魔王
私はお城の扉を開けた。
シェイド「主」
私「何?」
シェイド「少し耳を貸せ」
私「ん?」
シェイドが私の耳元で囁いた。
私「え...ブ」
シェイド「軽々しくも口にするな!」
シェイド「わかったな?」
シェイド「くれぐれもだ」
私「あっごめん...うん...」
葵「どうしたんだ?」
私「ううん...何でもない...」
葵「そうか...」
私たちは螺旋階段を上がり、魔王がいる『王の間』の扉を目の前にした。
私「みんな。心の準備はいい?」
葵「うん!」
シェイド「おう!」
カノン「ああ。問題ない」
グリフォン「グガー!」
私「開けるよ」
私は扉を開けた...
扉を開けると部屋は何も見えず真っ暗だった。
私「真っ暗だ」
シェイド「どうなっていやがる」
すると突然、眩かしい光が私たちを照らした。
私「何?!」
葵「眩しいっ!」
私たちはライトに照らされた。
?「ようやく逢えたね...」
?「愛しのグレーテ...」
誰かの声が聞こえたと同時にスポットライトが玉座を照らした。
玉座には黒い仮面を被ったスーツ姿の男が座っていた。
?「お久しぶりだね。グレーテ...」
私 (おそらく、あの人が魔王...)
私「誰?」
私「私は知らない...」
?「えー...それは悲しいなぁ...」
?「私の声を聞いてもピンときませんか...」
?「まぁ、ムリもないか...まだ一度しか会ってないし...」
?「でも、やっぱり...キミのキラキラとしたその瞳...」
?「希望に満ち溢れた瞳...」
?「何度見ても美しい...」
?「初めて会った時、脳裏に焼き付けられたものだよ」
?「いいねぇ...」
シェイド「仮面を取れ!魔王!」
?「虫は黙れ...」
仮面の男が右手の親指と人差し指を重ねて腕を横に振った。
そうすると、シェイドが突如黒くモヤのかかったヒモのようなものに全身を拘束された。
シェイド「うっ...」
私「シェイド!」
?「虫がしゃしゃり出るな...」
?「今、私とグレーテが話しているんだから...」
シェイド「うう...」
シェイドが苦しそうにもがいた。
私「やめて!お願い!」
?「あぁ。すまなかった」
?「私たちの会話に横槍が入ったから、つい...」
仮面の男が右手を振り払ったと同時にシェイドの拘束が解かれた。
私「シェイド...大丈夫!?」
シェイド「あぁ。大丈夫だ...」
私「私が話すからあなたはじっとしていて...」
シェイド「あぁ...」
私「お兄ちゃんも!わかった?」
葵「わかった...」
私「話の続きをしましょう」
?「あぁ。そうだね」
私「あなたは魔王なのよね」
魔王「うん。そうだよ」
私「私がここに来た目的は知っているのよね?」
魔王「うん。もちろん」
魔王「友達を取り戻しに来たんだろう?」
私「そう。話が早くて助かった...」
私「じゃあ、ジャックとミリアちゃんを返して!」
魔王「そのお二人だけで良いの?」
私「え...」
魔王「クックック...」
魔王がマスク越しに不気味に笑った。
魔王「さぁ!楽しいショーの始まりさ!」
魔王が手を叩く。
すると、部屋の灯りが一斉に付いた。
眩い灯りに目が慣れてくると、玉座の横には断頭台にかけられているジャックの姿があった。
私「ジャックっ!」
魔王「感動の再会といったところかな?」
魔王「少し話させてあげよう」
魔王が右手を振り払った。
ジャック「グレーテ...なぜ戻って来たんだ!」
懐かしく優しい声が私の鼓膜を響かせた。
私「ジャック...」
私「やっと...やっと逢えた...」
私「ずっと逢いたかった...ずっと逢いたかったの...あなたに...」
ジャック「グレーテ...」
ジャック「私もさ...」
ジャック「でも、なぜ...」
ジャック「なぜだい?」
ジャック「キミはあっちの世界で幸せに暮らしていたんじゃないのかい?」
私「そう...だった...」
私「でも、こっちの世界がこんなことになっていると思わなかったの!」
ジャック「知ってしまったんだね...知らなければいいものを...」
私「何言っているの!?」
私「みんながこんな目に遭っていたのに...私は...のうのうと...」
ジャック「グレーテ...逃げろ!今すぐにだ!」
魔王「おっと。ここまでにしておこうか」
魔王「これ以上は私が嫉妬してどうにかなってしまいそうだ...」
私「ねぇ。お願い!ジャックとミリアちゃんを返して!」
魔王「返してか...」
魔王「それは、あまりにも一方的なんじゃない?」
私「あなたは何が望みなの?あなたは誰?!」
魔王「そうそう。そう来なくっちゃ」
魔王「じゃあ、私はだーれだ...ククック...」
魔王「そうだね...そろそろ仮面を外そうか」
魔王が仮面を外した。
私「あなたは!」