表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘却のグレーテ  作者: だい
第二章
34/116

元の世界へ…


バーバラ「着いたよ...」


私は気が付くと元いた病室にいた。


葵「ここが朱音の病室ってことは...帰ってきたのか?…」

私「うん。帰ってきたんだね…」


私(なんだか不思議な気分…)


バーバラ「朱音ちゃん…葵…」

バーバラ「本当にごめんなさい…」

バーバラ「…本当にごめんなさい…」


バーバラさんが頭を下げて謝った。


バーバラ「私は本当に何てことをしてしまったんだいっ…」

バーバラ「私はなんてことを…」


私「バーバラさん…」

私「頭を上げてください…」

葵「あぁ。頭を上げてくれ…」


バーバラ「それは出来ないよ...」


バーバラ「私は取り返しのつかないことをしちまったんだよ…」

バーバラ「私はアンタらから両親を奪ってしまった…」


私「バーバラさん…」


バーバラ「だから...こっちに来たらって決めてたんだ…」


バーバラが自分の首に杖を当てた。


バーバラ「ごめんね。ミリア…」

バーバラ「私はね。取り返しのつかないことをしちまったんだ…」

バーバラ「こうでもしないと私はね…」


バーバラが目を瞑る。


私「何してるのっ!」


私は慌てて杖の先に自分の手を当てる。


バーバラ「朱音ちゃん。お願い...止めないでおくれ…」


バーバラ「離して...」

私は杖を無理やり取り上げて、床へ放り投げた。


私「ねぇ!」

私「まさか自害でもしようとした?」


バーバラ「…」


私「本当に呆れた…」


私「私あなたに何て言ったか覚えてる?」

私「死んで償えなんて言った?」


バーバラ「…」


私「あなたが死んで私はどう思うと思っているの?」

私「私がそれを見て喜ぶとでも思った?」

私「帰って来ないお母さんを待ち続けるミリアちゃんのことは?」


私「また、自分勝手に...死のうなんて...」

私「...」


私「ふざけないでっ!」


私「ねぇ...」

私「お願いだからもうそんな真似はやめて...」

私「お願いだから...生きて...」


私「私のためにも...みんなのためにも...」

私「そして、ミリアちゃんのためにも、リディアさんのためにも...」

私「お願い」


私はバーバラさんの手を両手で握りしめて祈った。


バーバラ「...朱音ちゃん...」


葵「バーバラ。どうか朱音の願いを聞き入れてやってほしいんだ...」

葵「俺からも頼む...」


バーバラ「あんたら...」


バーバラ「...ごめんよ...」

バーバラ「また、私は間違いをするところだった...」

バーバラ「また、朱音ちゃんに助けられちまったね...」


バーバラ「ありがとう...朱音ちゃん...」

バーバラ「リディアの言葉を思い出したよ...」

バーバラ「あんなことをしてごめんね...」

バーバラ「生きるよ。私は...」


バーバラ「生きて、沢山料理を作って沢山の人を幸せにするんだっ」

バーバラ「ミリアと一緒にね」


私「うんっ!それでそこバーバラさんだよっ」

バーバラ「フフッ...」


魔法陣の光が弱まる。


バーバラ「ごめんね。もう帰らないといけないみたいだ...」

バーバラ「ミリアが待っているからね...」


バーバラ「朱音ちゃん。元気でね...」

バーバラ「十分体調には気をつけるんだよ」

バーバラ「ご飯は毎日三食きっちり沢山食べてね」

バーバラ「あと、夜は寒くならないように布団をかけるんだよ。夜更かしはほどほどにね」

バーバラ「変な男には捕まるんじゃないよ...」

バーバラ「あと...あと...」

バーバラ「あとはね...っ...うっ...っ」


私「...っ...うっ...っ」


私は涙を流すバーバラさんを抱きしめた。


私「バーバラさん...好きよ。愛してる...」

バーバラ「私もだよ。朱音ちゃんが大好きさ...愛してるさ...娘のようにね...」

バーバラ「もうアンタをできれば離したくないよ...」

バーバラ「うぅー...わぁー..ぁぁ...うぅ...」

私「フフッ...」

私 (私もよ。バーバラさん。でも、あなたにはあなたの帰りを待っている人がいるから...)


私はバーバラさんの後ろ髪を優しくなでた。


私「さぁ...もう泣くのはおしまい」

私「最後にバーバラさんの笑顔が見たいな」


バーバラ「...っ...うっ...ごめんよ...」

バーバラ「そうだね...朱音ちゃんの言うとおりだ...」

バーバラ「最後は笑顔だね」


バーバラさんが照れくさそうに微笑んだ。


バーバラ「こう...かな?」


私「うんっ!カワイイっ...」


私「バーバラさん...いつまでもみんなと元気でねっ!」

バーバラ「うん!新しくできた娘も絶対に幸せにさせるさ」

私「あと、たまにジャックのこと気にかけてあげて...」

私「あー見えて寂しやがりだからさ...」

バーバラ「あぁ。わかったよ。朱音ちゃん」


バーバラ「葵...私の勝手だけど...朱音ちゃんを頼んだよ...」

葵「あぁ。まかせろ」


バーバラ「じゃあね...」

私「じゃあ...」


私は笑顔で手を振った。


バーバラさんは光に包まれて、姿を消した。


私「行っちゃった...」


葵「行っちゃったね...」


私「あっ...」


私は病室に落ちていた本を手に取った。


私 「もー。これどうするのよ...」

私「ジャック...」


窓から春の風が吹き込んだ。


葵「朱音...」

私「ん?」


葵「お家に帰ろう」

私「うんっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ