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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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不思議の国のアリス①白うさぎを追いかけて

有栖川「篠崎さん…いってらっしゃい…」

有栖川「アリスによろしくね…」


絵本の上に足を乗せて、身を委ねた。


有栖川「さぁ、ぺぺ…あなたも…」

有栖川「なぁに…そんな顔をして…」


有栖川「あなたがいなければ物語は始まらない…」

有栖川「そうでしょ?」


有栖川「私は大丈夫だから…ねっ!」

有栖川「あの子の力になってあげて…」

有栖川「お願いよー…」

有栖川「あの子にはまだ未来があるの…」

有栖川「私が成し遂げられなかったことを彼女ならばできるかもしれない…」

有栖川「わかってくれるわよね?」


白うさぎのぺぺはそっと頷いた。


有栖川「さぁ、お行き…」


ぺぺは心配そうに有栖川さんの顔を見つめながら、絵本に体を乗せようとした。


有栖川「頼んだわよ。ぺぺ…」

有栖川「あの子が無事で帰って来られるように…」

有栖川「困っていたら、助けてあげてね…」

有栖川「いってらっしゃい…」

有栖川「私の親友…」


私は気がつくと川辺にいた。


頭上には絵本の形をした穴があった。


私「ここに戻って来ないとね…」


上を見上げていると何かが落ちてきた。


私「うぁーーっ!」


私は何かとぶつかり、尻餅をついた。


私「痛てて…」


上から落ちてきたものはぺぺだった。


私「あーっ!ぺぺっ!」

私「あなたどうしてっ?」


ぺぺ「僕は物語の力で全てを忘れてしまう…」

ぺぺ「時間がない…急がないとっ!」

ぺぺ「必ず僕についてくるんだっ!」


私「あなた話せるのっ?!」


ぺぺは時計を見ながら、慌てて走り出した。


私「どこ行くのっ!ちょっと待ってよっ!」


四肢を使って走るぺぺの速度は早く、必死で彼を追いかけた。


すると、川辺の奥の木陰で本を読んでいる金色のブロンド髪の少女がいた。


ぺぺはその少女の前を横切った。


その少女もぺぺの事が気になったのか追いかけた。


私(あの子はきっと、アリスだっ)

私(絶対そうだっ!)


ぺぺは大きな切り株の穴に入って行った。


ブロンド髪の少女もその中を覗き、少し躊躇する様子だったが、中に入って行った。


私もようやく辿り着き、大きな切り株の中の穴を覗いた。


中は暗く、底なしと思われるほどの広い空間が広がっていた。


私「…二人は…ここを…」


私(怖いけど…ダメだっ!)

私(躊躇している場合じゃあないっ!)


思い切って穴へと飛び込んだ。


すると、ゆっくりと…私の身体は下へと落ちて行った。


下の小さな穴から日の光が差し込んでいた。


私「底だっ」


ゆっくりと地面に足をつけた。


すると、「ボーっ!」っと中央にあったキャンドルに火が灯った。


キャンドルの横には木のテーブルがあり、テーブルの上には小さなお皿…


そして、そのお皿の上には食べかけのカップケーキがあった。


日の光が差し込んだ場所にはネズミが通ることができるほどの小さなドアがあった。


私「きっと、アリスはこのケーキを食べて…」

私「急がないと…」


ひとくち食べた瞬間、視点は急に沈みこみ、部屋そのものが巨大化したかのように見えた。


腕も脚も縮んでいくのに、ドレスだけは変わらず大きなまま…


やがてその布地は、まるで幕のように彼女を覆い隠し、小さな体は衣服に埋もれてしまった。



私「最悪…」



なんとか衣服から抜け出し、ポケットに入っていたハンカチを引っ張り出して体に巻いた。



そのまま小さな扉まで歩き、取手に手をかけた。


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