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忘却のグレーテ  作者: だい
第二章
52/116

パロの正体

私たちは砦の門の前で集まった。


私「それじゃあ、みんな気を引き締めて!」

葵「おう」

シェイド「あぁ」

カノン「承知した」

グリフォン「グガァー...」


私たちは門を潜った。


私「これは...何!?」


門をくぐった先には驚く光景が待ち構えていた。

そこには、城まで続く大通りの両脇をスケルトン兵がずらりと道を囲むかのようにひざまずいていた。


葵「おいおいおいおい。襲ってくるのかこいつら...」

シェイド「いや、こいつらは襲ってきやしねぇよ...」

シェイド「魔王の目的は主に会うことだ」

シェイド「これは歓迎のようなものだろう...」

シェイド「その目的がある以上は手を出して来ないはずだ...」

シェイド「念の為、殺気をすぐに感知できるよう周囲に結界を張っておく」

私「進もう」

葵「うん」


私たちはスケルトン兵に囲まれながらも道を進んだ。


私 (本当に魔王の目的って何なの...)


私たちは暫く大通りを歩き続け、願い事コンテストを行った大広場へ辿り着いた。

そこには目を疑う光景と異臭が漂っていた。


私「なんで...こんなに酷いことをするの...」

私「本当にひどい...訳がわからない...」


スケルトン兵が人の死体を次々と運び込み、広場は人の死体で山積みになっていた。


?「おやおや。お越し下さったのですね。グレーテ様」

?「そうですね。ギリギリ間に合ったというところでしょうか?」

私「その声は...パロ...」


シェイド「下がっていろ!主!」

パロ「覚えていただき光栄でございます。グレーテ様」

パロが物陰から姿を現した。


パロ「どうですか?この山は!圧巻でしょう。フフフ...」

パロ「美しいですね。やはり人っていうのは動かない方が美しい...」

パロ「まるで人形のようで。そうは思いませんか?」

パロ「美しいままであればいいのに...でもすぐに腐ってしますからねー。人というのは...本当に...」

パロ「臭いのはごめんだ...」


「パチンッ」

パロは指を鳴らした。

そうすると、死体の山が轟々と燃え上がった。


パロ「いいですね〜。綺麗ですね〜...」

パロ「彼らは肉体から解放されてどこへ行くんでしょうか...」

パロ「みんな行ってらっしゃい...」


私「なんで...なんでそんなことするの...」

私「あの人たちが何か悪いことした?」

私「普通に暮らしていただけよね」

私「あんなに幼い子どもも...」


パロ「うーん...酷いですか?」

パロ「これは一種の慈善事業のようなものですが...」

パロ「彼らは肉体があることによって、悲しみや痛みを日々感じなければいけないのです」

パロ「ですので、痛みを最小限にして今後、苦痛や悲しみを味わないようにしてあげたのですよ」

パロ「私なりの好意...でもあるわけです」

パロ「魔王様は正直言って私よりも残虐なお方ですからね」

パロ「あの方に弄ばれるぐらいなら『救ってあげた』と言っても過言ではないかと...」


私「何を...言っているの?」

葵「やつの話を聞き入れるな!こいつは話の通じる相手じゃない...」


パロ「もう皆様...そんなに怖い剣幕で私を見つめないでください」

パロ「魔王様のおもちゃに手を出す気なんて、さらさらありませんよ...」

パロ「それでは、私の信用が落ちてしまいますので...」

パロ「それにしても不運ですね...魔王様に目をつけられるなんて...」


私「あなた魔王の目的を知っているの?」

パロ「はい。もちろん。知ってますとも!」

私「話して!」

パロ「それはできませんねー...」

パロ「魔王様にこればかりは怒られてしまいますので...」


パロ「それよりもどうでしたか?魔王様からのプレゼントは?」

パロ「なかなか魔王様は良いチョイスをすると私は深く感銘を受けましたよ」

パロ「綺麗でしたでしょう。小鼠の小指...クックッ...」


私「許せない!」

私は怒りを露わにした。


葵「朱音!落ち着け!」

私「離して!」

葵「ダメだ。今は耐えるんだ!」

私「...許せない...許せない...ミリアちゃんにひどいことを...」

私「許せない許せない許せない!」

葵「朱音...頼むから...今は...」

私「クゥ...!」

シェイド「主...魔王にガツんと言わせるんだろ。こんなところで諦めるのか」

私「クゥ...!」


パロ「おやおや。これはお気に触れたようで...大変失礼いたしました」

パロ「心よりお詫び申し上げます」

パロが頭を下げた。


パロ「それでは、魔王様のいらっしゃるお城まで、私パロがご案内いたしますので...」

パロ「皆様。私の後ろを着いてきてください」

パロ「さぞかしお喜びになるでしょうね。クックック...」


パロがお城の方に歩き出す。

パロ「おや。皆様しっかり着いて来てくださいね」


葵「行こう」


私たちはお城の方に向かった。


しばらく歩き続けて石煉瓦の橋までたどり着いた。

パロ「私の案内はここまでです」


パロ「さぁ皆様。魔王様の盛大なるおもてなしをお楽しみくださいませ」

パロ「っと言いたいところですが、グレーテ様...失礼ながらお聞きします」

パロ「覚えてらっしゃる魔法は...ない...武器も...ない...」

パロ「いったいどのようにして魔王様に立ち向かわれるおつもりでしょうか...」

私「そんなの決まっているじゃない!ガツんと言ってあげるの!」

私「しょうもないことはやめなさい!って」

パロ「はぁ...」

パロ「そうですか...」

パロ「本当にそれだけ...でしょうか...」

私「何か文句でもあるの?!」

パロ「いえいえ。そうではありませんが...」

パロ「念の為、何かお持ちになられては?」

パロ「このままでは、魔王様のプランが...」

パロ「あっ...そうだ!」

パロ「こんな機会は滅多にないので、私のお気に入りをグレーテ様にプレゼントいたします」

パロが指を鳴らし、空中に紫色の渦が現れた。

そこから、漆黒色のところどころに金色の装飾が入ったボウガンが渦から出てきた。


私「そんなに危なっかしいの要らない!」

パロ「え!」


シェイド「いやいや...主、それは貰っておけ...それは神器だ」

私「じんぎ?...」

シェイド「あぁ。葵の聖剣に匹敵する勇者武器だ」

シェイド「しかし、なぜお前さんが聖弩(せいど)アポロンを」

パロ「おや。ご存じなのですね」

シェイド「それは先先代の勇者バロンが持っていた武器だろ」

パロ「そうです。これは先先代の勇者バロンが使用していた武器です」

シェイド「まさかっ...おまえさん...」

パロ「ええ。御名答」

パロ「私が先先代の勇者バロンですよ」


私「なんで勇者が...魔王の?」

パロ「まぁそうなりますよね...」

パロ「まぁ、話したら長くなるのであまり話したくはありませんが、気になるでしょうから簡潔にお話しさせていただきます」

パロ「あまり魔王様を待たせてはいけませんので...」

パロ「私は先先代の勇者バロンでした。あくまでも『でした』ですが...」

パロ「私もあなたと同じように魔王の手から世界を救う。ただそれだけに人生を捧げていましたよ...」

パロ「魔王を倒せば世界は救われるってね。人々は幸せになるってね...」

パロ「そして私は魔王城にたどり着きました」

パロ「そして魔王と対面し、矢先を魔王に向けました」

パロ「ですが...魔王の力は強大すぎて私の力では太刀打ちできる相手ではなかったのですよ...」

パロ「そればかりか魔王は私を弄んだ。まるで私をおもちゃのように...」

パロ「そして、魔王は私にこんな提案をしてきました」

パロ「『我はそちが気に入った。我を倒した後の世界を見てみたいか』ってね...」

パロ「私は『あぁ』と即答しました」

パロ「そうすると、魔王は私が打った矢を壁から引き抜き、自らの額に刺した」

パロ「そして彼はこう言ったのです」

パロ「『世界に絶望した時、我を訪ねよ』と...」

パロ「そうして、魔王は塵と化した」


パロ「その後、私は魔王を討ち取ったことで王からも皆から賞賛されましたよ」

パロ「それはそれは嬉しかったですよ...」

パロ「ですが...三年後、私はどうなっていたと思います?」

パロ「もう、勇者バロンなんて誰も見向きもしなくなり...」

パロ「魔物の勢力もなくなって私は仕事を失いました...」

パロ「魔物を倒す以外のことが出来ない私は...」

パロ「気付けば...街の裏路地で物乞いをしていましたよ...」

パロ「いつの間にか、私が救った多くの民に煙たがられました...薄汚い浮浪者が!ってね...」

パロ「その時、魔王の言葉がよぎったのです。『世界に絶望した時、我を訪ねよ』って言葉をね...」

パロ「そして、救った世界に絶望した私は魔王を復活させました」

パロ「魔王様は私に新しい名前と力を分けて下さったのです」

パロ「そして、今ここにいるパロが誕生したという訳です」

パロ「先ほどなぜそんなに酷いことをするのかってお聞きになられましたよね」

パロ「それは私が煙たがられたように人々がお互いを傷つけ傷つけられないようにするための私なりの正義なのですよ」


私「歪んでいる...」

私「本当...可哀想に...」

パロ「私がですか?何のご冗談を...クックック...」

パロ「私のようなものを憐れんでくださるなんてお優しいのですね。グレーテ様は...」

パロ「ですが、そのようなお考えでは魔王様を到底倒せませんよ...」


パロ「私にとって魔王様は偉大な方です。ですが...」

パロ「あの方がどのような結末を迎えられるのかは、私にとってはどうでもよいことなのです」

パロ「だた魔王様の望みを叶えれれば良い。私はそのように思っております」

パロ「おっと!話しすぎましたね...これでは怒られてしまいますね...」

パロ「それではこれを」


私はパロから神器を渋々受け取った。


パロ「それでは、皆様の健闘をお祈りいたします」

パロ「私にとって皆様が魔王様に打ち勝つ。それも一興にございます。クックック...」


私「パロ」

パロ「はい」

私「一発殴らせなさい!」

私「ミリアちゃんを小鼠呼ばわりしたことは絶対に許せない!」

パロ「それで、グレーテ様の気が収まるのでしたら...」

私「歯を食いしばって!」

パロ「はい...」


パロ「グホッ...」

シェイド (あぁ...痛そう...くわばら くわばら)

私はパロの腹に一発食らわした。


パロ「なかなかなお手前で...」


私「あー...ちょっとスッキリした!」

私「あとは魔王に一発ね!いや、一発じゃ足りない!五発!」

シェイド (あー怖...)


私「みんな行くよ!」

葵「おう!」

シェイド「あぁ...」

カノン「承知した」

グリフォン「グガァー!」


私たちは橋を渡り抜け、城の扉を開いた。

すみません。ここからもしかすると投稿が遅くなるかもしれません...

申し訳ございません。筆者より

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