物は試し
白うさぎのぺぺが私に砂時計を渡してくれた。
有栖川「あら、珍しい」
有栖川「ぺぺが初対面の人に手を差し伸べるなんて…」
有栖川「それは、オリジナルなのね」
私「ぺぺありがとう」
私「これはね。私にとって本当に大切なものなの…」
ぺぺは恥ずかしそうに頬を赤らめ、耳は垂れ下がった。
有栖川「さて、ここからなんだけど、このアイテムたちをどのように組み合わせれば、扉が開かれるのでしょうね…」
私「確かに…どうなんですかね…」
有栖川「ものは試しね。みんなで方法を挙げてみましょう」
メアリ「砂時計を本の上に置くとかかい?」
私「砂時計の砂を口に含む?」
有栖川「それは、できれば避けたいわね」
私「ええ、そうですね。はは…」
私「ネムさんは?何かある?」
ネム「うーん…砂時計の砂を本のページに振りかけるとかですかねっ…すみませんっ…わからないですっ…」
三人とも口を揃えて「あー」と言った。
私「それは、いいかも」
ネム「本当ですか!?」
私「うん!」
有栖川「ひとまず、私の記憶を元に試してみる?」
私「はい!」
有栖川「どうすればいいの?」
私「この砂を時計を見つめるだけです」
有栖川「こうかしら?」
私「はい」
私「もしかしたら、当時のことを思い出したほうがよりいいのかも…」
有栖川「わかったわ…」
有栖川さんは砂時計を見つめた。
有栖川「アリス…また、あなたに会いたいわ…」
有栖川「みんなとのお茶会…楽しかったな…」
有栖川さんは砂時計を見つめ涙を目に浮かべた。
私(私と同じだ。やっぱり、有栖川さんも会いたいんだ…)
私(そりゃ…会いたいよね。会いたいと思ってなければ、ここまで調べたりしないよ)
有栖川「ごめんね。恥ずかしいわ…こんな姿を見られて…」
私「いいえ…お綺麗です」
私「少なくとも私はそう思いましたよ」
有栖川「ありがとう…」
有栖川「これで、いいのかしら…」
私「ええ…」
有栖川「これ、私の絵本」
私「これがっ!」
有栖川「そうよ…」
有栖川さんから渡された『不思議の国のアリス』と書かれた絵本は、表紙が青くとても綺麗だった。
私「綺麗っ」
私「お借りします!」
有栖川さんが微笑む。
私「それじゃあ、やってみますね!」
有栖川「うん」
有栖川「久方ぶりにワクワクするわっ!」
私は砂時計を本の上に置いた。
私「ん?」
暫く経ったが何も起きなかった。
私「ダメかー…」
私「じゃあ、瓶の部分を砕いて砂を口に入れる?」
メアリ「それは、最後でいいんじゃないか?」
メアリ「ひとまず、砕いて本にかけてみれば?」
私「そうね!」
私は砂時計の瓶の部分を有栖川さんから借りたハンマーで叩き割った。
すると、金色の筋のようなものと青色のモヤのようなものが出てきた。
私「うわぁ…」
私「これが記憶…」
私は、中から出てきた砂を片手ですくい、を絵本のページをめくった。
私「有栖川さん。失礼します」
有栖川「ええ」
私はその砂を絵本に振りかけた。
すると、絵本から青い閃光が放たれた。
私「きたー!」
絵本のページに絵が浮かび上がった。
有栖川「…この絵…何年振りなの…」
有栖川さんが絵本を手に取った。
有栖川「アリス…」
だが、有栖川さんが絵本を手に取ってからすぐに、閃光は消え、絵本のページは元の白紙に戻った。
有栖川「やっぱり一時的なのね…」
有栖川「また、あなたに会いたいわアリス…」
有栖川「これで、わかったわね」
有栖川「彼方の世界へ飛び込むのは一瞬だけ」
有栖川「また、それと同時にあっちに居られるのもせいぜい、一日ぐらいかしら」
有栖川「正確にはわからないけれど」
私「期限を過ぎるとどうなるんですかね」
有栖川「わからないわ…」
有栖川「絵本の中に閉じ込められて、あちらの世界と共に消滅する」
有栖川「もしくは、自動的にこちらの世界に引き戻される」
有栖川「それでも、行く?」
私「はい!」
有栖川「迷いないのね…」
私「はい!」
有栖川「そう…フフッ…」
メアリ「まぁ、それはそうとして、肝心な『少女の宝は?」
私「確かに…なんだろう」
私「みんなそれぞれ違うのかな…」
有栖川「どうなんだろう…」
有栖川「さくらが言っていたニュアンス的には、みんな同じような気がするんだけど…」
ネム「髪とか?」
私「あー。なるほどー」
有栖川「確かに。髪は女性の命って言うものね」
メアリ「ナイスじゃん。ネム」
ネム「いや、わからないですよっ」
ネム「他のものかもしれませんし…」
私「いや、私はそれだと思うな」
ネム「本当ですか?」
私「うんっ!」
私「それじゃあ、まとめるとこれからしないといけないことは二つあって…」
私「『迷える少女の会』のメンバーから絵本を借りること」
私「そして、皆さんから当時の記憶をもらうこと…かな?」
有栖川「うん。そうね…」