白雪姫②
私「追い返されちゃった…」
メアリ「ここで諦めるわけにはいかないだろ」
私「うん…」
私「わかっているんだけどね…」
私「私、彩さんの気持ちもわかるんだ…」
私「でも、メアリさんの言う通り、ここで諦めるわけにはいかない…」
しばらくその場で考え込んだ。
朱音「今日は諦めるしかないかな…」
メアリ「うーん…あの様子だとね…」
メアリ「ネムは?」
ネム「そうですね…鈴香さんのいる病院もどこにあるのかわからないですし…」
ネム「そうするしかないか…」
朱音「そう…だね…」
朱音(何かできること…ないかな…何か伝わるものがあれば…)
朱音「手紙だ」
メアリ「手紙ねぇ…」
私は、床にキャリーバッグを背にして便箋を広げて手紙を書いた。
〜〜〜〜手紙〜〜〜〜
白森さんへ
突然の訪問ごめんなさい。
お母さんとの時間は何よりも大切ですよね。
私も幼い時、母がいました。私はお母さんが大好きでした。それで母がいつもいることが当たり前だと思っていた。でも、そうじゃなかった…。母を失ってから初めて私気付いた…。お母さん…もう…いないんだって…。もう逢えないんだって…。母を失ってから、私は精神的におかしくなって自傷を繰り返しました。でも、お兄ちゃんがずっとそんな私を支えてくれて…。お兄ちゃんが居てくれたからなんとか…なんとか乗り切れた。でも、そのお兄ちゃんも今は…。また、逢えるのならばお母さんに逢いたい…。お兄ちゃんに逢いたい…。お父さんにも逢いたい…。ずっと思っています。そんなの無理だってことはわかってはいます…。でも…でも、諦め切れないんですよ…。だって、愛してるから…。まだ、心の中のどこかでこう思っている自分がいるんです…。また、家族みんなに逢えないかなって…。また、家族四人で机を囲んで…。何気ない会話をするだけでいい…。もう一度…。もう一度だけって…
私…バカですよね…。
ごめんなさい。こんな小娘が言うのはなんですが、お母さんとの時間を大切になさって下さい。
たとえ覚えてくれていなくても、側にいる…。明日を迎える。生きているってとても素敵なことだって思います。
何かあったらご連絡下さい。
篠崎朱音
090-xxxx-xxxx
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私「できた」
メアリ「いや、それだとこっちの目的が伝わってないだろ」
私「いいのっ。これで」
メアリ「ふーん…」
手紙を封筒に入れて郵便受け入れ、私たちはその場を去った。
私「じゃあ、予約しているホテルに行こうか」
メアリ「そうだね…」
突然、ネムさんの足元がふらつき、倒れそうになった。
慌てて私は、ネムさんの肩を支えた。
私「大丈夫?」
ネム「何だか急に…」
ネムさんの額に手を当てた。
私「うわー。すごい熱」
メアリ「ネム大丈夫かい?」
私「大通りまで出て、タクシーを止めよ」
二人でネムさんの両方を支えながら歩いた。
ネム「すみません。足手まといに…」
私「そんなの思わなくていいから」
私「気にしないで」
メアリ「そうだよ。ネム」
メアリ「これからも、三人で頑張るんだから」
私「そうだよ」
ネム「はい…」
タクシーに手を振った。
なんとかタクシーに乗り込むことができた。
ホテルにチェックインし、ベッドにネムさんを寝かしつけた。
私「お薬買ってくるけど、それでも治らないようだったら病院行こう」
私「ネムさんをお願い」
メアリ「うん。わかったよ」
私はドラッグストアに向かい、風邪薬を買って戻った。
私「どう?」
メアリ「相変わらず熱があって辛そうだね…」
私「ネムさん。これお薬だから飲んで」
私はネムさんの上半身を起こし、水の入ったグラスと錠薬を渡した。
ネム「ありがとうございます」
ネムさんは薬を飲んだ。
私「今日は安静に」
ネム「すみません…」
私「うん…」
そのままネムさんは眠った。
その日は、コンビニで買ったものを軽く食べて明日を迎えた。
私は翌日九時頃起きて、ネムさんの額に手のひらを当てた。
メアリ「おはよう」
メアリ「ネムはどう?」
私「落ち着いたけどまだ、若干熱があるみたい…」
私「ちょっと電話するね」
私はスマホに昨日の二十一時頃に着信があることに気がついた。
私
私はその番号に折り返しの電話をかけた。
白森彩「篠崎さんですか?」
私「はい。篠崎です」
白森彩「お手紙読ませていただきました」
私「読んで下さったのですね」
白森彩「はい」
白森彩「すみません。昨日は突き返してしまって…」
白森彩「私、独りよがりだったなって…」
私「いえいえ、そんなことありません」
白森彩「手紙を読んでこう思ったんです」
白森彩「いい子だなって」
白森彩「母に会って欲しい…って」
白森彩「母に会いたい理由は分かりませんが、是非会って下さい」
私「彩さん…ありがとうございます」
私「お母様の貴重なお時間を頂きます…」
白森彩「はい」
白森彩「『さくらが丘総合病院』前に本日の十一時に来てもらえますか」
私「はい!」
私「あのー…」
白森彩「絵本ですよね。一緒に持っていきます」
私「ありがとうございます」
白森彩「それでは…」
私「はい」
私「二人とも…白雪さん無事なんとか会ってくれるようになったよっ」
メアリ「本当かい」
私「うん」
ネム「あの…ゴホッゴホッ…」
私「無理しないで…」
ネムさんは「分かった」ということで頷いた。
メアリ「私はこのままネムをみておくよ」
私「うん。ごめんね…」
私「行ってくる」
作者より
読者の皆様。今年はありがとうございました。
エピソードを更新する度にアクセスしてくださっていることがとても嬉しく、「ここまで書き続けてよかった」と心より思っております。
作品を読んで頂いているということは皆様の貴重なお時間を頂いているということ…。皆様の一日が実り多きものとなりますよう来年も書き続けてまいります。
2025年も『忘却のグレーテ』をよろしくお願い致します。
作者「グレーテ…何かみんなに伝えたいことある?」
グレーテ「うん」
朱音より
みんな…辛いこと…悲しいこと…それぞれあったと思う。
もしかしたら、もう今どうすることもできない状況なのかもしれない…
私もすべてを失った時そうだった…。何度も壊れた…
どうしようも出来なくなった…
でも、今日ここにいる。生きている。
私は望みを叶えられるまで諦めないよ。絶対に!
私は乗り越えてみせる…この辛い時を…日々を…未来の自分が幸せに…みんなが幸せになれるように…
今年は読んでくれてありがとう。本当に嬉しかった。
来年、皆さんにとって良い一年になりますように…
そして、来年は私の望みが叶いますように…