メンバーリスト
有栖川「フフフッ…じゃあ、さっそく…」
有栖川「これが『迷える少女の会』のメンバーリスト」
有栖川さんは一枚の用紙を机の上に置いた。
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赤ずきん 朱川紅空
愛知県狼谷町紅葉通二丁目五番地
白雪姫 白森鈴香
青森県霧氷市白霞台一丁目十一番地
シンデレラ 月宮瑠奈
東京都白金区時計台通り五丁目十番地
人魚姫 水音碧依
和歌山県潮音市月ヶ丘七丁目四番地
オズの魔法使い 空野陽葵
北海道虹谷市風車通り六丁目十二番地
いばら姫 藤咲花蓮
茨城県水戸市霞ヶ原三丁目一番二号
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有栖川「もう何十年も会っていないから、どうかしら…」
有栖川「みんな元気だったら良いけど…」
有栖川「みんな全国各地に住んでいるでしょ…」
有栖川「だから、また昔のようにここに集まってくれれば良いんだけれどね…」
有栖川「この住所…もう違うかもしれない…」
私「あの…他の連絡先とかって…」
有栖川「ごめんなさい…手紙でのやり取りしかしていないの…」
私「そうなんですか」
有栖川「今となれば聞いておけばよかったわね…」
私「いえいえ。大丈夫です!」
有栖川「どうする?」
私「手紙を送っても全員に届くかはわからない…」
私「なので私、皆さんを尋ねます!」
有栖川「えっ…それ本当に言っているの?」
有栖川「かなり大変なことよ…」
私「十分にわかっています」
私「でも、そうしないと叶えられないと思うんです」
有栖川「そう…」
有栖川「わかったわ…」
有栖川「それじゃあ、私からも皆んなに手紙を出しておくわね」
有栖川「あなたが訪ねている間に返事が来るかもしれないでしょ」
私「ありがとうございます!」
有栖川「ええ」
有栖川さんはそう言って微笑んだ。
有栖川「そうだ…」
有栖川さんが書斎から出て隣の部屋に向かった。
少しすると、布で包んだものを持って私たちのいる机の上に置いた。
有栖川「これ使ってちょうだい…」
有栖川「色々と必要になるでしょ」
有栖川さんは布を開けた。
布に包まれていたものはお札の束だった。
私「えっ…」
私「私、こんなの受け取れないですっ!」
有栖川「これから行くんでしょ?」
有栖川「旅の資金はあるの?」
私「いや、それは…これからみんなで貯めて…」
有栖川「間に合わないかもよ?」
有栖川「メンバーには私と同年代もいるの…」
有栖川「いつ誰が亡くなってもおかしくはないのよ」
有栖川「そうなってしまっては、あなたの望みは消えてしまう...」
有栖川「それでもいいの?」
私「それは…その…」
私「…」
有栖川「フフッ…」
有栖川さんは私の右手に両手を添えた。
有栖川「今は何よりも時間を大切にしてちょうだい…」
有栖川「お金ってね。使う人がいるから初めて役に立つものだと私は思うの…」
有栖川「私はあなたの未来が見てみたい」
有栖川「あなたが思い描く未来を…」
有栖川「私には叶えられなかった未来を…」
有栖川「あなたには叶えてほしいわ…篠崎さん…」
有栖川さんは真剣な眼差しで私に問いかけた。
有栖川「受け取ってくれるかしら」
私は頷いた。
私「私、必ず叶えてみせます!」
私「何がなんでも、絶対にっ」
私「有栖川さんに私の未来を見ていただけるように」
有栖川「フフッ…ええ。頼むわね…」