生きて…
魔王「さぁ。もう三つ目か」
魔王「いいね!キミ」
魔王「まだ耐えられるんだ...へー」
魔王「もうキミ気づいているだろう。最後が誰なのかをね」
私「嘘でしょ...」
私「嘘って言って...」
最後の台座にかけられた布から見慣れた赤髪がちらりと見えた。
私「いや!」
私「もう...いや...」
私「もう...やだ...」
私は自分の顔を両手で覆い、その場でしゃがみ込んだ。
葵「朱音!」
葵「頼むからもう逃げてくれ...お願いだ...」
葵「朱音...頼む...」
シェイド「主...俺からも頼む...逃げてくれ」
魔王「妹を思う兄!そして、主人を思う精霊ねー...」
魔王「さぁ、どうするグレーテ」
魔王「そ・う・だ」
魔王「ジャックも話せるようにしてあげよう」
魔王「キミには次のフェイズに進んで欲しいからね...」
魔王が右手を振りかざした。
ジャック「グレーテ...」
私「ジャック!」
私はジャックの元へ向かった。
私「ジャック...私...私...どうすれば...」
私「どうすればいいって言うの...」
私「っ...っっっ...」
ジャック「...」
ジャック「グレーテ...」
ジャック「キミは今でもみんなを救おうと思っていないかい?」
私「...うん...」
ジャック「フフッ...」
ジャック「やっぱりね...」
ジャック「困った子だ。本当に...」
ジャック「キミは頑固だし...僕らがなんと言おうとキミはこの場を離れないだろうさ...」
ジャック「でも、それがキミのいいところでもあるんだよ。グレーテ...」
ジャック「キミはとても優しい」
ジャック「そして、キミは誰よりもみんなを大切に思っている」
ジャック「だからこの場を離れられない」
ジャック「そうだろ?グレーテ...」
私「...うん...っ...っっっ...」
ジャック「でもね...グレーテ...」
ジャック「それはできないんだよ...」
ジャック「キミもわかっているんだろう」
ジャック「このままここにいれば、僕らはみんな殺されてキミが壊れることを...」
私「でも...私が逃げたら!みんなが!」
ジャック「そうだね...」
ジャック「でも、僕らの気持ちを考えたことはあるのかい?」
私「えっ...」
ジャック「僕らはね。みんなキミのことが大好きなんだよ」
ジャック「バーバラもミリアもマリナも葵もシェイドもグリフォンも...そして私もね...」
ジャック「そして、おそらくみんなこう思っている...」
ジャック「みんなを代表して言わせてもらうよ...」
ジャック「生きて...」
ジャック「みんなこう思っているはずさ...」
ジャック「グレーテ...」
ジャック「キミはこの意味がわかるね?」
私「ジャック...」
私「でも、私...」
ジャック「さぁ...」
ジャックは私を見つめ、笑顔で微笑んだ。
私「っうっ...うっ...」
私「...うん...」
私は後ろを振り向き、涙を拭いながら扉の方に向かった。
私「...うっ...っぐ...っう...」
魔王「おや、それがキミの選択かい?」
魔王「ふーん...みんなを置いてねー...」
メアリ「魔王様...私が足止めを」
魔王「いや、これはこれでいいんだよ」
魔王「皆を捨てて自分だけがどこかでひっそり生き続ける?」
魔王「フッ...」
魔王「そんなのできるわけがないだろ。あの小娘が...」
魔王「いずれ彼女は一人、この選択を後悔して絶望するだろうよ...」
魔王「俺はその結果を知りたいだけさ」
魔王「全てを失った彼女がどうなるのかをね...」
魔王「さぁ。行くといい!すべてを置いて!」
魔王「だが、私はキミの支えとなるものを消し続けるが...」
私は魔王の話を耳にしながらも出口へ向かい、二人の間を横切った。
葵「朱音...俺はずっと朱音のお兄ちゃんだ」
葵「がんばれ...朱音...」
シェイド「主...おめぇさんとの旅が楽しかったぜ...元気でな...」
私「っ...うっ...」
私は涙を堪えて扉の外に出た。
魔王「下せ」
「ズドンッ」と大きな音が鳴り響いた。
その音が何を意味するのかわかった。
私「っ...うっ...ジャック...」
葵「朱音!振り返るな!」
シェイド「主!行け!」
螺旋階段を駆け降り、城の扉を開けて走り続けた。
私 (ごめん!みんな...)