白雪姫⑤
私「みんな紹介ありがとう」
私「じゃあ、今のをまとめると...」
私「赤色がヴィクター、黄色がフェリックス、緑色がテオで、青色がイライアス、紫色がヒューゴ、ピンク色がレオン、オレンジ色がコンラッドだね」
私「これで合ってる?」
みんな「合ってるー!」
ヴィクター「ささ。外は寒かろう...中に入りな...」
私は中に入れてもらった。
私「お邪魔しまーす...」
私「うわぁー...」
フェリックス「どうしたの?...」
小屋の中は外観からは窺えないほどにとても広く、天井の高さは私が立ち上がっても問題ないほどだった。
私「いや、想像していたよりも...うんと広くて...」
コンラッド「そりゃあ。ワシが作ったからな...」
コンラッドが自慢げに服の袖を捲り、腕をグルグルと振るわせた。
私「コンラッドが全部?」
コンラッド「おうよ!っと言いたいところだが...」
コンラッド「俺は力仕事専門でな...図面なんかはテオに頼んだ」
私「テオが考えたの?」
テオ「うん。そうだよ」
私「二人ともすっごいっ!」
コンラッド「へへっ...そんなことはねぇさ...」
テオ「フフッ...」
私「それに...とってもキレイ!」
内装もおしゃれでペルシャ絨毯のようなものが敷かれており、灯りは至る所にキャンドルが置かれていた。
レオン「内容は僕が考えたのさ...」
レオン「だって、みんなセンスの欠片もないんだから...」
レオン「コンラッドなんてさ...大きな岩をテーブルにしようとするし...」
レオン「こういった。アンティーク家具じゃないとトキめかないよ...」
コンラッド「いや、それについてはまだ納得しておらんっ!」
コンラッド「そんなへなちょこの薄っぺらい木だとすぐ壊れるっ!」
コンラッド「その点、石は丈夫だ。どう扱ったところで壊れはせんっ!」
レオン「いやいや、コンラッドキミには何度も言うが『センス』ってものがなさすぎるんだよ」
レオン「このステキな絨毯の上にゴツい岩のテーブルを置くってか?はぁー?ありえっないね!」
コンラッド「やんのかッ!」
レオン「はぁあ?そっちがその気ならとことんっ!やってやるよ!」
ヴィクター「オッホンッ!」
ヴィクターが咳き込むと二人は突然静かになった。
ヴィクター「二人とも...ちょいと仲が良すぎではないか?」
ヴィクター「毎日、同じやり取りをして飽きんのかい...」
コンラッドとレオン「フンッ!」
ヴィクター「ささ、立ち話もなんだ...これからどうするのかを座って考えよう...」
奥の席にはすでに私用に大きな椅子が用意されていた。
私とみんなはそれぞれ席についた。
ヒューゴ「スノウ...寒い?」
私が身震いしている様子を見てヒューゴが声をかけてくれた。
私「暖炉があるおかげで、だいぶマシになってきたよ」
ヒューゴ「そう?...あっそうだ!ホットハニー入れてくるね」
私「ありがとう。ヒューゴ」
ヒューゴ「うん!」
私(ヒューゴはとっても優しいなぁ...)
ヒューゴはそう言って階段を降りて行った。
私(地下もあるんだ...いったいここはどれだけ広いの?...)
ヴィクター「さぁ、これからなんだが...」
ヴィクター「どうする?」
ヴィクター「もう一度確認させてもらうが、スノウお主本当に何も覚えておらんのか?」
私「うん...そうなの...」
ヴィクター「そうか。それでは仕方がないのう...」
ヴィクター「フェリックス...これまで起きたことの説明を頼めるか?」
フェリックス「任せろ。リーダー」
フェリックス「じゃあ、説明するよ」
私「うん。お願い」
フェリックス「この国はね。ある女王が統治しているんだ...」
フェリックス「でも、その女王は酷い人でね...」
フェリックス「娘のマリーを嫌っているんだよ」
フェリックス「マリーは実の娘ではないんだけど...フフッ...」
フェリックス「ごめん...今笑うところじゃなかった...」
私(マリー...確か鈴香さんが言っていたような...)
私(そっか...今までの話からおそらくマリーは白雪姫のことだ)
ヒューゴ「お待たせ...スノウ...」
ヒューゴが湯呑みを私の前に置いてくれた。
ヒューゴ「熱いから冷まして飲んでね...」
私「ありがとう...ヒューゴ...」
ヒューゴ「うん!」
私「ごめん。フェリックス...続きをお願いできる?」
フェリックス「うん」
フェリックス「それでね。女王は自分がこの世で一番美しいと思っていたんだ...」
フェリックス「マリーが生まれるまでは...」
フェリックス「女王は魔法の鏡があってね。この世の全ての真実を語ってくれるんだ」
フェリックス「そして、マリーが生まれてから鏡はずっとこう答えたそうなんだ...」
フェリックス「この世で一番美しいのは白雪姫だって...」
フェリックス「白雪姫ってゆうのは国民がマリーに付けた呼称なんだよ...」
フェリックス「それから、女王がマリーに対する態度は一変したんだ」
フェリックス「マリーは国から追放されて、たった一人で森を彷徨ったんだ...」
フェリックス「そして、彼女は僕らに出会った」
フェリックス「緑の光を追いかけたらここに着いたって...」
私(同じだ...)
フェリックス「それからマリーと僕らは共に生活をしたんだ。ここでね...」
フェリックス「暫くの月日が経った」
フェリックス「マリーもここでの生活にだいぶ慣れてきた」
フェリックス「女王の読みでは森にたった一人では生き長らえないと思っていたんだろうさ...」
フェリックス「でも、いくら日をまたいでも鏡の答えは変わらなかった...」
フェリックス「そして、女王は一人の敏腕な狩人を雇ったんだ...マリーを殺す為のね...」
私「酷い...」
フェリックス「だろう?女王は美しさを求めるあまり超えてはいけない境界線を超えてしまったんだよ...」
フェリックス「ある日、狩人がやって来た」
フェリックス「僕らはそんなこと何も知らなかったから、襲われたのさ...」
フェリックス「僕らは抵抗したけど、そんなのは虚しく」
フェリックス「狩人はマリーに差し迫ったんだ...」
フェリックス「もうダメかと思ったんだけど...」
フェリックス「狩人はナイフを振り翳したと思ったらなぜか腕を止めたんだ...」
フェリックス「そして、その場を去って行った」
フェリックス「女王のさしがねだったって知ったのは後の話さ...」
フェリックス「まぁ、その後も鏡からの答えは変わらないわけで...女王は怒り狂った」
フェリックス「それからというもの...女王は物売りに化けてここに自ら訪れたんだ...」
フェリックス「僕らが居ない隙をみて、腰紐をマリーに売りつけたのさ」
フェリックス「そして、腰紐を締めてあげる振りをして彼女の首を締め上げた」
私「なんてことを...」
フェリックス「そして僕らが戻って来た時には、すでにマリーは息をしていなかったんだ...」
フェリックス「僕らはあたふたしていた...もう助からないと思っていたんだ...」
フェリックス「そしたら、キミがどこからか突然現れたんだ...スノウ...」
フェリックス「キミはマリーに息を吹きかけ、何度も腕でマリーの胸を打った」
フェリックス「そして、マリーは奇跡的に息を吹き返したんだ...」
フェリックス「本当にあの時はみんなホっとしたよ...」
フェリックス「そして、僕らはスノウを暖かく迎え入れたんだ」
フェリックス「マリーも同じ年ぐらいのお友達ができてとても嬉しそうだった..」
フェリックス「でも、ホッとしたのも束の間...」
フェリックス「ある日、起きたらマリーがいなかったんだ...」
フェリックス「そしてマリーの枕元には、置き手紙があった」
〜〜〜〜〜 みんなへ 〜〜〜〜〜
突然のことでごめんなさい。
これ以上、みんなには迷惑をかけられない...
みんながいつ襲われるのか怯えながら生活をしているのを見てられないの...
ごめんなさい...私のせいでみんなに迷惑をかけて...
女王とけりを付けてくる...
こんな私を温かく迎え入れてくれてありがとう...
マリー
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
フェリックス「『何勝手にあの子はっ!』ってキミは怒った」
フェリックス「そして、キミはマリーを追って王城に向かおうとしたんだ」
フェリックス「僕らはこんなに小さし、あまり力にはなれないだろうけど...一緒に付いて行くことをキミに伝えた...」
フェリックス「でも、『もし、マリーが引き返して来た時に温かい家がなくては可哀想だから』ってキミは一人で出かけたんだ...」
フェリックス「それから二日が経ってから記憶がないキミが帰って来たんだよ」
フェリックス「そして今に至る...」
私「...そうなんだ...」
フェリックス「その様子だと初めて聞くような素ぶりだね...」
私「ごめん...」
フェリックス「いや、気にしなくてもいいよ...」
ヴィクター「それを踏まえた上でどうする...スノウ...」
私(助けに行くべきだとは思う...けど...)
私(私で大丈夫か?...)
私(でも、時間もないだろうし...)
私(今すぐにでも行かないと、きっと間に合わない...)
私「私一人で助けに行く!」
ヴィクター「おめえさん大丈夫かい...」
私「うーん...。うん...」
フェリックス「本当に一人で大丈夫?」
私「うーん...うん...」
コンラッド「本当かよ...森には狼がウヨウヨいるぞい。それに城までの道はわかるのか?」
私「やっぱり...」
私「...やっぱり...一人じゃ無理かもっ」
みんな「ドッピャーーーーン!!!」
私以外のみんなが椅子から転げ落ちた。
ヴィクター「わかったわかった。今度は付いて行くよ」
ヴィクター「二日も経てばおそらくマリーは王城に着いている頃だろうよ...」
ヴィクター「じゃあ、明日の明朝に出発するぞっ」
ヴィクター「みんなわかったか?」
みんな「おー!」
私「いや、それじゃあ遅い...」
ヴィクター「え...」
私「ごめんね...みんな...」
私「それじゃあ、間に合わないかもしれないの...」
私(元の世界では絵本が開くのは一瞬だった...)
私(有栖川さんはあっちの世界では一日あるかないかって..言っていた...)
私「ごめん...みんな...」
私「無理を言って悪いけど、今から出発できる?」
みんな「えぇーーーー!!!」
私「ごめんね...」
ヴィクター「敢えて夜を避けたのは狼たちとの遭遇を避ける為なんじゃ」
ヴィクター「彼らは夜に活動するからのぅ...」
ヴィクター「まぁ、時間がないのならば仕方がない...」
ヴィクター「詳しくは聞かないが何か事情があるのだろう...」
ヴィクター「さぁ、みんなっ準備を始めようじゃないか」
みんな「おうよ。リーダー!」
のんびりやのイライアス以外は各々準備を進めた。
ヴィクター「さぁ、みんな準備は」
みんな「オーケーさ。リーダー!」
ヴィクター「イライアスは...どうだ?」
イライアス「僕は最初から準備できているよ」
ヴィクター「そうか。では、出発するぞ!」
ヴィクターに続いて、外に出た。
ヒューゴ「スノウ...少ししゃがんでくれる?」
私「うん...」
私はしゃがみ込み、ヒューゴは私の後ろに回って私の首に何かを巻きつけた。
私「これっ...いいの?」
ヒューゴ「うん!僕らスノウにちゃんとお礼できてなかったからさ...」
ヒューゴ「この前からスノウの為にみんなで少しずつ編んでいたんだ...」
私「ステキ!...ありがとう。ヒューゴ、みんなっ」
それは、色とりどりの毛糸で編まれたマフラーだった。
みんな「うん!」
私(みんなとっても優しい...)
私(嬉しいなぁ...でも、ごめんね。本当は鈴香さんに渡すものなんだよね...)
私(今はみんなの気持ちを素直に受け取っておくね...)
ヴィクター「イライアスあれ頼めるか?」
イライアス「うん。いいよ」
イライアスはオカリナを取り出して音色を奏でた。
私「いい音...」
深い静かな夜の森の奥深くに小さな音色が響き渡った。
音色に引き寄せられたのか、草むらと空から動物たちが集まって来た。
イライアス「紹介するよ。森のお友だちを」
読者の皆様申し訳ございません。
今回はそれほど物語の進展はありませんでした。
また、近々続きを投稿しますので引き続きよろしくお願いします!