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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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古い書物

私「え...」

私「じゃあ、みんなを助けることは...できないってことですか...」

私「他に方法は...ないんですか...」


有栖川「...」

有栖川「...ごめんなさい...」


私 「そんな...」


有栖川「私も色々と探してはみたんだけど...」

有栖川「これといって…」


私 (お母さんが伝えてくれた手がかり...)

私 (こんな形で終わるはずがない...)

私(絶対そうだ)


私「あの...」

私「他に探してみたと言っていましたが...」

私「何をどのように探したのか、どんな小さなことでもいいので教えてもらえないでしょうか」


有栖川「いいけれど、あまり期待しない方が…」


私「いいんです...」


有栖川「そう...」


有栖川「私個人で調べた物があるのだけれど...」

有栖川「もし、私の家に来てくれるのであれば...」


私「行かせてください!お願いします!」


有栖川「そう...」

有栖川「わかったわ...」


有栖川「じゃあ、一旦...ここを出ましょうか」

有栖川「あっ…」

有栖川「話に集中してしまって何も注文してなかったわ...」

有栖川「あなたたち...マドレーヌはお好き?」


私「あっ...はい」


メアリさんとネムさんも頷く。


「チリンッチリンッ...」

有栖川さんがテーブルのベルを鳴らす。


有栖川「じゃあ、マドレーヌを三つ...」


マドレーヌを注文し、有栖川さんの自宅に向かった。


カフェから歩いて徒歩15分程歩いた。


有栖川「ここ」


私「…ここですか」


そこには、とても立派なお屋敷だった。


有栖川「さぁ、中へ入って」


有栖川さんが扉を開ける。

玄関には、高級そうな絵画や壺などが飾られていた。


私「素敵ですねー」

有栖川「ありがとう…」


有栖川「さぁ、こっちへ...」


有栖川さんに案内され、たくさんの本が置かれている部屋に入った。


有栖川「ここは、私の書斎...」

有栖川「私はね...他にも色々な本を書いているの」


私「すごい...」


有栖川「さぁ、おかけになって...」


私たちは書斎にある丸テーブルの椅子に座った。


有栖川「今お茶を入れるから...待っててね...」


私「ありがとうございます...」


私「二人ともさっきから大人しいけど大丈夫?」


メアリ「なんだか初めてなことが多すぎてな...」

ネム「そうですよね...」


私「確かに...それも無理ないか...」


有栖川「さぁさぁ...」


有栖川さんはティーセットとマドレーヌをテーブルに並べた。


有栖川「さぁ、召し上がって...」


私「ありがとうございます」


メアリさんとネムさんは軽く会釈した。


有栖川「食べながらでいいから聞いてちょうだい...」


有栖川「正直言ってね...迷っているの...」

有栖川「あなたに伝えるべきかどうかを...」


私「えっ?...」


有栖川「あのね...変に期待させちゃうだけかなって...」


私「迷っているってことですか?」


有栖川「...ええ」


私「...教えてくだいさい...」

私「お願いします...」


私「どんな些細なことでもいいんです...」


私「私...また逢いたい...」

私「お父さん...お母さん...お兄ちゃん...そしてみんなに...」

私「逢いたい...」


私「あの世界が...私のすべてなんです...」


私は有栖川さんの目を見つめた。


しばらくの間沈黙が続いた。


有栖川「綺麗な目...」


有栖川「...フフッ...」

有栖川「まるで若い頃の私のよう...」

有栖川「私ももう一度あの世界を取り戻したいって何度も思った...」


有栖川「うん。わかったわ...」


有栖川「教えましょう...」

有栖川「でも、何度も言うけれど...あまり期待はしないでね...」


私「はいっ...」


有栖川「少し待ってね...」


有栖川さんは本棚から何かを探し始めた。


有栖川「確かこの辺に…」

有栖川「うーん...あっ...」

有栖川「あったわ」


有栖川さんはとても古い書物のようなものを手に取り、テーブルに置いた。


有栖川「私が探したものの中でこれが一番手がかりに近いかも...」


私「これは…?」


有栖川「竹取物語って知っている?」


私「かぐや姫が出てくる物語ですよね」


有栖川「ええ、そうよ...」


有栖川「これはとても大昔のことなんだけど、竹取物語の世界に行った人がいたそうなのよ」

有栖川「どうやって行ったかについては書かれていなかった」

有栖川「でも、この世界も私たちと同様に世界は滅んだそうなの」

有栖川「でもね、この話には続きがあって…」

有栖川「滅んだ世界の後に続くお話が書かれているの」

有栖川「もしかしたら、と思って、何年もかけてこの書物をすべて解読したの...」


私「すごい」


有栖川「いや、でもね...」

有栖川「この書物からは何も手掛かりを得られなかった...」


有栖川「どのようにして元の世界を取り戻したのか...肝心なところが記されていなかったの...」


私「そんな...」


有栖川「ごめんなさい...本当にこれだけなの...」

有栖川「何も...何も得られなかった...」

有栖川「無駄な時間だったわ...」


私「ううん...」

私「そんなことはないです!」

私「元の世界を取り戻したいから...」

私「その一心で...」


私「無駄なんかじゃない...」

私「私は、そう思います...」


有栖川「...ありがとう...」


私(そっか...でも何も…)


私(いや、違う...)


私(お母さんが私に伝えてくれた...)

私(諦めるわけにはいかないっ...)


私「あの...有栖川さん…」


有栖川「ん?」


私「お願いします...この書物に書かれている内容」

私「私に教えて下さい...」


私「いいんです...どんなことでも...」

私「結果的に何も得られないかもしれない...」

私「でも、私は...」


有栖川「わかった...」

有栖川「私もできる限りあなたの力になりましょう...」



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