)

私(この世界は記憶の世界…つまりは、偽りの世界…)

私(だから、感情移入しないよう割り切ることも必要になってくるはず…)

私(わかってはいるんだけどさ…ずるいよみんな…)

私(優しいんだもん…)


ヴィクター「さぁ、そろそろ行こうか」


再び歩き出した。


ヴィクターが足を止めた。


ヴィクター「さぁ、ここから先は枯れた森...つまりは女王のテリトリーだ...」

ヴィクター「注意するように...」


ヴィクターより向こう側の木の幹にはひび割れが刻まれており、木の根は地表にむき出しになっていた。


ルン「ひどいね。女王は…」

ルン「ようやく僕の番だね...」


子鹿のルンがヴィクターの前に出る。


ルンは枯れた木の根にキスをした。


すると、その根は本来の色を取り戻し、うごめきながら土の中へ潜っていった。


ルン「僕より先に歩くと木たちに襲われる。だから、必ず僕の真後ろを歩くように...」

ルン「本当はこの木たちすべてを治してあげたいんだけどね...」

ルン「今は...」


ルンに続いて枯れた森を歩いた。


辺りは不気味な雰囲気に包まれていた。


ルン「さぁ、見えてきたよ。あれが女王の城だ」


私たちは木陰に隠れながら城の入り口を観察した。


入り口には銀の甲冑をつけた傭兵が二人待ち構えていた。


ルン「すんなり入れてくれそうにはないね…」


イライアス「モス…この薬をあの傭兵に吸わせられるかい?」


モス「まかせろ」


モスは周囲の色に擬態して見えなくなった。


私「本当に消えた…」


傭兵は突然、力が抜けたように床に倒れた。


イライアス「うまく行ったようだね」


ヴィクター「さぁ、先を急ごう!」


門をくぐり抜けて、城内へ入った。


城内は薄暗く、中の警備は意外と薄いように見えた。

ヴィクター「誰もいないのか?…チャンスだ」


ヴィクター「マリーはどこだ」

ヴィクター「城内は広い。二人一組、もしくは三人一組になって、手分けして探すぞ」

ヴィクター「何かみつけたら、大声を上げるように」


私はヒューゴと一緒に地下を探すことになった。


ヒューゴ「スノウ…なんだか不気味だね…ここ…」

私「うん…」


城内左にある地下へと続く階段を降りた。


階段を降りると、その先には祭壇のようなものがあった。


祭壇への道は一本橋になっており、石橋の両脇は底が見えないほどの奈落だった。


私「行く?」

ヒューゴ「うん…」


私とヒューゴはゆっくりと石橋を渡った。


私たちが通り過ぎるたび左右の松明に青い炎が灯る。


祭壇には石の棺が置かれていた。


とても嫌な予感がした。


ヒューゴ「開ける?」

私「うん…」


ヒューゴと力を合わせながらゆっくりと棺の蓋を横にずらした。


するとそこには、女の子の姿が…


ヒューゴ「マリーだっ!」

ヒューゴ「そんな…マリーっ!だめだよ。そんな…」


ヒューゴは落ち込み、その場で崩れるように膝をついた。


私「みんなーっ!」


私は大声で叫んだ。


しばらくして、みんなが集まった。


ヴィクター「そんな…マリー…マリー…」

ヴィクター「ワシじゃよ。マリー…」


ヴィクターが声をかけるもマリーの返事はなかった。


テオ「ヴィクター。僕がみるよ」


テオはマリーの心音と呼吸を確認した。


テオ「…すでに死んでいる…」

テオ「僕らは間に合わなかった…」


ハン「そんな…」

ヴィクター「そんなのダメじゃよ。そんなの…」

フェリックス「マリー…応えてくれよ…マリー…」

イライアス「何でなんだい…優しいキミが…キミがなぜ」

ヒューゴ「マリー…マリー…っうぅっ….」

レオン「マリー…息をしてくれよぅ…マリー」

コンラッド「マリー…お主はまだ終わってはならん…」


テオ「マリー…キミに何があったんだい…僕らがもっとキミの話を聞いてあげていれば…」


小人たちはマリーの死を悲しんだ…


私(ひどい…酷すぎる)

私(何の罪もない女の子の命を自分の美のために…)

私(許せない…許せないよ…)


私「みんな…ごめん」

私「今こんなこと言うのは悪いと思うけど、このままここで悲しんでいても仕方がないと思うの…」

私「マリーはまだ助かるかもしれない。まだ諦めちゃダメだよ…」


ヴィクター「お主は黙っておれ!」

私「ごめん…」


ヴィクター「すまん…。スノウ…こんなこと言うつもりは…」

ヴィクター「だが今は…今は…」


私「…ごめん。ごめんね…ヴィクター…」


テオ「ヴィクター…それは違うよ…。スノウの言う通りだ」


テオ「このまま、ここにいてはマリーの身体の腐食は進むだけだ…」

テオ「僕もスノウと同じでまだ諦めたわけじゃないっ」

テオ「一旦、スノウの身体を持ち帰って、ウチにあるガラスの棺に入れて腐食が進まないようにしたい」


テオ「ヴィクター…」


ヴィクター「…すまん。あまりのことで感情をコントロール出来んくなっておった…」

ヴィクター「…分かった…ウチヘ運ぼう…」


私「ハン…頼める?」

ハン「あぁ…」


ハンはそう言って、冷たくなったマリーの身体を背に背負った。


ハン「…キミに悪いことをした…」

ハン「すまなかった…」


私たちは来た道を引き返し、地上に出た。


?「隠れてお城の探索?一声かけてくれればいいのに…」


黒い衣装を着た女性が待ち構えていた。


ヴィクター「女王!お主は決してっ…決してっ…」

ヴィクター「決してっ許さんっ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ