竹取物語②
さくら「私が迷子になってから半年が経ち、雪が降り出した」
さくら「あの子すっかり大人の女性らしくなっちゃって…」
さくら「私の方がお姉さんだっていうのに…」
さくら「この頃から、見知らぬ人影を見ることが多くなった」
さくら「私とおじいさんが薪割りの帰り際、ちょうどおじいさんの家が見えたところで、身なりがよさそうな男の人が藁囲いからうちを覗き込んでいた」
さくら「家に着き、私たちに気づかないようだったから、おじいさんがその人に声をかけた」
さくら「『うちに何かご用ですか』って…」
さくら「そうすると、その人はびっくりして、すぐにその場を去っていったの…」
さくら「何をみていたのか、その人が覗き込んでいた隙間を覗き込んだ」
さくら「そこにはね。かぐやがいた」
さくら「そりゃ。かぐやはとっても美しいよ」
さくら「女の私ですら見惚れてしまうほどだもの」
さくら「日に日に、かぐやの話は出回り」
さくら「一目見ようと多くの男性が訪れるようになった」
さくら「それは、かぐや自身も気づくようほどで」
さくら「外に出ても、男性が群がるように押し寄せてくる」
さくら「かぐやは、男性から見られるのが嫌で戸を閉め、引きこもりがちになってしまった…」
さくら「『また、お姉ちゃんと何も気にすることなく竹林を駆け巡りたい』ってずっとあの子は…」
さくら「『また、行こうね』って…その度に私は…」
さくら「約束できるかもわからないのに…」
さくら「そのうち、かぐやの噂は都の公達にも伝わるように」
さくら「我先見ようと押しかける者が後を立たなかった…」
さくら「まるで本当に『竹取物語』みたいだって思った…」
さくら「『まさかね。』とは思ったけど、ある日からかぐやはよく月を見つめるように…」
さくら「そして、満月が近づくにつれてあの子は涙を流すようになった…」
さくら「私は毎日彼女のそばで涙を拭ってあげた」
さくら「私がいるから大丈夫って…」
さくら「でもね。ある日の夜、彼女からこう告げられた」
さくら「『私、月に帰らなければいけないの』って
さくら「最初は耳を疑った…」
さくら「『本当は教えちゃだめなんだけど、さくらお姉ちゃんだけにはどうしてもこれ伝えたかった』って」
さくら「彼女は真剣な眼差しで私の目を見つめながら言った…」
さくら「本当なんだって…分かった…」
さくら「私は泣きながら「嫌だ。嫌だ」って、泣きわめきながら、かぐやを抱きしめた」
さくら「私の方がお姉ちゃんなのに、かぐやは優しく私の頭を撫でてくれた」
さくら「『行かないで。行かないで』って、私は幼い子のように駄々をこねるようにひたすら泣いた…」
さくら「『嫌だっ…ダメだよ。行かないでっ』って…」
さくら「でも、『ごめんね…さくらお姉ちゃん』ってかぐやは…」
さくら「『どうしても、帰らないといけないのっ』って…」
さくら「『なんでっ?』聞いたら…」
さくら「『それはね。みんなのためなの…』」
さくら「『私はおじいさん、おばあさん。そして、さくらお姉ちゃんが大好き。だからなのっ!』って…」
さくら「『月見えるでしょ?…あの月…次の満月を過ぎると消えちゃうの…』
さくら「『月が消えるとね。どうなると思う?』って…」
さくら「私は泣きながら首を横に振った」
さくら「『みんなが住んでいるこの星が人が住めくなってしまうの』」
さくら「『私はいつまでも、おじいさん、おばあさん、そして、さくらお姉ちゃんにここで元気に過ごしてほしい』」
さくら「『だから、私は月が消えてしまわないように…この星で得た力を月に注ぎ、月と一体になるんだ』って」
さくら「『私はその為に月から送られてきたんだよ』って、彼女は言った」
さくら「『だから、ごめんね…さくらお姉ちゃん…』」
さくら「『私どうしても行かないといけないの』って…」
さくら「私はその後も彼女を説得しようとしたけど、彼女の決意は変わらなかった…」
さくら「その夜は、二人で幼い頃のように一緒のお布団で夜を過ごした」
さくら「私は横で彼女が寝入るまで頭を撫で続けた」
さくら「私の可愛い妹…かぐや…」
さくら「もう説得なんてしない。あなたがそれを望んでいるんだから…」
さくら「それがお姉ちゃんってものでしょ…」