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忘却のグレーテ  作者: だい
第二章
56/116

生きて…

魔王「さぁ。もう三つ目か」

魔王「いいね!キミ」

魔王「まだ耐えられるんだ...へー」


魔王「もうキミ気づいているだろう。最後が誰なのかをね」


私「嘘でしょ...」

私「嘘って言って...」


最後の台座にかけられた布から見慣れた赤髪がちらりと見えた。


私「いや!」

私「もう...いや...」

私「もう...やだ...」


私は自分の顔を両手で覆い、その場でしゃがみ込んだ。


葵「朱音!」

葵「頼むからもう逃げてくれ...お願いだ...」

葵「朱音...頼む...」

シェイド「主...俺からも頼む...逃げてくれ」


魔王「妹を思う兄!そして、主人を思う精霊ねー...」

魔王「さぁ、どうするグレーテ」


魔王「そ・う・だ」

魔王「ジャックも話せるようにしてあげよう」

魔王「キミには次のフェイズに進んで欲しいからね...」


魔王が右手を振りかざした。


ジャック「グレーテ...」

私「ジャック!」


私はジャックの元へ向かった。


私「ジャック...私...私...どうすれば...」

私「どうすればいいって言うの...」

私「っ...っっっ...」


ジャック「...」

ジャック「グレーテ...」

ジャック「キミは今でもみんなを救おうと思っていないかい?」

私「...うん...」


ジャック「フフッ...」

ジャック「やっぱりね...」

ジャック「困った子だ。本当に...」

ジャック「キミは頑固だし...僕らがなんと言おうとキミはこの場を離れないだろうさ...」


ジャック「でも、それがキミのいいところでもあるんだよ。グレーテ...」

ジャック「キミはとても優しい」

ジャック「そして、キミは誰よりもみんなを大切に思っている」

ジャック「だからこの場を離れられない」

ジャック「そうだろ?グレーテ...」

私「...うん...っ...っっっ...」


ジャック「でもね...グレーテ...」

ジャック「それはできないんだよ...」


ジャック「キミもわかっているんだろう」

ジャック「このままここにいれば、僕らはみんな殺されてキミが壊れることを...」


私「でも...私が逃げたら!みんなが!」

ジャック「そうだね...」

ジャック「でも、僕らの気持ちを考えたことはあるのかい?」

私「えっ...」


ジャック「僕らはね。みんなキミのことが大好きなんだよ」

ジャック「バーバラもミリアもマリナも葵もシェイドもグリフォンも...そして私もね...」

ジャック「そして、おそらくみんなこう思っている...」

ジャック「みんなを代表して言わせてもらうよ...」


ジャック「生きて...」


ジャック「みんなこう思っているはずさ...」

ジャック「グレーテ...」

ジャック「キミはこの意味がわかるね?」


私「ジャック...」

私「でも、私...」


ジャック「さぁ...」


ジャックは私を見つめ、笑顔で微笑んだ。


私「っうっ...うっ...」

私「...うん...」


私は後ろを振り向き、涙を拭いながら扉の方に向かった。

私「...うっ...っぐ...っう...」


魔王「おや、それがキミの選択かい?」

魔王「ふーん...みんなを置いてねー...」


メアリ「魔王様...私が足止めを」

魔王「いや、これはこれでいいんだよ」


魔王「皆を捨てて自分だけがどこかでひっそり生き続ける?」

魔王「フッ...」

魔王「そんなのできるわけがないだろ。あの小娘が...」

魔王「いずれ彼女は一人、この選択を後悔して絶望するだろうよ...」

魔王「俺はその結果を知りたいだけさ」

魔王「全てを失った彼女がどうなるのかをね...」


魔王「さぁ。行くといい!すべてを置いて!」

魔王「だが、私はキミの支えとなるものを消し続けるが...」


私は魔王の話を耳にしながらも出口へ向かい、二人の間を横切った。


葵「朱音...俺はずっと朱音のお兄ちゃんだ」

葵「がんばれ...朱音...」

シェイド「主...おめぇさんとの旅が楽しかったぜ...元気でな...」


私「っ...うっ...」


私は涙を堪えて扉の外に出た。


魔王「下せ」


「ズドンッ」と大きな音が鳴り響いた。


その音が何を意味するのかわかった。

私「っ...うっ...ジャック...」


葵「朱音!振り返るな!」

シェイド「主!行け!」


螺旋階段を駆け降り、城の扉を開けて走り続けた。

私 (ごめん!みんな...)

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