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忘却のグレーテ  作者: だい
第二章
58/116

みんながいるから

私「っっ...へうっ...っぷ...」


私 (こわい...こわい...)

私 (...やだ...)

私 (もう...やだ...)

私 (みんな...私のせいで...)

私 (みんな...私のせいでぇ!)


私 (そうだ...)

私 (もういっそのことどうでもいいじゃない...)

私 (そう...もう全部どうでも...)

私 (何も考えなければいい...)

私 (何もしなければいい...)

私 (だって...私には...私にはもう何もないんだから...)

私 (ずっとこのまま...そう...この中でずっと...)


シェイド (主...)

シェイド (...主...)

シェイド (聞こえるか?)


私 (シェイドの声...)


シェイド (...すまねぇ...葵を守りきれなった...)

シェイド (主にもこんな思いさせちまってよ...)

シェイド (守護する精霊として...失格だ...)

シェイド (ごめんよ...主...)

シェイド (ゴホッゴホッ...)


私「っっ...へうっ...っぷ...」

シェイド (だめか...今の主には届かねぇか...)


シェイド (でもよ...俺の声が届いていることを信じて、おめぇさんに二つ伝える...)

シェイド (主...もし聞こえていたら聞いてくれ...)


シェイド (一つ目は、おめぇさんは一人じゃねぇってことだ...)

シェイド (『何を言っている』って思うかもしれねぇ...)

シェイド (だがなぁ...俺には見えるんだ。一応、精霊の端くれだからよぉ...)

シェイド (俺にはずっと主の周りを囲む光の玉の輪が見えていてよぉ)

シェイド (その玉の一つ一つがみんなの魂なんだ...)

シェイド (つまり、みんな死んでも尚、主の側にいるってことさ...)

シェイド (おそらく今もずっと主を鼓舞していることだろうよ...)

シェイド (ゴホッゴホッ...)


シェイド (俺も早くその輪の一部になりてぇな...)

シェイド (そうすれば、みんなと同じように主を支えられる)

シェイド (この体では何の役にも立たねぇからよ...)


シェイド (だから、安心しな主。おめぇさんは一人じゃねぇ)

シェイド (主には見えていなくても...俺たちがずっと側にいる)

シェイド (いつもみんな一緒ってことだ)

シェイド (な...主...ゴホッゴホッ...)


シェイド (そして二つ目だ)

シェイド (二つ目は、おめぇさん自身についてだ...)


シェイド (主...本当にこれでいいのか?)

シェイド (主はこうなることを望んでいたのか?)

シェイド (そりゃあ、沢山辛い思いをしたのは十分わかっている...)

シェイド (でもよぉ。主...俺はアンタを知っているんだぜ...)


シェイド (アンタは何度でも立ち上がる。どんなことがあろうともよう...)

シェイド (それが、どんなに不可能だとわかっていても最後まで頑固に諦めねぇ...)

シェイド (それが主だろう?)

シェイド (それが篠崎朱音だろう?グレーテだろう?)

シェイド (主の強さは力じゃあねぇ...その諦めねぇ根性だ!)

シェイド (そんな主だから...頑固で自分が決めたことは絶対に曲げない主だから...)

シェイド (みんなおめぇさんに付いて来たんじゃねぇのか?)

シェイド (そうだろう?主...)


シェイド (アンタさっき自分のことを無力だって言ったな...)

シェイド (それは違うぜ主...)

シェイド (それは否だ!)

シェイド (これだけは俺が断言する)

シェイド (ゴホッゴホッ...)


シェイド (俺は信じているぜ...)

シェイド (主は最後まで諦めず、最後には全てを覆すってな...」

シェイド (じゃあな...主...)

シェイド (どんな結果になろうとも、俺らは主の味方だ)



魔王「じゃあ、俺は先に帰るよ」


私「ごめんね。シェイド」

私「違う...」

私「ごめんねじゃない...」

私「ありがとうだ...」



魔王「ん?後ろから声がしたような...気のせいか...?」


私はシェイドの元へ行き、しゃがみ込んだ。


私「あなた...もう...」


私はシェイドの左手を自分の両手で包んだ。


私「シェイド...ありがとう...」

私「大好きよ...シェイド...」

私「あなたの声...届いていたわ...」

私「そうなんだ...みんな私の周りにいるんだね」

私「私に見えないだけで、みんなここに...」


魔王「はぁ!」

魔王「まさか!乗り越えたの?」

魔王「いやー!すばらしい!すばらしいよ!キミ!」


私「そうね...シェイド...あなたの言う通り...」

私「諦めないのが私の取り柄」


私「私!救うからっ!みんなと生きたこの素晴らしい世界を私が救うからっ!」

私「ここにいるみんなと一緒に...ね?」


私「いつかまたみんなに逢えるかな?...」

私「大好きよみんな...」


魔王「何だこれは?!核が純白に磨き上がっている...」

魔王「これは期待以上だ!」


魔王「何がキミをそうさせた?」

魔王「今のキミの支えはなんだ?」

魔王「この世界そのものか?」

魔王「それを壊したい!」


魔王「それを壊したら、キミはどうなる?!」


私「それはさせない...」


私「みんな...いくよ...」

私「もう何も怖くなんてない...」

私「だって、みんなここにいるから...」


私は自分の両手を胸にあてた。


私「ねぇ...魔王?」


魔王「ん?なんだい?!」

魔王「私はずっと胸の高鳴りが止まなくてね!」

魔王「今まで数千年こんなことは初めてだよ!」


私「パレードはお好き?」


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