元の世界へ…
バーバラ「着いたよ...」
私は気が付くと元いた病室にいた。
葵「ここが朱音の病室ってことは...帰ってきたのか?…」
私「うん。帰ってきたんだね…」
私(なんだか不思議な気分…)
バーバラ「朱音ちゃん…葵…」
バーバラ「本当にごめんなさい…」
バーバラ「…本当にごめんなさい…」
バーバラさんが頭を下げて謝った。
バーバラ「私は本当に何てことをしてしまったんだいっ…」
バーバラ「私はなんてことを…」
私「バーバラさん…」
私「頭を上げてください…」
葵「あぁ。頭を上げてくれ…」
バーバラ「それは出来ないよ...」
バーバラ「私は取り返しのつかないことをしちまったんだよ…」
バーバラ「私はアンタらから両親を奪ってしまった…」
私「バーバラさん…」
バーバラ「だから...こっちに来たらって決めてたんだ…」
バーバラが自分の首に杖を当てた。
バーバラ「ごめんね。ミリア…」
バーバラ「私はね。取り返しのつかないことをしちまったんだ…」
バーバラ「こうでもしないと私はね…」
バーバラが目を瞑る。
私「何してるのっ!」
私は慌てて杖の先に自分の手を当てる。
バーバラ「朱音ちゃん。お願い...止めないでおくれ…」
バーバラ「離して...」
私は杖を無理やり取り上げて、床へ放り投げた。
私「ねぇ!」
私「まさか自害でもしようとした?」
バーバラ「…」
私「本当に呆れた…」
私「私あなたに何て言ったか覚えてる?」
私「死んで償えなんて言った?」
バーバラ「…」
私「あなたが死んで私はどう思うと思っているの?」
私「私がそれを見て喜ぶとでも思った?」
私「帰って来ないお母さんを待ち続けるミリアちゃんのことは?」
私「また、自分勝手に...死のうなんて...」
私「...」
私「ふざけないでっ!」
私「ねぇ...」
私「お願いだからもうそんな真似はやめて...」
私「お願いだから...生きて...」
私「私のためにも...みんなのためにも...」
私「そして、ミリアちゃんのためにも、リディアさんのためにも...」
私「お願い」
私はバーバラさんの手を両手で握りしめて祈った。
バーバラ「...朱音ちゃん...」
葵「バーバラ。どうか朱音の願いを聞き入れてやってほしいんだ...」
葵「俺からも頼む...」
バーバラ「あんたら...」
バーバラ「...ごめんよ...」
バーバラ「また、私は間違いをするところだった...」
バーバラ「また、朱音ちゃんに助けられちまったね...」
バーバラ「ありがとう...朱音ちゃん...」
バーバラ「リディアの言葉を思い出したよ...」
バーバラ「あんなことをしてごめんね...」
バーバラ「生きるよ。私は...」
バーバラ「生きて、沢山料理を作って沢山の人を幸せにするんだっ」
バーバラ「ミリアと一緒にね」
私「うんっ!それでそこバーバラさんだよっ」
バーバラ「フフッ...」
魔法陣の光が弱まる。
バーバラ「ごめんね。もう帰らないといけないみたいだ...」
バーバラ「ミリアが待っているからね...」
バーバラ「朱音ちゃん。元気でね...」
バーバラ「十分体調には気をつけるんだよ」
バーバラ「ご飯は毎日三食きっちり沢山食べてね」
バーバラ「あと、夜は寒くならないように布団をかけるんだよ。夜更かしはほどほどにね」
バーバラ「変な男には捕まるんじゃないよ...」
バーバラ「あと...あと...」
バーバラ「あとはね...っ...うっ...っ」
私「...っ...うっ...っ」
私は涙を流すバーバラさんを抱きしめた。
私「バーバラさん...好きよ。愛してる...」
バーバラ「私もだよ。朱音ちゃんが大好きさ...愛してるさ...娘のようにね...」
バーバラ「もうアンタをできれば離したくないよ...」
バーバラ「うぅー...わぁー..ぁぁ...うぅ...」
私「フフッ...」
私 (私もよ。バーバラさん。でも、あなたにはあなたの帰りを待っている人がいるから...)
私はバーバラさんの後ろ髪を優しくなでた。
私「さぁ...もう泣くのはおしまい」
私「最後にバーバラさんの笑顔が見たいな」
バーバラ「...っ...うっ...ごめんよ...」
バーバラ「そうだね...朱音ちゃんの言うとおりだ...」
バーバラ「最後は笑顔だね」
バーバラさんが照れくさそうに微笑んだ。
バーバラ「こう...かな?」
私「うんっ!カワイイっ...」
私「バーバラさん...いつまでもみんなと元気でねっ!」
バーバラ「うん!新しくできた娘も絶対に幸せにさせるさ」
私「あと、たまにジャックのこと気にかけてあげて...」
私「あー見えて寂しやがりだからさ...」
バーバラ「あぁ。わかったよ。朱音ちゃん」
バーバラ「葵...私の勝手だけど...朱音ちゃんを頼んだよ...」
葵「あぁ。まかせろ」
バーバラ「じゃあね...」
私「じゃあ...」
私は笑顔で手を振った。
バーバラさんは光に包まれて、姿を消した。
私「行っちゃった...」
葵「行っちゃったね...」
私「あっ...」
私は病室に落ちていた本を手に取った。
私 「もー。これどうするのよ...」
私「ジャック...」
窓から春の風が吹き込んだ。
葵「朱音...」
私「ん?」
葵「お家に帰ろう」
私「うんっ!」