絵本の著者
私は絵本に書かれていた電話番号にかけた。
?「はい。お電話ありがとうございます。株式会社マーブルの平坂です」
若い男性の声がした。
私「あの…私、篠崎という者です」
私「そちらで出版された『ヘンゼルとグレーテル』という絵本の著者である有栖川二葉さんという方を探しておりまして…」
私「ご存知でしょうか」
平坂「『ヘンゼルとグレーテル』ですか…」
平坂「お調べいたします」
「カタカタ...カタカタ」
平坂「うーん。弊社で出版したという記録はありませんね...」
私「えっ…でも、この絵本にはマーブル出版と書かれていて...」
平坂「そうですか...
平坂「うーん…」
平坂「もう少しこちらで調べてみます」
平坂「何か分かりましたら、連絡いたします。」
平坂「何か分かりましたら、今おかけになっているお電話番号でよろしいでしょうか」
私「はい。ありがとうございます!」
平坂「承知いたしました」
メアリ「どうだった...?」
私「うーん...なんか...そんな本出版してないって...」
メアリ「そんな...」
私「何かわかったら連絡くれるって言ったけど...」
メアリ「そうかい...」
ネム「ひとまずは待ち...ですかね?」
私「そうだね」
私「うーん…」
私「お腹すいたし、ご飯でも食べよっかー」
ネム「そうですね」
メアリ「賛成!」
「トゥルル…トゥルル…」
私「あっ…」
平坂「先ほどお電話頂いた平坂です」
平坂「篠崎さんでお間違いないでしょうか」
私「はい」
平坂「社内で確認したところ」
平坂「社長が直接お話したいとのことで」
平坂「今ならお取り継ぎ可能ですが、少しお時間よろしいでしょうか」
私「お願いします」
平坂「承知いたしました」
社長「あっ…篠崎さんですか?」
中年の女性の声がした。
私「はい」
社長「お電話ありがとうございます」
社長「例の絵本をお持ちなのですね」
私「そう…なんですかね…」
社長「疑っているわけでないのですが、念のため...」
社長「発行者には、何と書かれていましたか?」
私「たしか、『迷える少女の会』...でした」
社長「間違いありませんね」
社長「その絵本は我々が発行したものです」
社長「それも、一般では売り出していない物...」
社長「著者の有栖川二葉さんに先ほど連絡したところ、あなたにお会いしたいとのことで...」
社長「大変急で申し訳ないのですが、明日の10時に弊社の一階にあるカフェでお会いできないでしょうか」
社長「住所は絵本に書かれている場所で問題ありません」
私「明日ですか」
社長「はい。ご都合が合わないでしょうか」
私「いいえ、お願いします!」
社長「ありがとうございます」
社長「それでは、明日」
私「はい」
通話が切れた。
私「明日会いに行くことになった」
メアリ「え...大丈夫なのかい?」
私「うーん。わからない...」
私「でも、今は...」
メアリ「そうだねー」
メアリ「私らも付いていくよ。なっ...」
ネム「はい」
私「ありがとう」
私「そんなに遠くはないんだけど...」
私「みんなの服とかないから今日買いに行こっか」
私「ショッピング!」
メアリ「いいのに。私らはお古でも」
ネム「そうですよ」
私「ダーメ!二人とも女の子なんだから、オシャレしなきゃ」
メアリ「はーい」
ネム「フフッ...」
私たちはその後、ショッピングモールで買い物を楽しんだ。
夕方ぐらいに自宅に帰った。
メアリ「今日はありがとうね」
ネム「ありがとうございます」
私「ううん。私こそありがとう」
私「久しぶりにすっごく楽しかった」
家で簡単に夕食を済ませた。
私「明日はよろしくね」
メアリ「うん。任せて!」
ネム「はい!」
その夜は、三人仲良く川の字で寝入った。
ーー翌日ーー
私「みんな!準備できた?」
メアリ「うん!」
ネム「はい!」
最寄り駅まで歩き、電車で目的地へ向かった。
二人は初めて見る電車にとても驚いていた。
私「ついた」
私「二人とも大丈夫?」
メアリ「あっ…うん」
ネム「はっ…はい…」
私「色々と向こうの世界とは違うから驚くよね」
私「あそこのビルだ」
私たちは目的地のビルに向かって歩いた。
私「ついた」
私「わぁ…おしゃれ」
ビルの下にはオープンテラスの緑に囲まれた綺麗なカフェがあった。
私「どこだろう…」
私は電話をかけた。
私「あっ。今着きました」
社長「本当ですか。あっあれかな?」
中年の女性がこちらを向いて手を振っていた。
私「あっ」
私は電話を切り、席に向かった。
席には中年の女性と老婆の二人座っていた。
私「すみません。お待たせしました」
中年の女性「いいえ。こちらこそ急で申し訳ございません」
中年の女性「私は社長の梅垣と申します」
梅垣「私の隣にいるのは著者の有栖川さんです」
梅垣「それでは、私は….」
梅垣さんが席を離れた。
私「ありがとうございます」
梅垣さんは笑顔で私に手を振った。
有栖川「どうも」
私「あっ…初めまして」
私「篠崎朱音と申します」
私「この二人は私の友達です」
有栖川「そうですか」
私「この絵本についてお聞きしたいことがあって…」
私は絵本を有栖川さんに見せた。
有栖川「その本…」
有栖川「間違いありませんね…」
有栖川「お待ちしておりました。あなたが来るのを…」
私「えっ…」
有栖川「こう言った方があなたにはわかるでしょうか」
有栖川「ジャックをご存知で?」
私「なんであなたがジャックを!?」
有栖川「フフッ…」
有栖川「やはりね」
有栖川「実は、その本ジャックが私から持っていったものなのよ」
有栖川「そして、彼は私にこう言った」
有栖川「あなたの元にこの本を持つ少女がくるかもしれないって…」
私「ジャックが!?」
有栖川「ええ…」
私「そうなんだ…」
有栖川「まずはこの絵本について説明しないとね…」