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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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不思議の国のアリス②涙の池

扉を開けた先には屋根が高く広いホールがあり、ホール全体にはプールのように水がたっぷりと溜まっていた。


私「やっぱりね…」

私( 多分この水、アリスの涙…)


私( 本当におかしいお話…)

私( アリスはこの後、動物たちと徒競走をして体を乾かしてたっけ?…)


私( でも、それは私が知っているお話…)

私( 他と同じように知っている通りにはいかないはず…)

私( だって、この世界も白紙になったのだから…)


開けた扉の向かい側にはまたドアがあり、窓からは日の光が差し込んでいた。


私( なんとか向こうまで行かないと…)

私( でも、どうやって…)


向かい側まではかなりの距離があった。


私( 泳ぐ...?)

私( いや、そもそも私、泳げないし…)

私( えー...どうしよう…)


辺りを見渡した。

しかし、これといって何も見つからなかった。


私「仕方がないよね...」


下に降りて、水に浸かりながらも壁伝いにして向かった。


水を含んだハンカチは、今の自分にはとても重く感じた。


私( 今頃、アリスはどこにいるんだろう…)

私( お茶会かな...もうハートの女王と会っていたりして…)

私( もし、会っていたらまずいよ…)

私( ぺぺも無事だといいけど…)


そんなこんな考えているうちにあと少しのところまで来た。


私( 後少し…後少しだ)


向かい側のドア下までたどり着いた。


水を含んだハンカチは重く、自分の力ではドアのところまで上がることができなかった。


私「そっかー...」


ハンカチを脱ぎ捨てて上った。


ドアノブに手をかけて奥に力を入れた。


私「 あれ...」

私「 開かない...」

私「 あー。内側に引くタイプねー...」


内側にドアノブを引いた。


しかし、ドアは開かなかった。


私「えっ!」

私「嘘でしょー!」


よく見るとドアには鍵穴があった。


私「せっかくここまで来たのに、そりゃあ、アリスも泣くわー...」


私「私も泣きたい...」

私「素っ裸でビチョビチョで立たされるなんて...」


私「えー...どうしよう...」


私( でも、アリスはどうやってここを...)

私( お話では…)


私「 えー...どうだっけー...」


しばらく、自分が知っているお話の記憶を思い出そうとした。


私( ...鍵?...)

私( 鍵...鍵...)

私( あー。なんかあったような...)


私「 テーブルだっ!」


上を見上げると、横にあったものがテーブルであることに気がついた。


私( あの上にきっと鍵が…)

私( アリスはどうにか大きくなったはず…)

私( たぶん、何かを口にして…)


周囲をくまなく探した。


すると、赤、青、緑のジュースの小瓶が水にプカプカと浮かんでいた。


私「これかー」

私「えー…でもどれがー…」


ジュースにはラベルが貼られており、それぞれ果実のようなイラストが描かれていた。


赤色のラベルには真っ赤なリンゴようなイラスト、青色のラベルには真っ青なバナナのイラスト、緑色のラベルには粒々とした真緑色のコーンのようなイラストが貼られていた。


私( この中のどれか一つが背が高くなるもの…)

私( そして、低くなるものが含まれているはず…)


私「じゃあ、もう一つは?」

私「毒…だったりして…」


私( そうだ…考えたことなかった…)

私( この世界で私が死んだらどうなるんだろう…)


私( もう元の世界には帰れないのかな…)

私( じゃあ、私の望みは…)


嫌な選択が頭をよぎった。


そう。今までいくつも危ない目に遭ってきたが、こちらの世界で死んだ時どうなるかを考えたことはなかった。


唾をゴクッと飲んだ。


私「そんなの考えたってわからないよー…」

私「だって、絵しか描いてないしー…」

私「見たことない果物だしー…」


私「きっと、三分の一が多分ヤバいやつ…」

私「えー…でもどれー…」

私「死にたくないよー…」


私「でも、どれか飲まないとこれ以上先には行けない…」

私「こんなところで諦める訳にはいかない…」

私「時間もない…」


私( 真っ青なバナナの瓶は絶対ヤバそう…)

私( でも、見た目じゃあ分からないか…)

私( なんか変な見た目しているフルーツの方が意外と美味しかったりするし…)

私( ドラゴンフルーツとか見た目すごいよね…)

私( いやいや、この際、美味しいなんて関係ないよ…)


私「何考えてんのー!」


私「うーん…」

私「もうっ!分からんっ!」


三つの瓶を手に取ってドアの枠部分に置いた。

そして、目を瞑り場所を入れ替えた。


そう。分からない時は神頼み


私「えぇーいっ!」

私「神様お願いしますっ!」


一つの瓶を手に取って、目を開けた。

手に取った瓶は青色だった。


私「えー…よりによって、これー…」

私「えー…」


全然乗る気じゃあなかった…


私「変えようかな…」

私「いや、もういいやっ!」


瓶の蓋を開け、恐る恐る鼻を近づけて匂いを嗅いだ。


瓶の中からは甘いシロップのような香りがした。


私「うーん…思っていたより、大丈夫?」


瓶を傾けて液体を少し手に出した。


私「慎重すぎるかな?」

私「いや、飲んだら苦しむかもしれないんだよっ!」

私「そりゃあ、慎重になるでしょ!」


液体真っ青で、思っていたよりサラサラとしていた。


私「えー…大丈夫?これ…」

私「えー…」


私「もー…分からないー!」

私「これでダメだったら、神様なんて絶対信じるかー!」


意を決して、手に持った瓶の口を含みゴクッと飲んだ。


そうすると、喉奥で少しピリッとした感じがした。


私「あっ…終わった?」


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