魔女メーディアの足取り
扉を開けると奥まで続く赤い絨毯が敷かれており、その先には玉座に座っている男性がいた。
国王ルーク「おお!ようやく来たか」
国王ルーク「さぁ、我の元へ」
ジャック「行くよ」
私「うん!」
メイド「王の御膳ですので、お側まで行かれましたらそれなりのご対応をお願いいたします」
ジャック「あぁ」
私 「…」
私とジャックは王様の前まで歩いた。
国王ルーク「立ったままでは苦しかろうに...楽にせよ」
私はどうすれば良いのかわからなかったのでその場で正座をした。
ジャックは片膝をついてそこに右腕を添えた。
ジャック「グレーテっ!何しているんだ」
私「ん?何が?...」
ジャック「楽にせよっていうのは、僕のようにすることだよ」
私「あっ!そうなの!?...」
国王ルーク「ハッハッハッ」
国王ルーク「よいよい良いのだ」
国王ルーク「そちが楽であるならばそれで良い」
ジャック「寛大なお心遣い感謝致します」
国王ルーク「ハッハッハッ」
国王ルーク「それにしても、昨日は見事であったなぁ」
私「ありがとうございます!」
ジャック「グレーテ。言葉遣い...」
私「え!何っ!だってわかんないもん!」
国王ルーク「ハッハッハッ よいよい」
国王ルーク「普段通り話しておくれ。我もその方が話しやすい」
ジャック「お心遣い感謝致します」
私 ( へぇー。昨日はボロボロの服だったのに...今日は本当に王様って感じ...)
国王ルーク「服か...確かに昨日はボロボロだったな...ハッハッハッ」
私 (えっ!私の声聞こえてる!)
国王ルーク「あぁ…聞こえておるぞ」
ジャック「グレーテ...」
私「あー。本当にごめんなさいっ!」
私は何度も頭を下げた。
国王ルーク「ハッハッハッ…よいよい」
国王ルーク「昨日は観衆に紛れる必要があったのでな」
昨日のお礼を自分から伝えることにした。
私「昨日は私の願いを聞き入れてくださり、まっことに…誠?にありがとうございました」
国王ルーク「いや。礼を言うのは我の方こそだ」
私「え…」
国王ルーク「昨日も話したと思うが、昨今のコンテストは心から願う者が参加し辛い風潮になっておってな」
国王ルーク「そちのおかげで、そうした者達が今後望める良ききっかけとなったはずだ」
国王ルーク「また、そちのおかげで多くの民と心を通わせられたと思っておる」
国王ルーク「その結果として、昨日から魔女メーディアの情報が書かれた手紙が多く届いておるのだ」
国王ルーク「そちの昨日の頑張りは国を動かしたんだぞ」
国王ルーク「ありがとう」
私「いえいえっ!そんなっ とんでもございません!」
国王ルーク「ハッハッハッ」
国王ルーク「この国はコンテストの優勝者に全面協力する」
私「ありがとうございます!」
国王ルーク「ところでだが、届いた手紙の多くにはこう書かれていた」
国王ルーク「魔女メーディアは、確かに数年前、この国に亡国して来たそうだ」
国王ルーク「だが、今はアリエス王国周辺に戻ったと書かれている情報が多い」
私 ( もうこの国にはいないかもしれない…じゃあ、また戻るってこと...?)
メイド「ちょっと!勝手に入らないでくださいっ!」
一人の男性騎士のような人がメイドに止められながら無理やり入ってきた。
?「騎士アークと申します。王様お取り込み中のところ大変失礼致します」
国王ルーク「ん?見てわからんか。今は重要な客人がいるのだ...」
アーク「魔女メーディアについての新たな情報です」
国王ルーク「ん? 申してみよ」
アーク「はい。アリエス王国内における魔女メーディアが元々住んでいた居住場所がわかりました」
国王ルーク「なんと!」
国王ルーク「もっと詳しく聞きたい。側に来てくれ」
アーク「はっ」
アーク「今朝より魔女メーディアに関しまして聞き込みを行っておりました」
アーク「ある人物より情報提供がございまして、その者は数年前アリエス王国内における小さな村に住んでおり、そこに魔女メーディアが住んでいたと」
アーク「こちらがその場所にございます」
アークは地図を広げた。
私「私の為に朝から聞き込みをしてくれたんですね...本当にありがとうございます!」
アーク「いえいえ、私もあなたに心を動かされた一人です」
アーク「お役に立てられたのであれば嬉しい限りですよ」
アーク「昨日のあなたは本当に女神のようだった」
アーク「私にも十二歳下の妹がおりましてね。お転婆で本当に危なっかしい子で」
アーク「あなたのお兄さんもきっとあなたのことをご心配されているのではないかと思います」
アーク「会えるといいですね。いや、あなたならきっと会えますよ」
アーク「諦めなければきっと…」
私「ありがとうございます...」
私「...っっ」
アーク「あっ…何か私...失礼なことをっ」
ジャック「...いや嬉しいんだよね。グレーテ...」
私「...うん」
アークさんに感謝の意を込めてお辞儀した。
アーク「そうでしたか...」
アーク「現在の居場所ではありませんが、その住居を調べることで何かしらの足取りが掴めるかと」
ジャック「ありがとう。これから向かってみるよ」
アーク「えぇ」
国王ルーク「次の行き先は決まったようだな」
国王ルーク「だが、残された時間も短いと聞いた」
国王ルーク「よって、我が召喚するレッドドラゴンに乗って向かうとすぐに着くであろう」
アーク「王様。大変名案かと思われますがそれでは、目立ちすぎるかと...」
国王ルーク「...そちの言う通り確かにそうかもしれぬなぁ...」
国王ルーク「それではグリフォンではどうだ」
アーク「それであれば問題ないかと思われます」
国王ルーク「うん」
国王ルーク「それでは、時間もないことであるし早速テラスへ」
私たちは王様に付いて行き、テラスへ向かった。
国王ルーク「それでは、召喚を行う」
国王ルークは杖を振りかざして詠唱を行った。
国王ルーク「ウィンズラーティマ」
テラスの床に緑の魔法陣が浮かび上がり、そこからグリフォンが姿を現した。
国王ルーク「久方ぶりであるな。グリフォンよ」
ルークがグリフォンの頭を撫で、グリフォンが嬉しそうに目を瞑る。
国王ルーク「グリフォンよ。この者たちをこの場所まで頼むぞ」
国王ルークが地図をグリフォンに見せる。
グリフォン「グゥワァーッ!」
国王ルーク「さぁ。乗ると良い。」
「グゥーッ!」
国王ルーク「ん?」
私のお腹が音を響かせた。
私 ( あー。なんでこんな時に...)
私 ( 恥ずかしい...)
国王ルーク「ハッハッハッー。腹が減っているのだな」
国王ルーク「何でも良い。この者に軽食を持たせてやっておくれ」
可愛いメイドさんから軽食を受け取った。
私 ( このメイドさんっ!カワイイっ!)
ジャック「グレーテ…顔」
私「違う。わかってるよっ!」
私「ありがとうございます!」
国王ルーク「準備は済んだな。グリフィンが目的地まで飛んでくれるから心配ない」
ジャック「さぁ。グリフィンの背中にまたがるんだ」
私「こう?」
ジャック「ううん。羽の下に座るんだよ」
私「こう?」
ジャック「そう」
ジャックも私の後ろにまたがった。
国王ルーク「それでは!旅立つが良い!」
グリフォンが大きな羽をバサバサと広げる。
私 ( すごい風圧!)
私 「王様大変お世話になりました!」
国王ルーク「あぁ。行っておいで」
国王ルーク「我は其方に今後も全面協力する!」
私「ねぇ。ジャック…」
私「あのー。流れの勢いで忘れてたけど...今から空飛ぶんだよね...」
私「高いところ...」
ジャック「うん。そうだね」
グリフォンがテラスの柵に足をかけた。
私 「え?!待って...」
私の脳が危険を察知した。
国王ルーク「あっ言うの忘れてた。グリフィンはドラゴンに比べてかなり揺れるぞっ!」
国王ルーク「あと、最初は急降下しないといけないし...なんか見てるだけで怖い...」
国王「我は怖いから乗ったことはない」
私「聞いてないって...!」
私「王様ー!もっと早く言ってよー!」
国王ルーク「すまん。だからドラゴンを提案したんだが...」
私「アークさんっ!」
私はアークを睨みつけた。
アーク「ハッハ... 頑張ってねー...」
アーク「まぁ、小さくて可愛いじゃないか」
アーク「ハッハー…」
アークさんは目を合わせようとしなかった。
私 ( こいつ見捨てやがった...)
私( 最後の頼みの綱!カワイイメイドさん!)
私( ねぇ。お願い助けてっ!)
可愛いメイドさんに止めてもらえるよう私は必死で目で訴えかけた。
メイドさんは「さっさと行けっ!」言わんばかりに笑顔で手を振っていた。
私 ( オワター...今となっては全然、全然!可愛いくない!)
私「待って...心の...」
ジャック「落ちるよっ!」
私「ダメー!」
グリフィンが柵から身を乗り出して急降下する。
私「プギャャーーーーーーッ!」
グリフィンは地上ギリギリで羽を広げて上昇した。
私「王様のっっっ王様のぉーーバカーッ!」
私の声が辺り一面に響き渡った。
また、心の中でしめしめと笑うシェイドであった。