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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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覚悟

固定電話を借りて、有栖川さんに電話をかけた。


私「もしもし。私です。篠崎です」

私「朝早くにすみません...」


有栖川「いえいえ。大丈夫よ」

有栖川「年をとると朝が早くなるものよ」


私「それで、私これからどうしたらいいでしょうか」

私「すみません。わからなくて...」


有栖川「そりゃそうよね」

有栖川「大丈夫。ちゃんと考えているわ...」


有栖川「今日のお昼五時に空港まで来てくれるかしら...」

私「えっ...」

有栖川「フフッ...大丈夫」

有栖川「知り合いにプライベートを手配するよう伝えたから...」

有栖川「私も向かうわ」


有栖川「でも、空港に翔太さんには送ってもらわない方がいいわ」

有栖川「検問しているかもしれないからね」


私「私もそう思います」


私( こんなに良くしてくれている人達に迷惑はかけられない...)


私「頑張ります...」


有栖川「決めたのね」


私「はい」

私「私は最後まで自分らしく」


有栖川「そう。それでこそあなたよ」


私( そう。私は決めた…今は辛い...でも、叶えて)

私(叶えてすべてを取り戻すんだ!全部!全部!)


有栖川「じゃあ、空港でね」


私「はい!」


通話を切り、陽葵さんに電話をかけた。


私「陽葵さん。篠崎です」

陽葵「あっ...篠崎さん?」


陽葵「無事着いたの?」

私「はい。すみません。昨日電話できなくて…」


陽葵「いいのよ」


私「あの...」

私「二人は?」


陽葵「ごめん...」

陽葵「ごめんね。二人は今病院で入院していてね...」

陽葵「実は…まだ二人とも意識が戻っていないの...」


私「...」


陽葵「...大丈夫?」


私( 私が二人にしてあげられること...)

私( それは私たちの願いを叶えること...)

私( もう。めげるわけにはいかない…)


陽葵「本当に大丈夫?」


私「陽葵さん...」


陽葵「ん?」


私「二人を頼みますっ!」

私「二人の意識が戻ったら伝えてほしいです」


私「必ず叶えるからって...」

私「未来は明るいからって...」


陽葵「...うん。わかった」

陽葵「必ず伝える...」

陽葵「伝えるよ」


私「ありがとうございます」


陽葵「これからも大変だろうけど頑張るんだよ」

陽葵「あっ...頑張ってって言ったら、あなたのお兄さんに怒られそうだね...」

陽葵「みんなっアンタの味方だからね」


私「はい!ありがとうございます!」


陽葵「また、何かあったら連絡してね」


私「はい!」


私「それじゃあ。お元気で」

陽葵「うん。元気でね」


通話が切れた。


その後、準備を終えて、出発の時間になった。


おばあさん「もう行くの?」


私「はい」


おばあさん「そう。ごめんね。大した力になってあげられなくて...」


私「何をいっているんですか。感謝の言葉しかないですよ」


おばあさん「本当にいい子だねぇ。朱音ちゃんは」


私「いい子じゃないですよ...」

私「本当に...」


おばあさん「またまたぁ」


私( 本当に私は...いい子なんかじゃないんだよ...)


おばあさん「翔太。駅まで送ってやりな」


翔太「おうよ」

私「いいえ。大丈夫です」


おばあさん「なんで。ここからだと駅まで遠いよ」


私「すみません。何にもなければ送っていただきたいんですけど...」

私「以前、警察の検問で捕まりそうになって...」

私「もう。捕まるわけにはいかなくて...」


私「だから、リスクは勿論ありますけど、バスでいきます」


おばあさん「そうだったんだね。ごめんね」


私「いいえ、謝らないで下さい」


私はリュックサックを背負って戸を開けた。


私「本当にありがとうございました」

私「ずっと、追われている状況で心休まることはなかったんですけれど...」

私「ここに来て、心が少し落ち着きました」

私「お二人のおかげです」


私「翔太さん...」

私「おばあちゃん...」


私「ありがとうございました!」


そう言って頭を下げた。


翔太「うん。元気でな」

翔太「あっ...そうだ。俺の携帯持って行きな」

翔太「自分の起動したら居場所がばれるだろ?」

翔太「それに、有栖川のおばさまに連絡もとらねぇといけねぇだろ?」


私「大変助かります」

私「必ず返しに来ますから」


翔太「あぁ。またな」


おばあさん「また、落ち着いたらおいで」

おばあさん「いつでも待っているからね...」


私「はい!」


見送られながら、舟屋を出た。


私(さぁ、頑張れ..)

私「頑張れ...私」

私「再出発!」



バス停まで暫く歩いた。


バレないように眼鏡をかけて、マスクをしながらジャンパーのフードを被っていた。


バスが停止し、後ろの扉が開いた。


私( お願いだから誰も気づかないで...)



後部座席に座り込み、バスが発進した。


見渡すと、バスの張り紙部分には自分の指名手配書があちらこちらに


私( 自分の懸賞金...一千万円か...)

私(そりゃあ、みんな探すよね...)


バスの中で、この後のルートを確認した。


私( 八駅目で降りて、商店街を抜けてからそこから歩きかな...)

私(タクシーだと危ないよね...)


そうこう考えているうちにバスは八駅目に停止した。


私は他の乗客さんの間をすり抜けて、硬貨を入れた。


バスを降りようとした時に、運転手に声をかけられた。


運転手「ねぇ。お客さん...」

運転手「払いすぎているよ」


私はバレてしまったと思い込み、緊張のあまりバスを降りた。


運転手「ねぇ。ちょっと...」


バスを降りてそこから全力で走った。


バスが見えなくなった角を曲がった所で息を整えた。


私( しくじった。逆に怪しまれてしまったかも...)

私( でも、もう仕方がない...)


私( そう。ここだ。この商店街を抜けて暫く歩くと空港に着く...)


翔太さんのスマホで時刻を確認すると十六時二十四分だった。


夕日が沈むこの時間帯は、買い物客が袋を片手にうろうろしていた。


気が緩んだ私は、マスクと眼鏡を外してハンカチで汗を拭いた。


すると、母親と手を繋いだ五歳ぐらいの男の子が私を見て指さした。


男の子「あっ...テレビの人だ」


私「まずい...バレた...」


一気に私は周囲の注目の的になった。


慌てて眼鏡とマスクをして駆け出した。


みんなこちらを向いて携帯を耳にあてだした。


私( まずい...本当にまずいよ...)


その時、黒髪の少女が私の前に立ちはだかった。


黒髪の少女「私に付いてきて」


逃げることに必至だったため、少女の横を通り過ぎようとした。


黒髪の少女「グレーテ...こっち」

黒髪の少女「グレーテ...こっちよ」


私はその言葉に足を止め、少女を追いかけた。


私(なんで、なんであの子がその名を...)











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