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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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お迎え

リディア「さぁ、先に登って」

リディア「こんな体だから、マンホールを開けられないの」

リディア「下からライトを照らしておくから」

私「はい」


錆びついた鉄はしごを一段ずつ這い上がった。


すると、頭上にぼんやりと丸い光が見えた。


片手で力一杯押し上げた。


しかし、マンホールの蓋はびくともしない。

私「なんで開かないの…」


私「リディアさーんっ!」

私「マンホールー…開かないですー」


リディア「えっ…そんな…」

リディア「もしかしたら、外からナットか何かで閉められているのかも…」


私「えー…」


私は諦めて降りようとした。


突然外から大きな音が…


「ウィーン…ガガガッ…ガガガッ」


私( 何っ!)


すると、マンホールが開き、目の奥まで突き刺すような光が降り注いだ。


眩しさに思わず目を細めた。


私( うっ…眩しい…)


?「あらっ…やっぱり」

?「篠崎さん…」


誰かに話しかけられた。形も色も、輪郭すら見えない。


しばらくして、指の隙間から差し込む光が、ただの光に戻っていく。


そこには、上から覗き込む有栖川さんの姿が…


私「有栖川さんっ!」


有栖川「久しぶりね」

有栖川「さぁ、彼女を引き上げてちょうだい」


黒いサングラスをかけた男の人が私の体を引き上げてくれた。


黒服の男性がマンホールを元の位置に戻そうとした。


私「待ってっ」

私「リディアさーん」


マンホールの穴に向かって声をかけた。


リディア「今登っているわー」


覗くと、すぐ下にリディアさんが見えた。


私は手を伸ばしてリディアさんを引き上げた。


リディア「よいしょっ!」

リディア「本当に体が小さいから思うようにはいかないわね…」


有栖川「こちらは?」


私「あっ何て言えば…」


有栖川「もしかして…絵本の住人さん?」


私「あっ!はい」

私( 物分かりが早くて助かる…)


リディア「初めまして…リディアです」


有栖川「初めまして。有栖川です」


リディア「グレーテ…あなた早く行った方がいいわ」

リディア「直ぐに追手がくる…」


私「はい…」

私「リディアさん…」

私「本当にありがとうございました」

リディア「いいえ。それは私のセリフよ」

リディア「あなたに恩返しができてよかった..」

リディア「あなた会えて本当によかった…」


リディア「また、あっちの世界で母に会ったら伝えて…」

リディア「会えないけれど…私はずっとずっと…」

リディア「…愛しているよ…」

リディア「って…」

リディア「お母さんが生きる選択をしてくれてとても嬉しかった…」

リディア「って…」


私「伝えますっ!」

私「私、必ず伝えますから!


リディア「…ありがとう…」

リディア「じゃあ、元気でね…」


私「はいっ!」

私「リディアさんも」

リディア「えぇ…」


リディア「叶えてみせて…あなたの奪われた未来を…あなたの望む未来を…」

リディア「必ず…」


私は頷き、飛行機に乗り込んだ。


窓から手を振った。


飛行機が動き出す。


私( リディアさん…新しい人生でもお幸せに…)


飛行機が離陸し、地上から段々と離れていく。


有栖川「おかえり…」

有栖川「長旅だったわね…」

有栖川「それに大変な目に…」


私「はい…」

私「でも、今回のおかげで私の覚悟は固まりました…」


私「めげちゃいけないって…」

私「もう何が起こっても怖くはない…」


私「目的はただ一つ…望みを叶えること」

私「私の望みはみんなの望み…」


私「叶うかどうかじゃない…」

私「叶うと信じて動く…」


私「それが、私にできることだから」


有栖川「そう…」

有栖川「意思が固まったのね…」

有栖川「うん」


有栖川「私があなたにしてあげられることは、あまりないかもしれないけれど…」

有栖川「最後まで、最後まであなたをサポートするわ」


私「ありがとうございます」

有栖川「えぇ…」


有栖川「今からあなたにお願いがあるの…」


私「え…何ですか?」


有栖川「ぺぺ…砂時計を…」


白うさぎのぺぺが心配そうに砂時計を彼女に渡した。


有栖川さんは砂時計を見つめた。

砂時計は青く光る…そして…


私「えっ…なんで…」


砂が少しずつ下段へ落ち始めた。


有栖川「やっぱりね…」


そう。砂が落ち始めるということは死が迫っているということ…


私「有栖…川…さん…」


有栖川「そう。私のお願いは私の命が尽きる前に…」

有栖川「この絵本の中であなたの目的を果たすこと…」


有栖川「頼めるかしら…」


有栖川「もう…時間がないの…」

有栖川「お願い…私のアリスに会いに行って…」


私「有栖川さん…」

私「そんな…」

私「こんな…こんなにも…」

私「こんなにも…お別れが早いなんて…」


有栖川「そう…そうよね…」

有栖川「私も自分自身驚いているし…」

有栖川「あまり実感はない…」

有栖川「でも、この砂時計は真実なのよね…」


有栖川「私はこの目で見たかった…あなたが叶えるまで…」

有栖川「最後まで見届けたかった…」

有栖川「でも、先にお迎えが来てしまったようなの…」


有栖川「篠崎さん…頼めるかしら…」

有栖川「最後のお願いを…」


私「…」


私「はい…」

私「…引き受けます…」


有栖川さんから砂時計と絵本を受け取った。


私「叶えます…」

私「叶えてみせますよ…」


私「…望みも…」

私「…世界の彩りも…」


青い表紙の絵本を開き、床に砂時計を叩きつけた。


床に散らばった砂をすくい、白紙のページにさらした。


すると、絵本から青い閃光が放たれた。


私「…行ってきます…」


絵本の上に足を乗せて、私は身を委ねた。


有栖川「いってらっしゃい…」

有栖川「アリスに…よろしくね…」


不思議の国のアリス編、始まり始まり〜

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