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忘却のグレーテ  作者: だい
第一章
14/114

虹色パスタ

私「ケガも治ったところだし、今からどうしよっか」


念の為コンパスを確認した。

私「やっぱり反応なし...か...」


ジャック「グレーテ見てみな」

私「ん?」

ジャックが見ている方に目を向けた。


街の人が今夜の誕生祭に向けて飾り付けを行っていた。


私「あっ今日は誕生祭って言ってたね」


私「せっかくだけれど、今は遊んでいる場合じゃない...」

私「残念だけど...」


ジャック「そうだね...」


?「はいはーい。今日は国王様主催の『願い事コンテスト』だよー」


緑のハット帽子を被った男性がビラを配りながら宣伝していた。


?「願い事をみんなの前で発表して、見事グランプリに選ばれたら国民総出でその願い事を叶えちゃうっていう企画ー」


?「はい。お嬢さんもっ!誰でも参加可能だからね」

私「ありがとうございます」


私「ジャック…これに応募してみない」

ジャック「うーん?どんな願いを?」

ジャック「美味しい物をたらふく食いたいって?」


私「うん!そう!美味しいお肉やお菓子をいっぱい!って!」

私「違うわいっ!」


私「私たちの旅の目的ってなに?」

ジャック「あぁ。なるほど。いい案だ」

私「でしょっ!」


ジャック「日没後の大広場でって書いてある」

ジャック「日が沈む頃ってかなりいい加減だね」


私「まぁ、でもそれまで時間があるし、宿探しとご飯にしよっか」

ジャック「そうだね。最後のご飯って確かあのお粥だったし」

私「そう。お腹ペコペコー」


私「ありがたいことにこの国では魔力がお金の代わりになるって」

私「だから、いくらでも食べられる…」


私「とりあえず、宿に荷物を…」

私「うーんと…この近くは...」


地図で宿屋を探した。


私「あった!」

私たちは近くの宿屋に向かった。


私「ここだっ!」

宿屋はレンガ調の小さな建物だった。


ジャック「こんなところでいいのかい?」

私「うんっ!」

私「小ぢんまりしてるけど、私はバーバラさんの宿みたいでこうゆうところがいいの…」

ジャック「ふーん…」


部屋を借り荷物を置いて外へ出た。


私「さぁて、お楽しみのごはんの時間ですー」

ジャック「フフッ…キミらしい」


私「この辺に食べもの屋さんが沢山...」


地図を頼りにグルメ探しに向かった。


私「うーん。いい匂いっ!香ばしいスープの匂いがする」

私「何?」

?「さぁさぁ、よっておいで美味しいシャオニューだよー」


私「あー。ラーメンみたいな食べ物かっ!」


?「さぁさぁ。虫料理はいかが?幼虫饅頭はプリっとしていて絶品だよ」


私「うわぁー絶対ムリー」


私「あっちは?」

?「さぁさぁ。よっておいで。ロシアンキノコ鍋はどうだい」

?「食べたキノコによっては笑いが止まらなくなったりするかも...食べてからのお楽しみ」


私「そんな食べ物もっ」

私「でも、私はゆっくり美味しいのが食べたいなぁ...」


私「あっちは?」

私「何あれ!?」

?「さぁさぁよっておいで、虹色パスタだよ。その名の通り七変化する不思議なお味」

?「この国でしか食べられない名物だよー。食べるたびに味が変わるとっておきっ!」


私「えっ!あれがいい!」

ジャック「ふーん…面白そうだね。行ってみるか」


店はカウンター席になっていた。


店員「へいっ。いらっしゃいっ」

店員「当店メニューは一品のみ。なぜなら、その一品で色々な味を楽しめるからねー」

店員「お客さん虹色パスタ二つでいいかい?」

私「はい」

店員「虹色パスタ二ついただきました」

店員「じゃあ、手を少し出して」


店員は私の手のひらに水晶玉を置いた。

水晶玉は一瞬で紫色に変わった。


店員「おっと…」


店員はすぐさま私の手の平から水晶玉を持ち上げた。

店員「あっぶねー。割れるところだった」

私「ごめんなさい」

店員「お嬢ちゃん。相当な魔力をもっているんだね」

店員「これはちともらいすぎだ」

店員「返すにも返せねぇし…」

店員「どうしようか…」

私「いいんです」

店員「そっそうかい。じゃあ、大盛りにしておくよ」

店員「それでも、もらいすぎだけど」

私「ありがとうございます!」

店員「あいよっ!」


店員は厨房の方へ向かった。


厨房を覗き込んだ。


私「え?すごいっ!」

私「茹で上がったパスタに人が手から魔法のようなものをかけていた」


店員「へぃ。お待ちっ!」

虹色に輝いたパスタが乗った皿が目の前に運ばれた。


私「これが虹色パスタっ!」

私「キレイ!キラキラしている」

パスタにはキラキラしたモヤのようなものがかかっていた。


店員「このパスタは、食べた人が過去に味わった思い出の味を再現してくれるんだ」

店員「だから、人によっては美味しくなく感じることもある…」

店員「息を吹きかけるたびに味が変わるように出来ている」


私「へぇー。すごくら面白い!」

店員「だろぅ?」

店員「さぁ、召し上がれ」


私「じゃあ、いっただっきまーす!」

私「何の味かな?」

私「あっバーバラさんのトマトグラタンの味。美味しいっ!」


ジャック「じゃあ、私も」

ジャック「あっスフィアで食べた。コカトリス串の味がするよ」

私「えっいいなぁ!」


私「じゃあ、次は?」

私「フゥーっ」

私は息を吹きかけ、パスタを口にいれた。


私「・・・」


私の目からポタポタと涙が流れた。


ジャック「グレーテ…大丈夫かい?」

ジャック「キミ涙が...」


私( あれ…私なんで泣いているの...)

私( でも、この味、知っている...)

私( 素朴だけれど、温かい味…)

私( 何かはわからないけど...きっと私の大切な人が作ってくれた味...)


私( でも、思い出せない...)

私( 記憶はないけれど…覚えているんだ大切な人のこと…)


私「うん…大丈夫…」

私「大丈夫だから…」

私「これ、私の大切な人が作ってくれた味…」


私「だから、この味で最後まで」

ジャック「そっか…それは最後まで食べた方がいい」

私「…うん…」


ジャック「じゃあ、次は?」

ジャック「フゥー」


ジャックが息を吹きかけパスタを口に入れた。


ジャック「オオオェェェーーー!」

ジャックが吐き出した。


私「大丈夫?ジャック!」

ジャック「オオオェェェーーー!」


あのジャックが何かを思い出したかのように身震いしながら怯えているようだった。


店員「アンタ大丈夫かい?!」

ジャック「みっみっ水を!」

店員「はいよ!」


ジャックが水を口に含み、吐き出した。


店員「アンタ大丈夫かい?相当ハズレの味を引いてしまったようだね...」


ジャックの背中をさすった。


ジャック「すまない。せっかく作ってくれたのに...」

ジャック「昔変なスープを飲んでしまってね。それ以降その味がトラウマなんだ...」

店員「あぁ。問題ないよ」


私「ジャック。一旦宿に戻ろう」

ジャック「ううん。大丈夫。待ってるからゆっくり食べな」

ジャック「大切な人の味なんだろう?」

私「いいの?」

ジャック「うん」


虹色パスタを味わった後、ジャックの背中をさすりながら宿に戻った。


私「ジャック…本当に大丈夫?」

ジャック「うん...」


ジャック「すまないが、お祭りまで少し横にならせてもらうよ」


私「うん。私も歩き疲れたし少し休もうかな…」


願い事コンテストまで少し休むことにした。

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