崩壊
番人が腕時計を見る。
番人「それではグレーテ様...ご挨拶を...」
番人「できれば手短にお願い致しますね」
私「はい...」
私「みんな...」
私「私、」
私「私、頑張るからっ!」
私「みんなの分まで精一杯...」
私「精一杯...生きるからっ!」
私 (本当は泣きたい...)
私 (でも、みんなに心配させたくない...)
私 (だから...泣かない...)
私 (私の笑顔をみんなに…みんなに!)
ジャック「グレーテ...」
シェイド「主...」
マリナ「グーちゃん...」
ミリア「お姉ちゃん...」
バーバラ「朱音ちゃん...」
グリフォン「グガァー...」
お父さん「朱音...」
お母さん「朱音...」
葵「朱音...」
みんな「ガ・ン・バ・レー! グガァー!」
私「...うん!」
私「ありがとう…」
みんなが微笑んでいるかのように私の目には浮かんだ。
番人がこちらの馬車に向かってくる。
番人「よろしいので?」
私「...」
私「はい...」
番人が馬車の扉を閉めようとする。
私「あの...私が...」
私「私が閉めても...いいでしょうか?」
番人「ええ。構いませんよ」
私は扉を手にかけゆっくりと
ゆっくりと扉を閉めた。
私 (愛してる...ずっと...ずっとずっと...)
私 「愛してる...」
私「愛してるよ...みんな…」
私「...っううっうっ...」
私 (最後まで泣かないって決めたのにっ!)
私 (みんなが心配しないよう泣かないって決めたのにっ!)
番人「グレーテ様...それでは...」
番人が私に向かってお辞儀をした。
私「...っううっうっ...」
私「どうかみんなを最後までお願いします…」
私は番人に向かって深くお辞儀をした。
馬車が動き出す。
馬車が向かい側にもう一つの門が現れた。
門の扉が開く。
魔王「フフッ...」
魔王「フッハッハッハー!」
魔王が不気味な高笑いを上げた。
馬車は魔王を乗せたまま門を潜り抜ける。
みんなを乗せた馬車も門の奥へ...
私「...っううっっうっ...」
私「さようなら…」
私「さようなら…私のみんな…」
門に向かい、両手組んで祈った。
私「どうか…どうか…」
両側の門がゆっくりと閉じた。
そして、一瞬にして元の王室に戻った。
その場で膝をついてうずくまった。
私「っううっ…うっ…」
王の間には魔王従者たちと私のみが残された。
魔王従者たちは皆、気が抜けたように落胆していた。
「ガガガガガガ...」
「パリンッ!」
花瓶が割れた。
突然激しく地面が揺れる。
私「何っ!」
マーシ「ハッハッハ!」
マーシ「魔王様だっ!さすが我らの魔王様だ!ハッハッハッ!」
パロ「これでようやくこの世界も終わりですか...」
カノン「グレーテ殿!早く我をお手に!」
私「何が起こっているのっ!」
カノン「あの魔王が破滅の魔法を最後に唱えたようです」
カノン「この世界は…」
カノン「もう…」
私「そんな…なんで…」
私「みんなの犠牲はなんだって言うの…」
私「みんなは何のためにっ!」
私「何のために…」
私「みんなの犠牲はなんだったって言うのよ!」
私「...っううっっうっ...」
カノン「グレーテ殿、お気を確かに!」
カノン「我ならばグレーテ殿を元いた世界に戻せるはず」
カノン「さぁ、早く我を掴んでくだされ!」
カノンが宙を浮いて私の元へ向かってくる。
カノン「さぁ、お手を!」
私は手を伸ばさなかった。
カノン「どのようなおつもりでっ!」
カノン「皆はグレーテ殿に生きることを望まれた!」
カノン「そして、あなたは生きると決心されたのでしょう!」
私「…」
私
私は手を伸ばし聖剣を手にした。
カノン「それでは、転移する」
私「待ってっ!」
カノン「っ!」
私は聖剣を魔王従者たちの前に突き立てた。
私「あなた達このままでいいの?!」