表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘却のグレーテ  作者: だい
第一章
25/116

ヘンゼルとグレーテル

メーディアは安堵の表情を浮かべた。


メーディア「待っててね。リディア...」

メーディア「お母さん…これからアナタ生き返らせるから」

メーディア「もう一度、顔を見て『お母さん』って言っておくれ...」


私( 嘘…嘘…こんなの嘘だって思いたい…)


私( リディア…)

私( 何か…何か覚えが…)

私( 魔女メーディアがいた元家の石碑…)

私( かすれて読めなかったけれど『ィア』って、あれは『リディア』)


私( バーバラさんは本当に魔女メーディアなの…)


私( じゃあ、甦りの研究も…)

私( 信じたくはないけれど...辻褄は…合う…)


メーディア「待たせちゃったね」

メーディア「正直あんたらには何の恨みもないんだよ...」

メーディア「申し訳ないとすら思っている...」


メーディア「じゃあ、話の続きといこうか...」


メーディア「リディアの死後、どうしても私は受け入れられなかった...」

メーディア「いつも側にいてくれたリディアがいない日々は生きている気がしなかった...」


メーディア「いつも私より先に起きては、遅く起きてきた私に『おはようお母さん』って言ってくれる...」


メーディア「あの日以降それはなかった...」

メーディア「本当にもういないんだって... 身に染みて感じたよ...」

メーディア「それからは、ただ彼らへの憎しみを背負いながら泣く日々だった...」

メーディア「殺してやるっ…殺してやるって…」


メーディア「でも、私は諦めきれなかった...」

メーディア「なにか絶対に方法があると信じて...」

メーディア「そして、生き返らせる方法を調べることにしたの」


メーディア「リディアの体の腐敗が進まぬよう魔法をかけて保存した...」

メーディア「そして、ひたすら研究し続けた...」

メーディア「その時だけは、無我夢中になれたからリディアの死を悲しまずに済んだ...」


メーディア「でも、そんなものはなかった...」

メーディア「ただわかったことは、この世界は『ヘンゼルとグレーテル』という童話の中の世界であるということ…」

メーディア「そう。この世界は作られた世界だった...」

メーディア「でも、そんな事実…『なんの役にも立たない』…そう思っていた...」


メーディア「それでも私は諦めきれなかった…リディアが私の全てだったから...」

メーディア「私は何度もリディアの死をを追いかけようした」

メーディア「何度も…何度も…」

メーディア「でも、でもね」

メーディア「夢でリディアに言われたの…」

メーディア「お母さん…生きてって…」


メーディア「だから、だからできなかった...」

メーディア「リディアが伝えたいことが私の夢に出るならば…」

メーディア「それはリディアが望むことだから…」



メーディア「そんな日々を送っているある日、こんな話を耳にしたんだ

...」

メーディア「隣国が滅び、国王は亡命したが命を落とし、奇跡的にその子どもたちは助かったと…」


メーディア「そしてその子たちは、それぞれ異なる特別な能力を授かっているとね…」


メーディア「一人は『記憶改変』」

メーディア「そして、もう一人が『時空間移動』だった…」


メーディア「アンタの持っている砂計...」

メーディア「ヘンゼル...アンタの記憶を書き換える能力で作ったんだろう…」


メーディア「この子たちは使えると思ったのさ」

メーディア「神様が私に授けてくれた恵みだと思った」


メーディア「この世界では『能力』は継承される」

メーディア「継承の方法は二つ…」

メーディア「能力を持つ者が赤子を産む」

メーディア「もう一つが保有者を喰らうこと」


メーディア「あの子らを喰えば私に移り、この物語を作った世界で、人々の記憶を書き換えれば、リディアの死がなかったことにできる」


メーディア「私はそう思った」


メーディア「仮の親はあんたら兄妹をよく思っていなかったそうだね。特に仮の母親の方は」

メーディア「可哀想に…」


メーディア「まぁそうだろう。実の子ではないのだから」

メーディア「仮の父親の方は国王に対しての忠誠心が強かったからかよく気にかけていたそうだけれど」


メーディア「でも、それは国王が生きていたらの話。国王亡き今はただの厄介者でしかない」

メーディア「だから、よく森で置いてきぼりにされた」

メーディア「でもその度に帰って来た」

メーディア「道まいた小石を目印にして」

メーディア「そうだろ?ヘンゼル」


メーディア「それでもアンタは妹グレーテルのために酷い仕打ちを受けても耐えた」

メーディア「耐え続けたんだろ…」

メーディア「流石、一国の王子だね」


メーディア「そこに私は目をつけた」

メーディア「二人を誘き寄せるため、お菓子の家を作った」

メーディア「ただし、この世界が作られた世界であると知っている私は、私が最後、鍋に放り込まれるという展開になることを研究の結果から分かっていた」

メーディア「どんなに足掻こうとも物語の強制力にはさからえないことも…」


メーディア「だから私は手を打ったのさ。複製魔術でこの子たちをはめようと」


メーディア「私は幻惑の魔法をかけた」

メーディア「ヘンゼル。アンタには妹が魔女に見えるようにね」

メーディア「アンタら兄妹はまんまと私の罠に引っかかった」

メーディア「ヘンゼルあんたには魔女が鍋で茹でられるように見えていたんだろうね。自分の妹であるとも知らずに...」


メーディア「私も心苦しかった。本当に申し訳ないと思ったよ」

メーディア「一線を超えてしまったと思った」


メーディア「でも、でもね…」

メーディア「私も必死だった」

メーディア「手段を選んではいられなかったんだよ...」


メーディア「ヘンゼル…あんたは私の複製体と帰り、父親に温かく迎えられ、母親は毒を飲んで死ぬといったこの物語の焦点があたったシナリオを終わらせてくれた」


メーディア「これが『ヘンゼルとグレーテル』の童話の真実…」


メーディア「翌日、妹が部屋にいなかったから、アナタはまた私のところに来た」

メーディア「あなたは驚いてたわね。私が生きていたから...」

メーディア「そして気付いた。鍋に入れられたのは実は妹だったって…」


メーディア「その後、私はあんたにこんな話を持ちかけた」

メーディア「覚えているかい?」


メーディア「アンタがこのスープを飲めば、妹を生き返らせられるって…」

メーディア「アンタを騙そうとしている訳じゃなかった」

メーディア「すまないことをしたって思っていたから…」

メーディア「真に生き返らせるつもりだったんだよっ!」


メーディア「でも、ヘンゼル…アンタは私を信じようとしなかった...」


メーディア「アンタは怯えて逃げようとした」

メーディア「私はこの機会を逃すと次はないと思い、アンタの首を鍋に突っ込み、グレーテルのスープを無理やり飲ませた」


私 ( …虹色パスタを食べて時の味…あれってもしかして…)


メーディア「でも、アンタは「復讐してやる」という言葉を残して、引き継いだ能力を使ってどこかへ行ってしまった...」

メーディア「争った後に私の血がついたクッキーを握りしめてね…」

メーディア「でも、そうよね...」

メーディア「騙した魔女の言葉なんて信じないわよね...」


メーディア「手下を使ってアンタを探したけれど、結局、見つからなかった...」

メーディア「まるでこの世界から消えたように...」

メーディア「本当にあっちの世界で雲隠れしていたとは思わなかった...」


メーディア「それで私は別の手を考えた。そして思いついた」

メーディア「私もグレーテルのスープを飲んだ」

メーディア「グレーテルの能力で異世界に移動し、悲劇の「ヘンゼルとグレーテル事件」を起こそうって考えた」

メーディア「そうすれば、あちらの世界の物語に対する認識を一新できると思った…」


メーディア「でも、そんな考えは甘かった…」

メーディア「結果的には、何も…何も変わらなかったの…」


メーディア「そうだ…」

メーディア「ごめんね...朱音ちゃん。あなたには『忘却の呪い』をかけたままだった...」

メーディア「今、解いてあげるわ…」


葵「やめろー!」

メーディア「もう解いちゃった...」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ