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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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竹取物語①

有栖川「この書物に書かれている内容」

有栖川「すべてあなたに伝えるわ」

有栖川「少し長くなるけど構わない?」


私「はい」


有栖川「フフッ...じゃあ、読むわね...」


さくら「私は鍛冶屋の『さくら』」

さくら「おっとうが鍛冶屋をしているからみんなからそう言われている...」

さくら「私の不思議な体験をここに書き留めるね」

さくら「私は昔から竹取物語が大好き」

さくら「いつも寝る前に、お母さんが読み聞かせしてくれる」

さくら「お話は何回も繰り返して読んでもらっているから、実は目を瞑るだけで、お話が動き出す」

さくら「本当に大好きなの」

さくら「私の夢はね。かぐや姫のような素敵なお姫様になること」

さくら「そう...ずっと...ずっと夢見てた」


さくら「でも、ある日」

さくら「不思議なことが起こったんだ...」

さくら「庭の木にとまった蝉がミンミンと鳴いている頃、私はおっとうの手伝いで竹林に出かけたの」


さくら「それでね。迷子にならないように、おっとうの手を握っていたんだけどさ...」

さくら「なんだか急に眠たくなってきて…」

さくら「おっとうに繋いでいた方の手で目を擦ったんだ...」

さくら「そして、目を開けたら...」

さくら「横にいたおっとうがいなくなっていたの...」


さくら「私は慌てて『おっとう!』って叫んだ…」

さくら「いくら叫んでも返事がなかった」

さくら「怖かった…本当に怖かった...」


さくら「私は必死に竹林を抜けようとかけ出した...」

さくら「でも、いくら進んでもなかなか出られなくて...」

さくら「辺りも日が暗くなってきて...」

さくら「怖くて怖くて...」


さくら「それで、ようやく一軒のお家を見つけた...」

さくら「私はそこに駆け寄り、戸を叩いた...」

さくら「そうするとね...中からお婆さんが出てきて...」


さくら「私はことの事情を話した」

さくら「そうすると、そのお婆さんは私の話を聞き入れてくれて...」

さくら「暗くなってきたし、お父さんが見つかるまでってお家に入れてくれたの...」

さくら「それが初めての彼女との出会いだった...」

さくら「そこにはね...とても愛らしい赤ちゃんがいたの...」

さくら「とっても可愛くて...」

さくら「私が彼女に見惚れているうちに誰かが戸を叩いた」

さくら「おっとうかなって...思った」

さくら「でもそうじゃなくって、『帰ってきたぞい』って...」

さくら「おじいさんの声がした」

さくら「お婆さんは『帰ってきたんだね』って言ったわ」

さくら「お婆さんは戸を開けておじいさんを中に入れた」

さくら「そのおじいさんはこの家の人だった」

さくら「おじいさんは驚いていた...」

さくら「『誰じゃい』って...」

さくら「それで、お婆さんから事情を話してもらった」

さくら「話すとおじいさんは快く受け入れてくれた」

さくら「おじいさんとおばあさん。とっても優しくって...ご飯まで用意をしてくれたの...」

さくら「おじいさんとおばあさんといっぱいお話してとっても楽しかった」

さくら「それで、赤ちゃんについても聞いた...」

さくら「私、お二人の赤ちゃんとっても可愛いですね...って言ったら」

さくら「最初、沈黙が続いたけど...『ありがとう』って二人とも笑顔で言ってくれた」

さくら「この子にご飯あげてみるっておじいさんにいわれた」

さくら「そしたら、おじいさん。背負い袋から竹筒を取り出したの」

さくら「その中には、水のようなものが入っていた」

さくら「それ何?って聞いたら」

さくら「竹露(ちくろ)だよって...」

さくら「この子はね。これ以外口にしないんだって言われたの」

さくら「私は、その竹露をゆっくり赤ちゃんの口に含ませた」

さくら「そうすると、ゴクゴクとゆっくり飲んだの」

さくら「とっても可愛かった...」

さくら「結局、その日は...おっとう...迎えに来なかった...」


さくら「翌日になった」

さくら「赤ちゃんの夜泣きがひどくてあまり眠れなかった...」

さくら「でも、可愛かったな...」

さくら「赤ちゃんを見て私は驚いた」

さくら「昨日に比べてびっくりするほど大きくなっていたの...」

さくら「二人にもこのことを伝えた」

さくら「でも、あまり驚いていない様子で…」

さくら「本当だねって…」

さくら「私はおばあさんの手伝いをした」

さくら「その日も結局、おっとうは迎えに来なかった…」

さくら「その翌日、赤ちゃんは更に大きくなっていて」

さくら「喃語を話せるようになってた」

さくら「その翌日には、ハイハイができるように…」

さくら「更にその翌日には、一人で立つことができた」

さくら「私は本当に驚いた」

さくら「まるで『かぐや姫』みたいって心の中で思った」

さくら「その一週間後には、髪も伸びて私と簡単な言葉で話せるように」

さくら「ある日、おじいさんにこの子に名前をつけてやってくれって言われたの」

さくら「私でいいの?って聞くと」

さくら「二人とも『うん』って…」

さくら「だから、私『かぐや』って名前をつけた」

さくら「名前の理由を聞かれたから」

さくら「私の大好きなお話に出てくる人だからって応えた」

さくら「おじいさんもおばあさんも『良い名だね』って」

さくら「その後、一ヶ月が経ってもまだおっとうが迎えに来ることはなかった…」

さくら「ここの生活にもだいぶ慣れてきて…秋が来た」

さくら「かぐや姫はもう一人で竹林を駆けめぐれるようにまで大きくなった」

さくら「私は『さくらお姉ちゃん』ってよばれるように」

さくら「なんだか本当の妹ができたようでとっても嬉しかった」

さくら「楽しかったな…」

さくら「木登りしたりをしたり、川の水を掛け合ったり、ずっと二人で時間を過ごした」

さくら「時には、喧嘩をすることもあったけど…」

さくら「あの子が大きくなるまでは、とっても心細かった」

さくら「でも、あの子のおかげで私は救われた」

さくら「そして、更に一ヶ月が過ぎて私とほとんど背丈が変わらないほどまで大きくなった」

さくら「なんなら少し越されて、あいつ…私のこと『チビ』って言いやがった」

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