商業都市スフィア
村から離れてかなり歩いた。
ジャック「だいぶ歩いたね。地図を見ると今半分ってところかな」
私「お昼休憩しない?」
ジャック「お弁当を食べたいだけなんじゃ?」
私「そんなこと言うんだったら、私だけお先に…」
ジャック「うそうそ。少しからかってみただけさ」
ジャック「僕も一緒に食べたいなぁ…」
私「じゃあ、食べよ」
ジャック「ああ」
シートの上にバーバラさんのお弁当を広げた。
私「わぁ。カワイイッ!」
ジャック「いただきまーす!」
私「もうちょっと待って。もう少し眺めさせて」
ジャック「はぁーい…」
バーバラさんのお弁当をしばらく眺めた。
私「本当に可愛い」
私「もういいよ。一緒に食べよ」
気が付いたらジャックは片腕をついて横になっていた。
私「ジャック拗ねてるの?」
ジャック「別にぃー...」
私「ごめんごめん。その代わり卵焼き一つあげるからさ」
ジャック「本当かい?やったー!」
ジャック「じゃあ、僕のピーマン代わりにあげるよ」
私「それって好き嫌い?ちゃんと食べないとダメだよ」
ジャック「へへっ...バレてたか...」
バーバラさんのお弁当に手をつけた。
私「わぁ...美味しい!バーバラさんの優しい味だ。幸せ」
私「美味しいね。ジャック」
ジャック「うん。うまいうまい」
お弁当を食べ終え、少し休憩してからまた歩み出した。
私「そうだ。ジャックって家族とかいるの?」
ジャック「ん...いないよ...」
私「そう…なんだ...」
ジャックの表情が一瞬曇ったような気がした。
私( 気のせい…かな...)
ジャック「見えてきたよ。あれが商業都市スフィア」
ジャック「その名の通り高い障壁で丸く囲まれているようだね」
私「とても大きい!」
検問所には大都市だけあって沢山の人が並んでいた。
私たちも列の後部に並んだ。
ジャック「そろそろだね...」
検問官「おいお前!通行証を見せろ!」
前の人「すみません。持っていなくて...」
検問官「それでは通せん!お前どこかで見た顔だな?罪人リストを」
私たちより前の人が後ろ逃げ出した。
検問官「おい待てコラ!あいつを追っかけろ。罪人だ!」
検問所の人「はい。次!通行証を見せろ!」
私 ( 大丈夫…だよね... )
検問官「メアリの知人か?」
私「はい。メアリさんにはお世話になりました」
検問官「ふーん」
私( お願い。通して…)
検問官「問題ない。通れ!」
私 ( よかったー...)
無事検問所をくぐり抜けられた。
スフィアの門をくぐり抜けた。
私 「うわーぁ!すっごーい!」
商業都市だけあって、街は活気に溢れていた。
?「はい。いらっしゃい。新鮮な果物だよー」
私 ( 道がお店で囲まれている。まるで縁日みたい)
私「わぁ!あれ美味しそう」
私「ねぇ!ジャックあれ食べたい!」
ジャック「キミって子は本当に食べ物には目がないんだねぇ…」
私「いいじゃん別に。まだお金あるんだし!」
ジャック「うん。まぁいいか...一生懸命ある歩いたし...」
店主「へい。いらっしゃい」
店主 「スキュード地方でしか獲れないフルーツ「マロップ」だよ」
店主「焼くことで、表面はシャキシャキ、中はフワっとした食感で、ハチミツとの相性抜群!」
店主「焼きマロップだよー。一つ十五ベルク」
店主「美味いよ。とろけるよー」
私 「ジャックもいる?」
ジャック「甘いものは苦手なんだー」
ジャック「あっちのコカトリス串なら食べたいけどね」
私「じゃあ、これ!」
私はジャックにお金を渡した。
ジャック「いいのかい?」
私「うん。ここのベンチ集合ね」
ジャック「承知ーっ!」
私「楽しみっ!」
私「すみません。焼きマロップ一つください」
店主「あいよ。 十五ベルクね」
店主「ありがとよ」
私( これが焼きマロップ~!?)
私「すっごくカワイイ!」
焼きマロップはリンゴのように実は赤く表面はツヤツヤとしており、少し焦げ目がついていた。
私がマロップにかぶりつこうとした時、路地の片隅でボロボロの服を着た小さい赤髪の女の子がこっちを見つめていた。
私( んー。そんな目で見られると食べる気が引けるよ…)
私 (どうしたんだろう?)
私は女の子に近づいた。
私「どうしたの?」
女の子「お腹すいた...」
私 ( え…どうする私…これあげる?うーん...)
私「これ、食べる?」
私 ( 私の心は泣いておりますー…)
女の子「いいの?!」
私「う、うーん。うん...」
女の子「ありがとうっ!」
女の子は勢いよくマロップを頬張った。
女の子「美味しい!すっごく美味しい」
私 ( だろうね。そりゃ美味しいだろうよ...)
私( 私はキミの笑顔で満足さ…さよならマロップ…)
私 「名前は?」
女の子 「ミリアだよ...」
私 「ミリアちゃんて言うんだね」
私 ( なんて可愛い名前…それに赤色髪の美幼女)
ミリア「お姉ちゃんは?」
私 ( お姉ちゃんって呼んでくれるの? なんて可愛いの! マロップ譲ってよかったー)
私 「私は…グレーテ」
ミリア「そうなんだ!」
ミリア「お姉ちゃん。マロップありがとう!」
私「ううん。いいの…いいの...」
私「ミリアちゃん。お父さんとお母さんは?」
ミリア「いないよ。だって私、孤児だもん...」
私 「そうなんだ...ごめんね。変なこと聞いちゃって...」
ミリア「ううん。大丈夫だよ…」
ミリア「私ね。シスターとはぐれちゃったの」
ミリア「一緒にお買い物に来たんだけれど…」
ミリア「迷子になって…」
ミリア「私ね。あの場所でシスターとみんなで住んでるんだ…」
ミリアちゃんが指さした。
ミリア「でも、あそこに行くまでの道が怖くて…」
私「じゃあ、私がお家まで送ってあげよっか?」
ミリア「いいの?」
私「うん!」
行き先までの道はミリアちゃんが言う通りとても薄暗く、道の脇には浮浪者らしき人が溢れかえっていた。
ミリア「ここ怖いんだ...怖そうな人もいて...」
私「本当だね...」
私 (確かに...この子一人では...)
?「おっと。お嬢ちゃんたち」
?「これはニ人とも上物だ。これは高くで売れるぞっ」
私たちは数人の男の人に囲まれた。
ミリア「お姉ちゃん。怖いよぉ...」
私「ミリアちゃん私の後ろに隠れていて…」
私 ( ダメだどうしよう...)
男たち「ハッハッァー。怖がってやがる」
男たち「可愛いねー。あとでおじさんがゆっくり遊んであげるからねー」
私「くっぅぅ…」
「コツ…コツ…コツ…」
誰かがこっちに向かって来る何かの音が聞こえた。
男たちの頭に食べ物串が当たった。
男たち「痛って!」
男たち「誰だ?俺様に串を投げたやつは!?」
?「やーっぱりキミかい...」
?「デザートを買いに行って、なぁーんでこうなるかなぁ...」
私「ジャック?!」
男たち「なんだ! お前は?」
私「ジャック!もしかしてあなた。串焼き全部一人で食べたの!?」
ジャック「本当に…キミって子は...」
ジャックは頭を抱えた。
ジャック「なんで助けに入った第一声がそれなんだい...」
ジャック「普通、『助けに切れくれたの!』とか、じゃないのかい?」
私「あっ...助けに来てくれたの?」
ジャック「下手な演技はやめておいた方がいいよ…」
男たち「茶番はもういい」
男たち「あいつにかかれいぃ!」
ジャックはかかってきた男たちをステッキで一網打尽にバッタバッタと薙ぎ払う。
男たち「痛って!」
男たち「こいつ強えー」
ジャック「ほーれー」
ジャック「あれ?もう終わりかい?」
男たち「おいっ!お前ら逃げるぞー」
男たち「チッ! 覚えてろよー」
ジャック「覚えたくなぁーいよ。キミたちのような者に私のメモリーを使うのは勿体無いからねー...」
男たちが慌てて去っていく。
私「ジャックありがとう。本当に危なかったの」
ジャック「本当かい?そう思っていたら串焼きは頭から出て来ないと思うんだけどなぁ...」
私「てへへっ」
ジャック「てへへっじゃないよ」
ジャック「その子は?」
私「この子はミリアちゃん」
ミリアちゃんがジャックを怖がった。
私 「そりゃ怖いよね。この見た目だし...」
ジャック「そんなにこわいかなー? 笑顔笑顔。こんにちゔぁ」
ミリア「うわぁ...あぁ...」
私「それは余計怖い」
私「ミリアちゃん。大丈夫。この人見た目はこんなのだけど...大丈夫だから」
ミリア「そうなの...」
ミリア「ふーん...」
ミリアちゃんは指を咥えた。
私( 可愛いっ!なんて可愛いの…)
私「まぁ、とりあえず、ミリアちゃんを一緒にお家まで連れて行こ」
ジャック「そうだね...」
ミリアちゃんを連れて修道院まで向かった。
ミリア「ここ!ついたー!」
ミリア「お姉ちゃん。ピエロのおじさんありがとう!」
私 「なんて天使なの!カワイイっ!」
私 「ううん...いいんだよ」
ジャック「ん?おじ?おじさっ?ん?ん?...」
ジャックはおじさんと呼ばれて納得していない様子だった。
ジャック「ううん...またな...ガキンチョ」
ミリア「ガキンチョ?」
私「こら!ミリアちゃんを変な呼び方しない!」
ジャック「だって、おじさんとか言うんだよ...僕に...」
私 ( 呆れた...薄々気づいてはいたけど、やっぱりこの人、中身はとっても幼い)
私( こんな小さな子に言われて普通腹立つかな…)
私 「またね」
私たちは手を振ってミリアちゃんを見送った。
ジャック「なぁに?その僕に向ける白い視線は?」
私「べつに...」
ジャック「何か内心思っているだろ?」
私「いや、べつに...」
ジャック「あっそう?じゃあいいんだけど...」
私「とりあえず、今日はもう遅いし宿を探そっか」
ジャック「そうだね。今日は色々なことがあって僕も疲れたよ...」
私「私もクタクタ」
近くで宿を探し、泊まることにした。
店主 「いらっしゃいませ。お二人ですね。入浴込みで100ベルクです。」
私 ( 高いなー...まぁでも仕方ない...お風呂も入れるしいいか...)
店主 「申し訳ございませんが、当店もうすでにお食事をご用意できる時間が過ぎておりまして...」
私 「いいです。じゃあそれで...」
店主 「毎度あり。お部屋は階段を上がってすぐ向かいです。ご入浴場はこちら右手にございます」
私「私お風呂入ってくるね」
ジャック「うん。僕も風呂に入って今日はゆっくりさせてもらうよ」
私「私ご飯はもういいかな…明日で」
ジャック「あぁ、僕もだ」
ジャック「でも、記憶の引き継ぎはしないとね」
私「わかった」
ジャック「じゃあ、また部屋でね」
私「うん」
お風呂場の戸を開けるとそこは大浴場だった。
私 「わぁ。大きいお風呂ー。しかも時間が遅いだけあって誰もいない」
私「私だけ」
私「サイコー」
私はゆっくりお風呂に浸かった。
私「あー。気持ちいい...温ったまるー」
私( こっちの世界に来てまだ2日しか経ってないんだよねー)
私 「色々あったなー...」
私 ( あっやばい...眠気が...)
私 ( そうだ)
私は急いでお風呂から出て、頭から冷水をかぶった。
私 「あ.....冷たー....」
私 (でも、おかげで目が覚めたかも)
私 (もう一回浸かってすぐに上がろ...このままじゃ風邪ひくし...)
「ジャボン」
私 ( あー。幸せぇ~)
私は心置きなく入浴を堪能した。
私 ( さぁ、ジャックはもう部屋に戻っているかな?)
ジャック 「遅いじゃないかー。もう寝たいんだからねぇー」
私「ごめんね。おそくなって...」
私「え?!あなた本当にジャック?」
そこには、銀髪の美少年がいた。
ジャック「うん。そうさ。普段は素性がバレないようにメイクをしているけどね...」
私 ( ヘー。意外と美系男子だったんだ)
ジャック「またキミは変なこと考えている」
私「いや、別に...」
ジャック「早くこっちに来ておくれ」
私はジャックのいるベットの上に乗った。
私「あのさー。ジャック...私どうしてもあなたに聞いておきたいことがあって...」
ジャック「それは今日じゃないとダメなの…?」
私「うん...気になって眠れない...」
ジャック「じゃあ、一つだけだよ...」
私「うん...」
私「怒らないでね?」
ジャック「あぁ。僕は怒らないさぁ...」
私「あのね...」
私「コカトリスの串焼きってどんな味だった?」
ジャック「え...」
私「だからー。どんな味だった?」
私「タレは甘かった?」
私「それとも塩味だった?」
私「お肉は柔らかかった?」
ジャック「なんかもっと大切な話かと思っていんだけれど…」
ジャック「キミがどうしてもって言うから聞いたのに…」
ジャック「んー…」
私「え...さっき怒らないって言ったよね?」
ジャック「はぁ...」
ジャック「もう怒る気力もないよ...もうしばらく贅沢グルメは禁止だ
」
私「え...なんでー。私の楽しみがー...」
ジャック「じゃあ、もう記憶引き継がないよー」
ジャック「朝起きたら、キャーー…変態。アナタはだあれ?からの人生一からやり直しーだね」
ジャック「さすがの僕も面倒見切れないよ」
ジャック「毎朝、変態扱いされる僕の身にもなってみなよ」
私「私が悪かったです。ごめんなさい...」
私「せめて焼きマロップの見た目の記憶だけでもどどめて置きたいです...」
ジャック「結局、食べられなかったのかい?」
私「うん。ミリアがお腹すいていたからあげちゃった...」
ジャック「そうかい。結局食べられなかったんだね。フッ」
私「なぁに?今の笑い。バチが当たったみたいなぁ…」
ジャック「さぁ?頭の中は個人の自由だろ」
私「まぁね。でもなんかバカにされたようでムカつく...」
ジャック「フフッ!」
ジャック「もういいじゃないか。今日はここまでにしよう。さぁこれを見つめて...」
私は砂時計を見つめ、眠気に襲われた。
-----翌日-----
ジャック「やぁ。目が覚めたかい?」
私「キャーーーーーー!」
ジャック「ハイハイ」
ジャック「毎回のやりとりが面倒だから、スっ飛ばさせてもらうよ」
ジャック「これを見つめて」
私「ジャック...お腹すいたぁなぁ…」
私「ぺこぺこだなぁ…」
ジャック「起きてまたすぐ飯の話かい...」
ジャック「奇声を浴びせられてすぐこれだよ」
私「早く行こうっ!」
ジャック「はいはい」
一階の食堂へ向かった。
私「美味しぃー。このビーツのスープ、パンとの相性サイコー!」
私「おかわりくださーい!」
宿屋「あの…すみません。もうこれで最後です...作り置きしていた分もすべて空っぽなので...」
私「あっ...」
少し恥ずかしくなった。
ジャック「キミの胃袋はどうなっているんだい。本当に底なしだね」
私「だって昨日の夜食べてないもん...」
私「でも、それなりにお腹いっぱいになったかなぁ」
ジャック「まぁ、キミが満足したらよかったよ」
ジャック「なんならちょっと太った?」
私「最低…」
私「本当にっ!女の子のこと何にもわかってないんだから...」
ジャック「また怒ったのかい?」
私「別に...アナタは純粋にそうゆう人だってのがもう分かったもんねー...」
私はふと気になり、クローバーを確認した。
5分の2ほどが枯れ始めていた。
私「ジャック…急ごう」
ジャック「うん。もう残された時間は思っているより少ないのかもしれない…」
私「うん...」
宿屋を出た。
ジャック「さぁて、どこに向かおうか」
ジャック「ギルド商会で聞くと怪しまれるだろうし、どうしようかなぁ?」
私「うーん...そうね...」
私「メアリさんが言っていた魔導書を取り扱っているお店なら、何か手がかりが見つかるかも」
ジャック「そうだね。でも、おそらく表立ったとこにはそういったお店はないだろうね...」
私「なんで?」
ジャック「そりゃあ、国王が魔法を恐れて魔女狩りを昔行ったからだよ」
ジャック「それによって国内の大半の魔女は滅んだんだけどね」
ジャック「魔法を扱う者は国の反逆者と見なされるのさっ」
私「そうなんだ...」
私「じゃあ、都心から離れた裏路地とかにそういったお店があるのかも」
ジャック「うん。行ってみようか」
私たちは大通りから外れた裏路地の方へ向かった。
私「この辺りかな...なんだかとても薄暗い...」
私 ( やっぱり、ジャックがいてくれると多少怖くても安心)
私 ( この前、ミリアちゃんと2人の時とても怖い思いしたし…)
ジャック「うーん。どこだろうねー...」
私「うーん...」
ジャック「今突然、思ったことだけどさ」
ジャック「キミって感情の起伏が激しいよね」
ジャック「そうゆう女なのかい?」
私 ( こいつは一体急に何なんなの!?私がメンヘラだとでも言いたいのか?)
私( なんで今それを…)
ジャック「あっ」
ジャック「いや、なんでもない...」
私「ジャック!何でもかんでも思ったこと口にして良いわけじゃないんだからねっ!」
ジャック「あぁ...以後気をつけるよ...」
ジャック「ごめん...」
私「あっ…あのお店!本の看板がかけてある。行ってみよう!」
ジャック「うん」
店主「いらっしゃい」
店は所狭しと物が積まれており、奥にはいかにも魔女っぽい姿をした高齢の女性が座っていた。
私「あの~。お尋ねしたいことがあるのですが...」
店主「はい。どうぞ」
私「ありがとうございます。私たちある魔女を探しておりまして...」
店主「はい。それはどのような魔女ですかね?」
私「私も詳しくは知らないのですが、数年前少女を食べたと言われている魔女です」
私「お知りですかね?」
店主「メーディアのことですね」
私「メーディア?」
店主「はい。もともと彼女は白魔女でした」
私「白魔女?」
店主「はい。白魔女とは人間と友好関係を保ち、害悪をもたらさない魔女です」
私「あなたはとても魔女に関してお詳しいのですね」
店主「まぁ私も魔女の端くれですから」
ジャックの目つきが変わり、杖を構えた。
店主「お付きのお方...そんなに殺気立たなくても。私はあなた方に危害は加えませんよ...」
私「ジャック...こう言ってくれているんだから杖を下げて...」
ジャック「キミは魔女を見くびりすぎだっ」
私「ジャック!大丈夫。私を信じてっ」
ジャック「わかったよ。でも何かあった時のために少し下がっておいてくれ」
私「わかった」
私「すみません。話を戻すのですが白魔女だったというのは?」
店主「私も詳しくは知らないのですが、人間に大切なものを奪われてから人間を憎むようになり、黒魔女に陥ちました」
店主「私もずいぶん会っていないのですが、昔はとてもあどけなく純粋な子でしたよ」
私「その魔女の所在についてはお知りですか?」
店主「申し訳ございません。今彼女がどこにいるのかはわかりません」
私「そうですか...」
店主「もし、彼女の髪であったり、血などがありましたら追うための魔道具を作ることはできますが…」
私「まだ会ったことこともなくて、そんなものは...」
ジャック「これは?ダメかい?」
ジャックが店主に赤いものが付いたクッキーを渡した。
店主「これは?」
ジャック「あなたにはこれが何なのかわかるはず...」
店主「ほぉ...これなら、作れるかもしれませんねぇ」
店主「ただ、この量でしたら半径30メートル以内に限られますが...」
私「構いません。お願い致します。時間がなくてどれぐらいかかりますか?」
店主「そうですね。2日程かかります」
私「そんなに?!」
店主「はい」
私 ( こんなところで時間をかけても大丈夫なのかな...でも、今はそれしか手掛かりがない...)
店主「ところで、その魔女に会ってどのようにされるおつもりで?」
店主「彼女はそんじゃそこらの攻撃や魔術では太刀打ちできませんよ...」
私 ( そうよね...分かってはいたんだけれどどうすればいいんだろう...)
店主「どうやら、まだ方策は無いようですね...」
私「えっ…今、私が考えていることを分かったんですか?」
店主「はい。一応私も魔女の端くれですから...」
私 ( この人は何者…)
店主「おやおや。あなたにはめずらしい精霊がお付きのようで...」
店主「あなたがこちらの世界に来る前から側にいてくれていたようですよ...」
私 ( なんで私が他の世界から来たことまで…)
私「私に?」
店主「はい。ですが、まだ十分に力を出せていないようですね...」
店主「なるほど...あなたほどの魔力をお持ちであれば、これほどの精霊も従えて当然ですね...」
店主「あと、魔女には精霊魔法がかなり有効ですよ。ただその力を解放できればの話ですが...」
私「どうすれば、その子の力を解放できるんでしょうか?」
店主「そうですね。『精霊の首都エレメンタル』に行かれてはどうでしょうか」
私「エレメンタル?」
店主「はい。地図はお持ちでしょうか」
私「はい」
マジックバックから地図を取り出した。
店主「ここから東のこの辺りになります...」
店主「魔道具の完成までにはちょうどいいかと...」
店主「これは確かではないのですが、そこには精霊たちの神木『エレメンタルツリー』というのがあるようです」
店主「そこで何かしらの恩恵が得られるのではと私は考えております」
私「ありがとうございます。行ってみます!」
店主「それでは二日後またここでお会いしましょう」
私「ちなみに魔道具のお代は?」
店主「そうですねー。我々魔女にとって貨幣は無価値に値します」
店主「それではお嬢さんのその瞳を一つ...」
ジャック「ふざけるなっ!」
私「ちょっとジャック...話は最後まで!」
店主「と言いたいところですが、現実的には無理な話でしょうから...」
店主「お嬢さんの高い魔素を含んだ髪の毛を数本、爪のかけら2つ、血を数滴でいかがでしょうか」
店主「それならば、瞳一つに値します...」
私「わかりました。当日にご用意いたします」
店主「それでは2日後...」
私「はい」
その後、店を出た。
ジャック「グレーテ…振り返ってごらん」
私「ん?」
私「あれ?さっきまであったお店がない。ただの壁だ...」
私 (まるでさっきの魔女は私たちが来るのを知っていたよう...)
ジャック「さっきの魔女はただ者じゃないね...」
私「うん...」
私「それよりジャック...さっき魔女に渡したクッキーって?」
ジャック「ん?あー。あれね...なんか勘で渡してみたらいけちゃったー。ハハハッ...ハー...」
私 ( この様子...やっぱりジャックは何かを隠している...)
私 ( ただ、それを追求しない方がよさそう。今はね...)
私「そーなんだ。ずるいよ。私に黙ってお菓子を隠し持ってるなんて...」
ジャック「ごめんね...」
ジャック「あっそうだ。行くついでに焼きマロップ食べてから行こうか」
私「いいの!?グルメは禁止って言ってなかったっけ?」
ジャック「あの時はああ言ってしまったけど、別にいいかなぁって思って...」
ジャック「ただ、また調子にのって爆食いするなよ」
ジャック「いっぱい食べたらねー。また、ふ…?」
私「あぁん?」
ジャック「いや、何にもない」
私「だよねー」
ジャック「あと、今度はまた1人で冒険しないように一緒に買うからね」
私「うん!」
私「あとコカトリスの串焼きも食べたい!」
ジャック「はいはい...」
屋台の方へ向かった。
店主「はい。お待ちーお嬢ちゃん。焼きマロップだよ」
私「ありがとうございます」
私「これが念願のマロップッ!」
私「やっぱりカワイイ!」
私「いただきまーす」
私「うーんっ!なにー。このシャキシャキとフワフワの食感は!」
私「ハチミツとの相性もサイコー」
私「うーんっ!幸せっ」
ジャック「本当キミって美味しそうに食べるね」
私「串焼きもサイコー!」
私「ご馳走様!」
ジャック「満足したかい?」
私「うん!」
ジャック「じゃあ、行こうか!」
私「うん!」
?「あっ!お姉ちゃん」
私「あっミリアちゃん!」
私 ( やっぱり、カワイイこの子...)
ミリア「今日はシスターと一緒にお買い物に来たの...」
シスター「こんにちは。先日はこの子が大変お世話になったそうで...」
私「いいえ。私はミリアちゃんと沢山お話ができてとても楽しかったですので...」
シスター「そうですか」
ミリア「お姉ちゃんどこかに行っちゃうの?」
私「うん。二日だけね」
私「また戻ってくるよ」
ミリア「そうなんだ。よかった〜! じゃあまた会えるねっ」
私「うん!」
ミリア「これお姉ちゃんに...」
ミリアちゃんからペンダントを受け取った。
私「これ良いの?作ってくれたの?」
ミリア「うん。シスターも手伝ってくれたの」
私「ありがとう!ミリアちゃんだーい好き」
ミリア「私もだーい好き」
ミリアちゃんとハグをした。
私 ( なんて天使なの...もうこのまま時間が)
ジャック「時間が止まってもいい。なぁーんて、考えているじゃないかいよね?時間はないんだよ」
私 ( クソジャックめっ!現実に引き戻しやがって!)
ミリア「じゃあね」
私「うん」
ミリアちゃんに手を振って見送った。
ジャック「じゃあ、行こうか!」
私「うん...」
ジャック「何だい...またムスッとして...」
私「別に...」
ジャック「『別に…』ねぇ…」
私「さっさと行くよっ!」
ジャック「はいよ...女の子って難しいなぁ...」
エレメンタルを目指して歩き始めた。