予期せぬ来訪者
「ピヨピヨ..ピヨピヨ…」
朝日が窓から差し込んだ。
私「えー…もう朝…眠いよ…」
私「体もダルいし…最悪…」
私「あっお兄ちゃんは?」
私はお兄ちゃんの様子が気になり、急いで部屋に向かった。
私「お兄ちゃん!」
葵「よっ!朱音っおはよう!」
そこには、朝の支度をする兄ちゃんの姿があった。
私「もう!ちゃんと寝ておかないと!」
葵「大丈夫だって…」
葵「今やっておきたい事があるんだ」
葵「寝てばっかいられないよ」
私「うーん。もう…じゃあ、ちゃんとお薬は飲んでね!」
葵「わかったわかった」
私(よかった…少し元気になったようで…)
マリー先生が部屋に入ってきた。
マリー「ちょっとあなたたち!」
マリー「いつまで寝ているの?早くご飯食べなさい!」
私「えっ!マリー先生が作ってくれたんですか?」
マリー「まぁね…だってあなた達昨日何も食べてないじゃない…」
マリー「メーディアよりかは劣るかもだけど…まぁそれなりに食べられるんじゃない?」
私「やったー!」
一階のリビングに向かった。
ダイニングの内装は西洋風でとても綺麗に整っており、照明にはシャンデリアが使われていた。
私「カワイイ内装!」
マリー「そう?」
マリー「さぁ。さっさと食べなさい」
私「これマリー先生が作ってくれたんですか?」
テーブルの上にはハート型のサンドイッチが置かれていた。
マリー「そうよ…」
私「すごーい。ハートっ…カワイイ!」
私「これ作るの大変だったんじゃ?」
マリー「もー。いいから早く食べて」
マリー「葵も」
私「はーい!」
葵「あぁ」
私(こんなに可愛いのもったいないなぁ)
私(でも、せっかく作ってくれた事だし…)
私はサンドイッチを食べた。
私「美味しい!」
葵「おー。美味いな」
マリー「ふーん…そう?そんなに…」
マリー「ふーん」
私(カワイイなぁ。マリー先生)
マリー「もー。バカにしないで」
マリー「ふんっ」
私(いい!)
マリー「さぁ、食べたら頑張りなさいよ」
私「はい!」
マリー「あなた時間がないって言ってたわね」
私「はい…」
マリー「じゃあ、ここからはシェイドに教えてもらいなさい」
私「え…でも私まだ…放出は…」
マリー「それは、魔法を使いながら慣れた方があなたの場合早いと思ったの」
マリー「あなただったらできるわ」
私「マリー先生!私のこと…」
マリー「勘違いしないで…あなたはそこそこだから…」
私「ありがとうございます!」
私(この性格は癖になりますなぁ。グヘヘ…)
マリー先生が睨んできた。
私(あー。こわいこわい…)
私「ごちそうさまでした」
マリー「そのまま置いておいて...」
私「いや、私がお皿を...」
マリー「他の人にキッチンを触られたくないの」
私「あっそれでは、ありがとうございます!」
私「じゃあ、私は練習にっ」
葵「あまり無理するなよ」
私「お兄ちゃんこそ」
私は外に出た。
私「シェイド...」
シェイド「あいよ。ご主人」
私「ごめんね。急に呼び出して...」
シェイド「いいってことよ。主の頼みだからな」
私「ごめん!私...まだ魔力の放出ができていないんだけど...それでも教えてくれない?」
私「今日の朝までに魔力の放出も終わらせる予定だったのに...」
私 (そう...私って...いつも上手くいかない...)
シェイド「何落ち込んでんだ主!おめえさんらしくねぇなぁ...」
シェイド「あんたはスゲーんだぜ」
シェイド「魔力の循環をたった数時間で出来たんだろ?」
シェイド「そうそうできるもんじゃねぇよ...」
シェイド「主...俺はあんたのことをずっと見ていたぜ...」
シェイド「何度も何度も諦めずに真剣な眼差しで頑張る姿をよう」
シェイド「さすが俺の主だと思ったさ」
シェイド「あんたが出来たときにゃ...そりゃ俺も嬉しかった」
シェイド「あんたは一人じゃねぇ。兄貴はいねぇが俺がいる」
シェイド「そう落ち込むな...なっ」
私「フッ...羽虫のくせにカッコつけやがって...」
シェイド「あぁん?」
シェイド「あー...主を信用した俺がバカだった...」
私「うそうそ。ありがとうシェイド!とっても嬉しいわ。 フフッ...」
シェイド「そうやって素直に喜べばいいものを...」
マリー先生が慌てて館から飛び出して来た。
マリー「グレッ!誰か来る!」
葵「朱音!隠れろ!」
紫色の渦が空中に現れ、中から黒いハット帽子被り黒スーツで仮面を付けた男が現れた。
?「おやおや、このようなところにいらしたのですね...」
?「探しましたよ...」
シェイド「主!下がっていろ!魔族だ!」
マリー「アイスソリュートッ!」
マリー先生が杖を構え魔法を詠唱した。
杖の先から細い氷の棘が現れ、勢いよく黒スーツ男に向かって飛びかかった。
?「ムダムダ」
黒スーツ男は右手を薙ぎ払い、氷の棘を消し去った。
マリー「何ですって!」
マリー先生はまた杖を構えた。
?「少しお待ちになって...」
マリー「サンダー...」
?「お待ちになって...と言ったはずだが?」
黒スーツ男はまた右手を薙ぎ払った。
マリー「繰り出す直前で無効化された...そんなのありえない...」
?「まぁ皆様...そう殺気立たれなくても...」
?「私は魔王様から命令を受け、ご挨拶に伺ったまでのこと」
?「あなた様がグレーテ様でしょうか?なんと麗しい」
?「おっと、紹介が遅れ失礼いたしました...」
?「わたくし...魔王様の側近を務めさせております仮面のパロと申しますぅ。以後お見知り置きを」
パロ「魔王様はあなた様にお会いできるのを心待ちにされておりますよ...」
パロ「ウェーゲ村以降、消息をお絶ちになられたので...魔王様は大層ご心配なされておりました...」
パロ「ですが、よかった...こうして元気なお姿であられて...魔王様もお喜びになるかと思います」
パロ「あっそうでした...あなた様に魔王様からプレゼントです」
パロ「まぁ...そのご様子ですから...直接お渡しはできないでしょう...ここに置いておきますね」
パロと名乗る男は小さな小箱を地面に置いた。
シェイド「中身はなんだ?」
パロ「ハハッ...何を言うんですか...プレゼントなのだから開けるまでがお楽しみでしょう」
パロ「まぁ、ヒントぐらいは...」
パロ「グレーテ様がすぐにでも魔王様に逢いたくなるようなものが入っております」
パロ「あっ言いすぎたかな...おやおやこれ以上は魔王様に怒られますねぇ...」
パロ「それでは、私は失礼致します」
パロ「グレーテ様...またお会いできることを楽しみにしております。では...」
パロは紫色の渦に吸い込まれるようにして姿を消した。
シェイド「なんだったんだ?」
マリー「私が思っていたよりも手強い...あんなの...」
シェイド「それよりもあの箱の中には何が入っているんだ?」
私「あける?」
シェイド「いや、ここは俺が開ける」
シェイド「主に何かあったら元も子もないからなぁ...」
シェイドが箱のそばに近づく。
葵「朱音もっと下がっていろ!何が入っているかわからないっ」
シェイド「開けるぞっ」
シェイドは恐る恐る箱を開けた。
しかし、何も起こらなかった。
葵「なぁんだ...びびらせるなよ...」
葵「それで中身は?」
シェイドは中身を見た瞬間慌てて箱を閉じた。
シェイド「いや...これは見ない方がいい...」
シェイド「あぁ...これは見るな...」
私 (何が入っているっていうの?)
私「シェイド...お願い!見せてっ私もう逃げないって決めたの!」
シェイド「でもこれは...」
私はシェイドが持っている箱を奪ってフタを開けた。
私「キャー!!」
私は中身を見て慌てて箱を床に落とした。
箱の中には子どもの小指がお花と添えられて入れられていた。