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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
112/116

廃トンネル

リディアさんに連れられて空港へと向かった。


リディア「こっちよ」


裏路地を抜けて、薄暗い細い道に出た。


向かい側にはフェンスで囲われた雑木林があった。


リディア「私に続いてここから入って」


私「はい」


フェンスの格子が一部千切れており、子ども一人が通れるぐらいだった。


リディアさんはすんなりと…私はギリギリだった。


リディア「付いて来て…」


私( 本当にこの道で合っているの…)


私「わぁぁ!虫ーっ!」


木々を掻き分けながら奥へと進んだ。


すると、トンネルのようなものが見えた。


リディア「何でこんなところ来るのって思った?」

私「はい…」


リディア「まぁ、そう思うよね」

リディア「ここはね。昔、空港を作る時に使われていた運搬用の通路だったみたいなの…」

リディア「ここから入って、マンホールから出ると滑走路に繋がっているわ」


私「そうなんですかっ!」

リディア「えぇ…」


私「ちょっと、待ってて」


リディアさんはトンネル横の小屋に入った。


リディアさんが何かを持ちながら出てきた。


リディア「これ付けて」


リディアさんから手渡されたのはガスマスクだった。

リディア「あくまで、昔に使われていた通路…」

リディア「念の為、危険なガスが出ているかもしれないから…」


私「ありがとうございます…」

私( ここまで用意周到に…)


真っ暗なトンネルの中をライトを照らしながら奥へと進んだ。


何かが床を蠢いた。


私「キャーーーーー!」


リディア「ん?何」

リディア「ただのネズミね」


私「あっ…ネズミか…ネズミ…」

私「虫じゃない…」


リディア「虫…怖いの?」

私「虫は…はい…」


リディア「ふーん…」

リディア「虫なんかよりも、私は人の方がよっぽど怖いと思う…」


リディア「憎み、憎まれ、そしてまた憎む」

リディア「私は人があまり好きじゃない…」


私( 怖い…の種類が違うけれど…まぁ、言っていることは分かる…)


私「そうですね…」

私「私も…そう思います…」

私「でも、それもこれもすべて過程に過ぎない…」

私「私はそう思うんです」


私「もちろん、私の両親、そしてお兄ちゃんはもう帰ってこないかもしれない…」

私「取り返しのつかない結果…」


私「そんなことは…時間が解決してくれる…とかよく言われていますが…」


私「経験した当人は…そんなことはない…」

私「傷はずっと癒えない…」

私「今までこうして生きている以上はね」


私「そうやって、今も私は葛藤していますけど…」

私「それもこれも全て、長い目で見ると過程なんだろうなって…」

私「未来の私はきっと、そう納得する…」

私「そう思うんです…」


リディア「…」

リディア「そう…」


私「すみません。私でしゃばり過ぎました」

私「あちゃー…」


リディア「いいえ。そうじゃないわ」

リディア「あなたって…意外と大人なのね…」


リディア「私はあなたみたいに上手く言葉では言い表せないけれど…」

リディア「ただの単純にすごいなって思った…」

リディア「そりゃあ、私のお母さんも感化されるわけだ…」


私「いえ、そんな…私はー」

私「あー。恥ずかしいっ」

私「私なんて、クソガキですから、今聞いたこと全て忘れてくださいっ」


リディア「フフッ…」

リディア「そんなことない…」

リディア「あなたは自分が思っている以上に大人よ」

リディア「それに、もう遅い」

リディア「私の耳にあなたの言葉が焼きついてしまった」


リディア「過程ね…」

リディア「人が嫌いって、思っていること自体も過程なのかな…」

リディア「うん..とても勉強になったわ…」


リディア「フフッ」

リディア「あなたってとても面白いわね」

リディア「もっと沢山話したいところだけど、そんなこんな話しているうちに着いてしまった…」

リディア「ここを上がれば滑走路に出る」


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