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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
73/116

母の字

——翌日——


朝六時に目が覚めリビングへ向かった。

テレビを付けて、電気ケトルのスイッチをいれた。


「ガチャッ」

メアリさんが起きてきた。


私「ごめん。起こしちゃったかな」


メアリ「ううん。もう起きてたよ」

私「そう...ならよかった...」


私「おはようございます…」

メアリ「うん。朱音ちゃん。おはよう」


私「朱音ちゃんって…」


メアリ「ごめん。ずっと、アンタって言ってたからさ」

メアリ「そう呼んだ方がいいのかなって思って...」

メアリ「嫌だったら別に…」


私「ううん…」

私「嬉しい」


メアリ「そう…」

メアリ「なら、よかった…」

メアリ「あと、私たちに対しても気軽に話してくれたっていいんだよ」

私「うん。わかった」


メアリ「まだ、ネムは寝てるみたいだね…」

メアリ「あの子ずっと寝言でさ」

メアリ「魔王様、魔王様って…」

メアリ「あいつのことを本当に思っているんだろうねぇ…」

メアリ「今となってはあんな裏切り者のどこがいいのか私にはわからないよ…」


私「あの...」

私「実はね…」

私「今でも迷っているの…」

私「魔王をどうするのかって…」


私「正直言って、私まだあの人のこと許せない...」


メアリ「まぁ、そうだろうね」

メアリ「そう簡単には…」


ネムさんが部屋から顔を出した。


メアリ「おはよう」

私「おはよう」

ネム「おはようございます…」


私「あっ...そうだ」

私「二人ともコーヒーでいい?」


メアリ「うん!」

ネム「はい」


私「はーい」


三人分のカップを用意してコーヒーを淹れた。


私「はい」

メアリ「ありがとう」

ネム「ありがとうございます」


私「あのね…これからのことについて昨日の夜考えてたんだ…」

私「一つの方法としてはあるのかなって思って...」

私「話してもいい?」


メアリ「あぁ。頼むよ」

ネム「お願いします」


私「小説を書いてようかなって...」


メアリ「ん?小説?」

メアリ「小説って本を書くあれかい?」


私「うん。そう…」


メアリ「うーん…いまいち話が繋がらないんだけど…」


私「実はね。二人が元いた世界はこの世界の人が考えたお話の世界なの...」


私「ちょっと待ってて」


私は自分の部屋の絵本を手に取り、リビングへ戻った。


私「これ...」

私「『ヘンゼルとグレーテル』というお話」

私「この絵本のお話はね」

私「あの世界の一部を切り取ったようなもの...」


私「でも、それでどうやってみんなを助けるのかなんだけど...」


私「ん?あれ?」


絵本の表紙の左上には修正液のようなもので文字が書かれていた。


私「奥付?」


ネム「どうしたんですか?」


私「いや、ここにこんなもの書かれていなかったと思うのに...」

私「いつの間に...」


私「あれ...」

私「この字...お母さんのだ...」

私「間違いない...お母さんだ...」

私「お母さん...」


メアリ「ん?」

メアリ「でも、朱音ちゃんのお母さんって...」


私「そう...でもなんで...」


私「奥付って?」

メアリ「奥付...」

ネム「奥付?」


私は自分のスマートフォンで「奥付」について調べた。

「奥付は、書籍の最終ページ付近にあり、書籍のタイトルや著者名、発行日、出版社名をはじめ、書籍の基本情報が掲載されています」


私は絵本の最後のページを開けた。


著者  有栖川 二葉

発行者 迷える少女の会

発行所 株式会社 マーブル出版

〒100-0001 東京都千代田区神保町2-3-5

TEL XX-XXXX-XXXX

FAX XX-XXXX-XXXX


私「迷える少女の会...」

私「有栖川 二葉...」


私「ねぇ。二人とも...」

私「この人に会えば何か手掛かりが掴めるかもしれない...」


私「私...お母さんを信じたい...」

私「もしかしたら、何かの罠かもしれない...」

私「でも、私はこの字を信じたい...」

私「お願い...」


メアリ「...うん...私はいいよ...」

メアリ「私は朱音ちゃんを信じる...」


ネム「うん。私も...」


私「二人とも...」

私「ありがとう...」


メアリ「小説を書くのはいいのかい?」


私「うん。ひとまずは...」


メアリ「そうかい...」


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