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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
109/116

独り

翔太「今から三時間ぐらいかかるから、ここで休んでな」


私「はい...」


私は運転室の椅子に腰かけた。


ガラスの窓からは月明りが差し込んだ。


私( 綺麗な満月...)

私( あっちに着いたら、どうしよう...)


スマホを開き、これからのことをメモすることにした。


---------------メモ----------------


1.港に着いたら有栖川さんと陽葵さんに連絡


2.


------------------------------------


私( それからは、まだ分からない...)


画面を閉じて、壁を枕代わりに目を瞑った。


そこから一時間ぐらいが経った。)

翔太「なぁ。腹減ってねぇか?」


目を開けると、翔太さんの左手には大きな魚が


私「えっ...」

私「はい。とってもお腹空いています」


翔太「へへっ...そうか」

翔太「じゃあ、今からブリ丼作るからよっ!」


私「えっ...いいんですか!?」


翔太「おうよ。ちょっと待ってな」


そう言って、翔太さんはどこかへ向かった。


私(やったー。海鮮が食べられるなんて...)



私( そうだ。カノンさんもっと私に話しかけてくれてもいいのに...)

私「ねぇ。カノンさん聞こえていますか?」


カノン「あぁ。聞こえている」


私「もっと私に話しかけてもらっていいんですよ」

私「私...もう...独りになっちゃったんです」


私「これから先どうなるのか分からない...」


カノン「すまない。実はもうあまり話せないのだ...」

私「えっ...」


カノン「この世界は魔素がほとんどない...」

カノン「もう私の中にそれほど多くは残ってなくてね...」

カノン「こうして話し続けると底を尽きる...」


カノン「それは彼女たち二人もだ」

カノン「この前、ネムという女が熱を出したことがあるであろう」

カノン「あれも魔力の底が近い証...」


私「えっ...」

私「じゃあ、魔力がなくなるとどうなるの?!」


カノン「そのものは死ぬ...」

カノン「それは彼女たち自身もわかっていることだと思う...」


私「どうして...どうして...なんでもっと早くに教えてくれなかったの?!」


カノン「すまない。それは彼女たちに口止めからだ」

カノン「心配をかけるから言うなと...」


私「そんな...」

私「じゃあ、二人は...」


私「なんで...なんで...」

私「みんな嘘つき。本当にみんなして...」


カノン「すまない...」


カノン「それもこれもすべて、みんなキミを希望だと思っているからだ...」

カノン「すまない...私も時間のようだ...」


カノン「例え息絶えようとも...皆そなたの傍におる...」

カノン「そなたは独りではないのだよ...」


リュックにかけられたボールチェーンが千切れ、剣の形をしたカノンさんが床に落ちた。


私「みんな...みんな...」

私「なんで私に本当のことを言ってくれないの...」


私「っっうっ...っっ...」


私は床に落ちた剣のキーホルダーを胸に抱きしめた。


翔太「あらよー。っと...」


丼ぶりを片手に持った翔太さんがやってきた。


翔太「...あー。すまん。取り込み中だったか...」

翔太「あとで、また声かけてくれや」


私「...もう大丈夫です」


翔太「本当に?」


私「大丈夫です」


翔太「そうかい...」


翔太さんは丼ぶりをテーブルの上に置いた。


翔太「じゃあ、ゆっくり食べな...」


私は涙を拭きながら『コクンっ』と、うなづいた。


丼ぶりに手をつけた。


私( 美味しいよ。とっても美味しいよ...)

私( だけどさ...)

私(...辛いよ...)



『コンコン』


目を覚ますと翔太さんが戸のガラスをノックしていた。


翔太「着いたぜ」


私は知らない間に寝ていたようだった。


私は剣のキーホルダーをリュックにしまい込み、外に出た。


外はとても暗く、空には無数の星々が輝きを放っていた。



翔太「付いてきな。今からばあちゃんの所に行くから」


お太さんに続いて船を降り、彼に付いて行った。


暫く歩くと一軒の舟屋に明かりが灯っていた。


翔太「あそこがばぁちゃん家だ」

翔太「大丈夫。もう既に話は通してある」


舟屋に着き、翔太さんがガラっと戸を開けた。


翔太「ばぁちゃーん」

翔太「帰ったぞー」


おばあさん「おい!翔太っ!何時だと思ってんだいっ!」


翔太「ごめんごめん...」


おばあさん「本当にアンタって子は...」

おばあさん「三十五にもなって、ぷらぷらしてー!」


翔太「ハハー。元気だねぇ...」

おばあさん「アンタまた私をからかってんのかいっ!?」


翔太「こうなったらもうダメだ...」


私はおばあちゃんと目が合った。


おばあさん「あらー」


翔太「そう。話してた子だ...」


私「こんばんは」


おばあさん「あら、可愛い子だねぇ」

おばあさん「まさかアンタ。この子に変なことしていないだろうね!?」


翔太「してねーよ!」

翔太「ひっでぇーなぁー...」


おばあさん「さぁ、お上がり...」


この日おばあさんにはとってもよくしてもらった。


ずっと張り詰めていた緊張の糸が少し切れたような気がした。



----- 翌日 -----


私「おはようございます...」


翔太「ちょっ...」


私は翔太さんに止められた。


玄関でおばあさんが誰かと話している声が聞こえた。


?「この顔の指名手配犯をもし見かけられましたら、交番までご連絡ください」

?「まぁ、北海道にいるみたいですので、関係ないと思うのですが...」

?「まぁ、これも仕事でして...」


おばあさん「そうですか。わかりましたよ」

おばあさん「見かけましたら、必ず...」


おばあさん「それでは...」


おばあさんはそう言って、そっと戸を閉めた。


翔太「行ったようだな...」


おばあさん「もう大丈夫だよ」


翔太「もうここまで...」


おばあさん「本当に可哀想にねぇ...」


翔太「一旦、有栖川のおばさまに連絡だな」


私「はい」

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