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忘却のグレーテ  作者: だい
第一章
29/116

ジャックの迷い

————その夜————


バーバラさんがみんなにお詫びを込めて手料理を振る舞ってくれた。


私「わぁ。やーぱりバーバラさんのご飯は美味しかったぁ」

葵「朱音…もう今日は早く寝ろよ。疲れたろ」

私「うん...」

私「今日は久しぶりにお兄ちゃんと沢山話せて嬉しかった」

葵「俺もだ…朱音とまたこうして話せる日がまた来るなんて思いもしなかった...」

葵「朱音...これから色々と大変だろうけど兄妹二人で頑張っていこう…な」

私「うん…」


葵「じゃあな...また明日...」

私「また、明日ね...」

ジャック「じゃあねー」

葵「って...ちょっと待ったー!」

私「なぁに?」

葵「なぁにって...」


葵「ジャックとは別々の部屋で寝るんだよね?」

私「ん?一緒だけど...これまでずっとそうだったし...」

私「二つもお部屋借りたら倍お金かかるんだよ」

私「お金はやっぱり、大切だから」


葵「いや、ダメだっ!」

葵「朱音の問題じゃないからっ!」


私「んー。大丈夫だって〜」

私「ジャックはこうだけど案外変な人じゃないよ」

ジャック「そうだよ。お兄様...」


葵「今の発言でで完全に信用を失ったんだけど....」

葵「ダメだっ!朱音...俺の部屋で寝なさいっ!」


私「本当に大丈夫だって〜」

私「はい。もうおやすみっ!」

葵「ちょっとまっ...」


「バタンッ」


葵「ジャックっ!朱音になんかしたら絶対に許さないからなぁ〜っ!」

ジャック「はーい。お兄様〜」


葵「お兄様って言うなっ!」

ジャック「はーい。お兄様」


葵「おい〜っ!」


私「もー大丈夫だって! 本当に心配性だなぁ…お兄ちゃんは…」

私「おやすみ。私の大好きなたった一人のお兄ちゃんっ!」

葵「...うん... おやすみ朱音...なんかあったらすぐこっちに来いよ...」

私「うん!」


「バタンッ」


葵が自分の部屋に戻って行った。


ジャック「本当キミの兄貴ってシスコンだねー」

私「本当にそう。でも、それだけ私のことを大切に思ってくれているってことだから」


ジャック「まぁ、そうだね」

私「私もお兄ちゃんが大好きっ!」


私「私、ジャックのことも好きよ」

ジャック「本当かい...」

私「うんっ!」


私「ジャック...」

ジャック「ん?...なんだい?」


私「別に応えなくてもいいんだけど...」

ジャック「ん?なんだい?もう今となっては何でも応えてやるよ」


私「正直…」

私「バーバラさん...いや、...メーディアさんのことどう思ってる?」

ジャック「正直...」

ジャック「まだ、復讐心はきえていないね…」

ジャック「キミさえいなければ、今でも隙あればって思ってる...」

ジャック「...」

ジャック「僕きっと、一生彼女を許せないよ…」

ジャック「もう…グレーテルは帰って来ないのだから…」


私「...」


私「そうだよね…」

私「そっか…」

ジャック「あぁ…」


私「…」

私「ねぇ…さっきのキミさえいなければって?」

ジャック「フフッ...」

ジャック「こんなこと言うの恥ずかしいけど...」

ジャック「キミには嫌われたくないんだ...」


私「え...」


ジャック「グレーテは…彼女のこと好きなんだろう?」

私「うん...」


私「バーバラさんがお母さんとお父さんを殺したことは許せない...」

私「でも、バーバラさんは好き...」


ジャック「そう言うと思った...」

ジャック「だから、僕は彼女を殺せない...」


ジャック「こんなはずじゃなかったのになぁ...」

ジャック「何度もグレーテルの墓の前で仇をうってやるって思っていた...」

ジャック「仇をうったら、僕もそっちへ行くからねって…」

ジャック「ずっと願っていた…」


私「そんな…」



ジャック「でも、今日、彼女の話を聞いて自分と同じだと知った」

ジャック「どちらも復讐心に取り憑かれた醜い化け物なんだって…」


私「でも、ジャックなんで?」

私「私を利用したらジャックの妹さんは生き返ったかもよ」

ジャック「そうだね...」

ジャック「なんでだろうね...」

ジャック「そんなことで妹は喜ばないって、あの時は言ったけれど...」


ジャック「それを妹に言わなければいい話だ...」

ジャック「でも、僕はその選択をしなかった...」


ジャック「なんでだろう…」

ジャック「ハハッ…」


ジャック「でもね…」

ジャック「キミが自らの身を差し出した時、僕の胸はとても痛くなった...」

ジャック「僕はまた…」

ジャック「また、救えないのかって…思ったんだ…」


ジャック「そして、キミがみんなの為に自らを犠牲にしようとした時、僕は苛立った...」


ジャック「自分が動けるようになって、魔女を鍋に入れた時、最初に思ったんだ...」


ジャック「キミを救えてよかったって...」

ジャック「あれだけ憎い相手が鍋の中でもがいているのにさ...」

ジャック「キミが無事であることに…」

ジャック「僕は安堵したんだ…」


ジャック「僕は…僕は本当にダメな兄だ...」

ジャック「ごめんよ。グレーテル…」

ジャック「こんなんだから、ダメなんだよね…」



ジャックの目が虚ろに見えた。


私「ダメじゃない」

私「ダメじゃないよ…」

私「素敵な…お兄ちゃん」

私「ジャックはとっても優しくて素敵なお兄ちゃんだよ」

私「私、会ったことないけど、妹さんもきっとそう思ってると思う」

私「あなたはダメじゃない…」

私「とても…とーっても優しいんだから…」


ジャックをそっと抱きしめた。


ジャック「グレーテ...」

ジャック「…」

ジャック「フッ…」

ジャック「グレーテ...ありがとう...」


ジャックは私の頭をそっと優しく撫でた。


ジャック「さぁ、もう寝る時間だよ...」

ジャック「砂時計を..」

ジャック「あっ…そっか...」

ジャック「もうこれはキミには必要…なんだよね...」

ジャック「なんだか寂しい...キミが僕から離れていくようで...」


私「大丈夫。私はここにいるじゃない」

ジャック「そうだね...」


ジャック「じゃあ、おやすみ」

ジャック「グレーテ…」

ジャック「良い夢を…」

私「…うん」


私「ごめんっ!一つ気になっていることがあって寝れないの...」

ジャック「ん...」

ジャック「さっき食べたのにもうお腹すいたのかい?」

私「違うっ!流石に私もそんな大食いじゃないっ!」

ジャック「じゃあ?」

私「私、ずっと前から腹が立っているのっ!」

ジャック「え?! 僕に?」

私「ううん。違う…」

ジャック「じゃあ、だれに?」


私「今日、私に『バカっ』って言った羽虫にっ!」


ジャック「あぁ...シェイドだね」

ジャック「それはまぁ...お好きにどうぞ…」

私「うんっ!」


私「聞こえていた?シェイドっ!」

私「出て来い羽虫っ!」


・・・


私「コラー!無視するなーっ!」

私「早く出てこいっ!」

私「早く出てきたら軽傷で済ませてあげるっ!」


シェイド( やなこったー。 バーカ。バーカっ!へへっ…)

私 「ムキーっ!」

シェイド( この際だ好きに言ってやるっ!暴食女、暴力女、最近食べ過ぎじゃねーか?また太るぞっ!)

私 「なにこのぉーっ!ボケ羽虫っ!」


ジャック「あぁ...また中で色々とやっているんだね…」

ジャック「じゃあ、僕はお先に失礼するよ…」


シェイドとのやりとりはその日では収まらず、日をまたいだ。


私「シェイドーっ!」

私「お前っー!コラーっ!出て来いっ!」

私「もういい…どうにでもなれ!もうドッカンしてやるからなぁっ」


シェイド( ヘヘッ…血迷いやがった...)


ありったけの魔力をシェイドに込めた。


私( あれ…発動しない...)

シェイド( バーカッ…バーカッ…魔力暴走は既に対策済みなのさっ!)

私( あれれ…意識が...)

シェイド( おっとー。魔力切れかい?アーホッ)

シェイド( ボケェー)

私( くっそー!覚えてろよ!シェイドっ)

私( あぁ…)


こうして、シェイドとの夜間戦争は私の敗北に終わったのである...

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