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忘却のグレーテ  作者: だい
第二章
51/116

堕ちたエイジス

空は赤黒く染まっていた。

私「見えてきた。あれがエイジス」

私は指差した。

葵「あれがか...」

葵「静かだな...」

私「そう...静かすぎるの...おかしい...」

私 (まさか。もう魔王の手に落ちたってこと?)

私 (エイジス城で待っているってそうゆうこと?王様は?)

葵「おい!あそこに誰かいるぞ!」

私「え?」


お兄ちゃんが指差した方には一人の男性がいた。


私「あれって...アークさんっ!」


私「グリフォン!あそこに降りて!」

グリフォン「グガァー!」


グリフォンが降下し始めた。


「ガガガガ...」

グリフォンが地表に足を付けた。


私「アークさんっ!」


アークさんは砦を背にして横になっていた。

全身傷だらけで、右足のふくらはぎに巻き付けてある包帯からは血が滲んでいた。


私「アークさん!」

アーク「ん...あぁ...君か...」

アーク「なぜ来たんだ...」

アーク「君たちは元の世界で幸せに暮らしていたんだろう...」

アーク「早く元の世界に帰れ...これは忠告だ...奴には勝てない」

アーク「私の両親も...妹も...クゥッ...」

私「えっ...そんな...ご家族が!あっ...王様は!」

アーク「...王は...グハァッ...」


アークさんは口から血を吐いた。


私「アークさん!アークさんっ...しっかりして!」


彼からの反応はなかった。私は知っていた...人が死ぬ瞬間を...


私「そんな...」

私「...そんな...ひどい...ひどすぎる...」

私「私の知っている人が...みんな...みんな...」

私「ミリアちゃんとジャックは...大丈夫よねっ...生きているよねっ...」

葵「朱音...」

葵「今はそれを信じて進むしかない...」

私「うん...」

シェイド「どうやら着いたようだな...」


シェイドが中から出てきた。


私「シェイド」

シェイド「おぅ...主...」

シェイド「ここからは気をつけろよ」

シェイド「この砦以降から魔族の気配がプンプンしやがる」

シェイド「いったい何体いやがるんだ...」

シェイド「それに人間の気配が全くしねぇ」

シェイド「どうなっていやがる...」


「ガガガガガ...ガゴンッ...」

砦の門が急に開いた。

葵「これって...入れってことか?」

シェイド「こっからが正念場だ!」


私「いこう...」

葵「うん...」

シェイド「あぁ...」


葵「ここからは俺も」


お兄ちゃんは服の袖を捲り、赤い宝石の装飾がついたブレスレッドを出した。


私「なに?それ?」

シェイド「それなんか見たことあるようなぁ...」

葵「あぁ...これなー...」

葵「今朝マリー先生に水汲みを頼まれて、館の裏口から井戸に向かったんだ...」

葵「その時、俺は無力でただのお荷物だけど何とか朱音の力にならないかって...」

葵「『朱音を救いたいって』心で願ったんだ...」

葵「そしたらさ、上から何か光る物が目の前に落ちてきて...」

葵「その時は慌てて退いたよ」

葵「目を開けると、虹色に光る剣が地面に刺さっていたんだ」

葵「ビックリしたよ!」

葵「それで、剣を握ってみたんだ...そうしたら、このブレスレッドになったってわけ」

葵「もしかして、ここの赤いところを押すと剣になるのかな?」

シェイド「主の兄貴...それはなぁ...」

葵「葵でいいよ」

シェイド「あぁ...葵...それはなぁ...先代勇者の持っていた聖剣『イグナイト』かもしれん...」

シェイド「もう一度見せてみろ」


シェイドはまじまじとブレスレッドを見つめた。


シェイド「あぁ。間違いねぇ...『イグナイト』だ」

シェイド「俺は先代のアホを知っているから見間違えねぇ」


?「...シェイド...アホとは誰のことを言っている?」

シェイド「あぁ...なんか...聞き覚えのある声が...」

シェイド「あぁ...嫌な記憶...嫌な記憶...嘘だよねぇ...嘘って言ってー」


シェイドが額に冷や汗をかく。

お兄ちゃんが身につけていたブレスレッドが神々しく輝き、剣の姿に変わった。


?「シェイド...お前は相変わらず口が達者で可愛いやつだなぁ...」

シェイド「ああああ...」


シェイドが私の後ろに隠れた。

シェイド「ああああ...生きてたのん...」


?「あぁ...魂の分体ではあるがな...久しいなシェイド...」

私「だれ?」

?「紹介が遅れてすまなかった。私は先代勇者カノンだ」

カノン「まぁ...今の私は...無様な姿ではあるがこの剣に魂が宿っている...そうゆう感じだ...」

シェイド「バッカじゃねーの!ハハッ...ハハッ...勇者が剣に取り込まれてやがるっ!...ハハッ」

シェイド「カッ...ハハッ...本当に無様っ...おかしいっ...おかしすぎる...カッ...ハハッ」


カノン「だが、剣だからといって何もできないということでもない」

カノン「はい。このように」


剣が私の後ろの方に向かい、シェイドのお尻を刺した。

シェイド「痛っってぇーーーーーーーーー!おめぇ!ふざけんなよっ!」

カノン「おい!シェイド!どっちがふざけているのだ!」

カノン「私は剣ではあるが無力ではない!」

シェイド「おっめぇーっ!...やりやがったなぁー!」

カノン「元主人に向かってなんだ!その口ぶりは!」

カノン「もう一発いくか?おい!」


シェイド「ちょっと待っ...俺が悪かった!一旦たんま!たんま!」

シェイド「主ー...」

シェイド「助けてぇー!」


私「まぁまぁ...カノンさん...許してやってくださいな...」

私「シェイドも久しぶりの再会で嬉しいんだと思いますよ。きっと...」

カノン「まぁ...そなたがそう言うのであれば...そうか。嬉しいのだなシェイドは...」

シェイド (はぁん?そんなこと思ってねーよ。バーカ...脳筋勇者...アーホ...とんだ勘違い野郎)

私 (コラッ!シェイド!)

シェイド (大丈夫だ...あいつには聞こえてねぇからよ...)

私「はぁ...」

私はシェイドのあまりにもの稚拙さに呆れた。


カノン「しかし、こいつすぐに調子に乗りやがる。だから、その都度教育が必要だ!」

私「はい...それは十分知っています...」

私 (やっぱりシェイドとの付き合い方って、今も昔も変わらないんだー...)

私 (確かに小馬鹿にされた感じでムカつくよね。こいつの発言...)


私「話はそれで?」

カノン「失礼した」

カノン「私は剣に魂の分体を宿し、魔王を討ち取った後、ひっそり洞窟に身を潜めていたのだ」

カノン「だが、今朝そこの葵という男の強い願いに私の心は動かされた」

カノン「そして、彼の望みに応えたいと思ったのだ」

カノン「それで今に至る」

カノン「まさか、アホにまた会うとは思いもしなかったが...」

シェイド (アホ言うな!ボケッ)

私 (コラッ!シェイド...カノンさんもカノンさんだけど...そうやって影で言うのは見ていて惨めよ)

シェイド (だって...ムカつくもん...アイツ...)

私 (あなたも成長しなさい...あなたがケンカを吹っ掛けたんだから...)

シェイド (うぅん...)


カノン「ということで、これからは葵殿にお供する!」

カノン「これからよろしく!」

私「はい!とっても心強いです!」

葵「よろしくお願いします!」

カノン「そう固くならなくてもよい」

カノン「我はお主の剣なのだ」

葵「あっ...わかった。よろしくなカノン!」

カノン「あぁ!」


シェイド (あー...なんか嫌な感じ...あーやな感じ...あー...)


心強い味方が増えたと思った兄妹であったが、それを快く思わないシェイドであった。

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