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忘却のグレーテ  作者: だい
第一章
28/116

ジャックの選択

ジャック「さぁ。話はまとまった。メーディア…僕はアンタの要求をのんだ」

ジャック「グレーテ。キミには感謝する。妹を幸せにするよ」


私「絶対だよ…」

ジャック「…」


ジャック「あぁ…」


私( あれ…ジャック…怒ってる?)


ジャックは私と目を合わそうとしなかった。


ジャック「メーディア…もう僕を解放してくれてもいいんじゃないか?」

メーディア「そうだね…」


メーディアはジャックに向かって杖を横に振りかざした。


ジャック「フフッ…」


ジャックがゆっくりと立ち上がる。


ジャック「この…クソ魔女がぁぁー!」


ジャックは私とメーディアを引き離し、メーディアを鍋に突き落とした。


メーディア「ヒィエ~!」

ジャック「本当にバカだよアンタは…」

ジャック「いつまで過去に縛られている…」

ジャック「あんたの娘は死んだっ!」

ジャック「死んだんだよっ!」


メーディア「やめて、やめておくれぇー!」

メーディア「リディアは死んでない死んでない死んでないぃ〜…」

メーディア「現にリディアの体は綺麗に綺麗に残っている…」

メーディア「だから、死んでいない…」

メーディア「死んでないぃ…うぅ…」

メーディア「うぅぅ〜…うぅぅ〜…」


ジャック「そうやって逃げ続けるのかい…」

ジャック「愚かだよ。本当に…」

ジャック「今のアンタを娘が見たらどう思う」


メーディア「やめろーっ!やめてくれぇー!」


ジャック「やめないさっ!」


ジャック「他人の命で生きる…」

ジャック「なんてアンタの娘は喜ぶとでも思うのかいっ!」

ジャック「少なくとも僕の妹グレーテルは喜ばないね…」

ジャック「あんた。娘がグレーテに似ていると言ったな」

ジャック「じゃあ、あんたの娘も同じことを思うだろうよ」


ジャック「こんなことは望んでいないって…」

メーディア「うぅぅ〜…うぅぅ〜…」


私「バーバラさん…」


メーディア「…分かっていた…」

メーディア「私だって分かっていたさ…」

メーディア「リディアはこんなことを望んでいないって…」

メーディア「優しいリディアはこんなこと望む訳がない…」

メーディア「結局…結局は私の自己満足なのさ...」

メーディア「リディアのいない日々をのうのうと生き続ける私のね…」

メーディア「ただ…」

メーディア「ただ寂しかったんだ…」

メーディア「もう私には生き甲斐がない…」

メーディア「こうやって執着しなきゃ…」

メーディア「明日を迎えられないんだ…」


私「バーバラさん…」


メーディア「ごめん…朱音ちゃん…」

メーディア「ごめんなさい…」

メーディア「もう一度最後にそのお顔を見せておくれ…」


ジャック「図々しいにも程があるよっ!」


私「いいの。ジャック…」

ジャック「本当にキミって子はお人よしにもほどがあるよっ!」

私「ごめん…でも、今はお願い…」

ジャック「フンっ!」


メーディア「あなたの目…やっぱりリディアにそっくり…」

メーディア「本当に優しい目…」

メーディア「本当はこうなることを私は望んでいたのかもね...」


私「ねぇ。バーバラさん…」

私「何か勘違いしてない?」


メーディア「え…」


私「何…勝手に…」

私「何勝手に終わろうとしてるの…」

私「ふざけないでっ!」


私「まだ自分の罪を償っていないっ!」

私「そうでしょ!」


床に置いていたホウキを拾い、ホウキの先で鍋をひっくり返した。


ジャック「キミは」

ジャック「キミはいったい…」

ジャック「いったい何をしているんだっ!」


私「ジャックッ!氷と水を持って来てっ!」


ジャック「えっ」


私「もうっ!」

私「何ボーッとしてるの!早くしてっ!」


ジャック「わっ…わかったよ...」


氷と水でバーバラさんの体を冷やした。


私「バーバラさん…大丈夫」


ジャック「なんで…なんでだっ!」

ジャック「なんでメーディアを助けたっ!」

ジャック「僕はキミが本当に理解ができない…」

ジャック「理解できないよ…」


私「ごめん。ジャック…」

私「私、バーバラさんに生きてほしかったの…」


ジャック「はぁ?」


私「そうだよね。私、頭おかしいよね…」

私「でも、生きてほしいの…バーバラさんには…」


ジャック「ねぇ。それを命を投げ出そうとしていたキミが言うのかい…」


私「ヘヘッ…」

私「確かにそう…」


ジャック「本当…キミはよくわからないよ…」


私「そう…」


メーディア「ッゴホンッ」


私「よかった…バーバラさんまだ意識がある」


私「ロジャーさんの息子さんは?」


ジャック「診てみるよ」

ジャック「かろうじてまだ息をしてる…」


メーディア「その人のところまで…」

メーディア「その人のところまで私を運んで…」


私「なんで...まさかまだ…」


メーディア「違うよ...回復魔法をかけるの...」

メーディア「私の専門分野...」


私とジャックでメーディアを動かした。


メーディア「キュア」

ジャック「呼吸が安定してきた。大丈夫そうだ」

私「よかったー…」

私「これでみんな無事だね…」


ジャック「ところでさ…グレーテ…」

ジャック「今はキミのハンスに代わって代弁させてもらうよ」


私「え…」


「パチンッ!」


私はジャックに平手打ちされた。


ジャック「何がっ!何が幸せになってほしいだっ!」

ジャック「ふざけるなぁっ!」


ジャックの怒号が部屋全体に鳴り響いた。


ジャック「妹に先立たれることがどれだけ…どれだけ辛いことか…わかっているのかっ!」


ジャック「私を忘れろだって?!忘れられるわけないだろっ!」

ジャック「妹はキミしか...キミしかいないんだよ...」

ジャック「お願い…お願いだからもう二度と自分の命を投げ出すようなことはしないでおくれ...」


ジャック「頼む…」

ジャック「頼むから…」


私「…ジャック...」

私「ごめん…ごめんなさい…」


私「お兄ちゃん…ごめんなさい...」

私「...っう...っううぅ...」


ジャック「って、ハンスはきっと思っているはずだよ...」


私「…っううっ…ごめんなさい…」


ジャック「キミのお兄さんが目を覚ましたよ...」

ジャック「その言葉は直接言ってあげて…」

私「…うん...」


私「お兄ちゃん…ごめんなさい ...っう...くっ...」

私「本当にごめんなさい...っう...くっ...」


葵「朱音…」

葵「実はジャックが言ってくれているところを目を閉じながら聞いていた」

葵「僕が朱音に伝えたい言葉そのものだった…」

葵「朱音が無事で…無事で本当によかった...」

葵「いつまでも僕の妹でいてくれよ」

私「...っう...くっ...うん…」


葵「僕もあんたが父さんと母さんを殺したことは決して許せない…」

葵「でも、朱音が元気に生きてくれている。僕はそれだけでいい…」

葵「それだけでいいんだ…」

葵「ヘヘっ…」


メーディア「葵ごめんなさい。本当にごめんなさい...」

メーディア「許されることじゃないって、わかっている…」

メーディア「私は…私は…本当に…なんてことを...」


葵「メーディア…」

葵「あんたへの罰は朱音が言った通り、過去を背負いながらも最後まで生き続けることだ」


メーディア「あぁ。あぁ…わかったよ…」


葵「ジャック…頼みがある」

葵「ここで起こったことに関して、国王たちの記憶からすべて消してほしい」

葵「朱音の言う通り、もう復讐なんてこりごりだからね」

葵「お願いできる?」

ジャック「あぁ...」


こうして、事態は収まった。

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