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忘却のグレーテ  作者: だい
第二章
57/116

私の過ち

私は涙を拭いながら石橋を渡り抜け、スケルトンに囲まれる道を走り続けた。


私 (ごめんなさい!)

私 (本当にごめんなさい...)

私 (甘かった...私の考えが甘すぎた...)

私 (魔王を止める?バカじゃないの...)

私 (なんで私は戻る前に疑念を残したままにしたの!)

私 (すべて私の甘さが招いた結果だ...)

私 (ごめんなさい...)

私 (みんなごめんなさい...)



バーバラ (朱音ちゃん...)

ミリア (お姉ちゃんっ)

葵 (朱音...)

グリフォン (グガァー!)

マリナ (グーちゃん...)


みんなとの記憶がよみがえる。


ジャック(グレーテ...)



私は歩みを止めてうつ伏せた。


私「考えが甘かった...」

私「無力だ...」

私「私は無力だ...」

私「何もできなかった...」

私「マリー先生の言う通りだった...」

私「何もできない私が行ってどうなる...」

私「無力だ...バカだ...」


右手の拳を強く地面に叩きつけた。

私「私は無力な馬鹿野郎だ!」

私「クソッ!クソッ!クソッ!」

私「っうっ...うっっ...」


私はただ泣き続けた。

私「っうっ...うっっ...」


私 (ダメだ...)

私 (泣いていても何も変わらない...変えられない...)

私 (後悔しても意味がない...)

私 (今をどうする...)

私 (私はみんなに生かされた...)

私 (それがみんなの思いだってこともわかっている...)

私 (でも...このままでいいの?)

私 (どこかで身を潜めてただ一人?)

私 (私は...)

私 (私は...)

私 (私は逃げて...それから...)


私はしばらく自問自答し続けた。


私「いや、違う!」

私「そうよ!私!違うじゃないっ!」

私「何を迷っていたの...」

私「私だけ生き延びる?」

私「それは違う!私の答えじゃない!」


私「ごめん。みんな...」

私「みんなの思いを無碍にするかもしれない...」

私「でも...」

私「これが私だから!」


私「自分の人生は自分で決める!」

私「これが私なの!」


私「過ぎてしまったことは仕方ない?」

私「覆せない?」

私「違う!」

私「そうじゃない!」


私「私が救う!必ず救う!」

私「みんなのことを!みんなと生きたこの世界を!」


私「だって、途中で諦めるなんて私らしくないでしょ?」

私「そうよね?みんな?」


私は右足を前に出し、力を入れて立ち上がった。

そして、振り返り城を目指した。


私 (覚悟は決まった)

私 (もう迷わない!)


城の前にはパロが立っていた。


パロ「おや、グレーテ様お戻りになられたのですね!」

私「あなたに構っている暇はないの!」

パロ「こりゃ失礼...」

パロ「しかし、そのお洋服クライマックスには相応しくありませんねー...」


「パチンッ」

パロが指を鳴らした途端、私の身は赤いドレスに包まれた。


私 (クライマックス?悪趣味ね...)


私は螺旋階段を駆け上がり扉を開けた。


扉を開けるとシェイドは全身傷だらけになった状態で柱を背にしていた。

そして、お兄ちゃんは剣を右手に持ったまま床に伏せて倒れていた。


カノン「葵殿!」

カノン「葵殿!」

私「お兄ちゃん!」


私はお兄ちゃんの元に駆け寄り、私の膝の上に仰向けにした。


私「お兄ちゃん!お兄ちゃんっ!」

私「しっかりして!」

私「お兄ちゃん!お兄ちゃんっ!」


お兄ちゃんの体はほとんど透けている状態になっていた。


葵「ん...」

私「あっ...」

葵「なんで...」

私「...ごめん...本当にごめん...」

私「でも、私決めたの...諦めないって」

葵「そうか...じゃあ、仕方ないな...」

葵「ハハッ...」


魔王「ほぉ。まさか戻ってくるとは...」

魔王「本当にキミは予測不能だ」

魔王「いやー。面白い!」


私「お兄ちゃんに何をしたの!」


魔王「ん?魔力を注ぎ続けたよ?」

魔王「いやー...どうやって消えるんだろうって思ってね...」

魔王「一緒に見られるね。人が消える瞬間をさ」


私「許さない...」

私「人をおもちゃのように弄ぶあなただけは許さない!」


私「ごめんね。お兄ちゃん...」

私はお兄ちゃんの頭を床において、神器を手に取った。

そして、矢先を魔王に向けた。


魔王「ほぉ。パロから譲り受けたわけだね」

魔王「さぁ、私を撃つといい...怒りに身を任せてね」

私「うぅ...」

魔王「しっかり、ここの額を狙うんだよ」


私はトリガーに指をかけた。

魔王「さぁ、キミに撃てるかな?」


私 (覚悟はさっき決めた!)

私 (でも、人を撃つ...それはつまり殺すということ...)

私 (人じゃない。でも、命を奪うということ...)

私 (私にできる?...)


魔王「さぁ、早く撃ちなよ」

魔王「五」


魔王「四」


私 (覚悟は決めたのよね...私...)


魔王「三」


私 (打ちなさい!)


魔王「ニ」


魔王「一」


私 (早く!)


魔王「ゼロ...」


魔王「はぁ...」

魔王「撃てなかったね...」


私 「ぐぅ...」


魔王「じゃあ、追加で魔力注ぎまーす!」

魔王が指先に魔力を集めた。


私「お願い!やめてっ!」

魔王「いやいや、さっきも言ったけれどこれは実験なんだよ」

魔王「結論に至るまではやめられないんだよ」


魔王が指先に集めた魔力をお兄ちゃんをめがけて放った。

私「だめっ!」


私はお兄ちゃんに覆い被さった。


魔王「そんなことをしても無駄だよ」


放たれた魔力は分散し、私を避けるようにしてお兄ちゃんの体の中に入っていった。


葵「うわぁー!」

私「お兄ちゃん!」


私はお兄ちゃんの頭を自分の膝の上にあげたが、体は空気のように軽かった。


私「お兄ちゃん!」

私「お兄ちゃん...お願い...私を一人にしないで...」

私「お願い...お願い...お願い...」


葵「朱音...」

葵「ごめん...一人にしないって...約束したのに...」

葵「もう...ここまでみたいだ...朱音を守れるのは...」

私「ねぇ...何言っているの...」

私「だめ...そんなのだめ...絶対にだめっ!」

私「っっ...うっ...っっ...」

葵「朱音...綺麗だ...」

葵「こんな俺だけど...少しは朱音の力になれたのかな...」

葵「フフッ...」


お兄ちゃんの体から光の粉のようなものが現れ始めた。


私「っお兄ちゃん!...ねぇ...お兄ちゃん...」

私「嘘...やだ...やだやだやだ...」


お兄ちゃんはゆっくりと目を閉じた。


私「違う...私...そんなの受け入れられない...」


光の粉のようなものが次第に上に上がっていくと共に体より薄く、軽くなっていった。


私「お兄ちゃん!」


そして、気がつくとその場にはお兄ちゃんが身につけていた衣服だけが取り残されていた。


私「お兄ちゃん...お兄ちゃん...えっ...」

私「違う...違う...えっ...」

私「...」


私「イヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


私の悲鳴が部屋中に響き渡った。


私「っっ...へうっ...っぷ...」


魔王「っっ...うっ...」

魔王「いやー...感動したよ!」

魔王「これが兄妹愛というものなんだね」


私「っっ...へうっ...っぷ...」


魔王「あぁ...壊れちゃったね...」


私「っっ...へうっ...っぷ...」


魔王「核も真っ黒に染まっちゃってさ...」

魔王「可哀想に...」


私「っっ...へうっ...っぷ...」


魔王「キミのお兄さんがトリガーだったってことか...」

魔王「でも、いいデータが取れたよ」

魔王「やはり、絶望に染まらない人間はいないってことか...」

魔王「キミのおかげて結論付けられた」

魔王「ありがとうね」


私「っっ...へうっ...っぷ...」


魔王「はい。実験終了!」

魔王「じゃあ、実験道具のお片付けということで...」

魔王「パロ...」


パロが渦から姿を現した。

パロ「はい。魔王様」


魔王「あの子の処分お願いね」

魔王「もう壊れちゃったから何の役にも立たないと思う」

魔王「フフッ...あの様子じゃあね...」


私「っっ...へうっ...っぷ...」


パロ「承知いたしました」

パロ「では、身もまだ新しいようなのでペットの餌にでも」


魔王「それはませるよ」

魔王「生ゴミには構ってられないよ」

魔王「じゃあ、用事も済んだことだし僕は先に帰ろうかな」

魔王「しかし残念。彼女なら乗り切ることができると思ったのになぁ...」


私「っっ...へうっ...っぷ...」


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