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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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竹取物語③

さくら「私はようやくお話の世界に迷い込んだのだと気がついた」

さくら「その後は私の知っているお話の通りに物事は進んだ」

さくら「有名な五人の公達がかぐやに求婚を求めた」

さくら「かぐやは、その公達らにこの世に存在しないと言われている宝物を持ってくるように伝えた」

さくら「お話の通りその縁談は結ばれることはなかった」

さくら「その話は帝まで伝わった」

さくら「かぐやは帝の求婚も断った」


さくら「遂に月に帰る前日の夜を迎えた」

さくら「ずっと、彼女が言っていたこと…」

さくら「『また、さくらお姉ちゃんと竹林を駆け抜けたい』って」

さくら「そう。彼女との約束…」

さくら「そして、私は彼女にこう切り出した」

さくら「『今から竹林に行こう!』って」

さくら「最初は彼女はとってもびっくりしていたけど…」

さくら「かぐやは目を丸くしてとっても嬉しそうな表情を浮かべた」

さくら「私は彼女の手を掴み、外に出た」

さくら「月の明かり一つ、裸足で竹林を二人で駆け抜けた」

さくら「竹林を駆け抜けると、広い丘に出た」

さくら「私たちは息を切らしながらもその場に寝っ転がった」

さくら「あの子の清々しく、満足げな顔、久しぶりに見たな…」

さくら「かぐやは目を閉じ、月の明かりに照らされていた」

さくら「そうして、かぐやは言った」

さくら「『さくらお姉ちゃん…最高の贈り物をありがとう…』」

さくら「『さくらお姉ちゃん…私、この日のことを決して忘れないっ』って…」

さくら「あの子は言った…」

さくら「そして、私はこう返した…」

さくら「『かぐや…愛してるよ』って」

さくら「そうすると、かぐやは、涙を浮かべながらこっちを向いて満面の笑みを見せてくれた」


さくら「そして、遂に迎えの日の朝がやってきた」

さくら「私はてっきりその日の夜に迎えが来るものかと思っていた」

さくら「私が知っているお話ではそうだったから…」

さくら「でも、そうじゃなかった…」


さくら「朝だというのに突然、空が暗くなりだした」

さくら「そして、眩かしほどの月明かりが辺りを照らした」

さくら「そして、天から天人が舞い降りてきた」

さくら「帝はたくさんの兵をおじいさんの家に送り、かぐやを守ろうとした」

さくら「おじいさん、おばあさんも私たちを奥の部屋に入れて、必死に守ろうとした」

さくら「でも、その努力も虚しく天人が地に近づくに連れて、皆、力が入らなくなった」

さくら「それは私も同じだった」

さくら「天人はかぐやに『天の羽衣』を着せようとした」

さくら「『少しだけ待って』と、かぐやは言っておじいさん、おばあさんに手紙を渡した」


さくら「『おじいさん、おばあさん…今日まで本当にありがとう…』」

さくら「『私はね。二人の子で本当に良かった…』」

さくら「『心からそう思っている…』

さくら「『ここでの生活は私の一生の宝物…』」

さくら「『そう…私の宝物…』」

さくら「『心温かい愛情をありがとう…』

さくら「『っううぅ…』」

さくら「かぐやはそう言って、泣きながら二人の頬に優しく手をあてた」

さくら「おじいさんとおばあさんはとっても泣いてた…」

さくら「そして、『行かないでおくれ…行かないでおくれ』っておじいさんとおばあさんはそうやって何度も…」

さくら「そして、かぐやは私に…」


さくら「『さくらお姉ちゃん…大好き』

さくら「『私の唯一のお姉ちゃん……愛してる…』

さくら「そう言って、かぐやは満面の笑みを浮かべた…」

さくら「そして、私はかぐやに『私もよっ』って伝えた」


さくら「かぐやは『あれを』と言って、天人から『金の鈴』と『八つの煌めく雫が入った小瓶』を受け取った」

さくら「そして、それを私に渡した」

さくら「かぐやは、小さな壺のようなものを天人から渡されたが、彼女は拒んだ」

さくら「『この薬だけは…嫌。記憶なくしてでも、最後はみんなと過ごしたこの体で見送られたい』って…」

さくら「天人は渋々、承諾した…」

さくら「おそらく、あれはお話しに出てくる不死の薬だろう…」

さくら「私はかぐやに貰ったものについて尋ねようとした」

さくら「『これは?』」

さくら「『これはね…』」

さくら「『あっ…』」

さくら「かぐやの肩には天の羽衣がかけられた」

さくら「私は知っている…天の羽衣をかけられたら記憶が全て消える事を…」

さくら「『かぐや!』っと私は叫んだ」

さくら「でも、時は既に遅く、かぐやはボーっとして、何かに操られるかのように宙に浮かぶ天人の黄色い雲に足をかけた」

さくら「かぐやは天人と共に天高く昇って行った」

さくら「『かぐやー!元気でねー!』と私は大声で叫んだ」

さくら「伝わらないっていゆのはわかっている…ただ、私が言いたかっただけだから…」

さくら「さようなら、私の妹…」

さくら「血の繋がり?そんなものは関係ない」

さくら「お互いが家族と思えるならそれは家族なんだよ」

さくら「また、いつでも戻っておいで…」

さくら「私は遠くなっていく彼女の姿を目で追い続けた…」


さくら「すると突然、黄色い光のようなものが彼女に向かって突き進み、彼女を射抜いた」

さくら「立ったままの彼女が横に倒れるのが見えた…」

さくら「『かぐやっ!』」





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