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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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オズの魔法使い⑭船出

港に車で向かっていた。


陽葵「チッ…」

陽葵「あっちこっちで検問をしているよ」

陽葵「まずいね。四方八方を別の車で塞がれた」

陽葵「脇道に出られそうにない…」

陽葵「このまま、検問を抜けるしか…」


警察官が窓をノックした。


警察官「すみません」

警察官「指名手配がこの辺で逃亡しておりまして、車内を確認させていただいてもよろしいでしょうか」


陽葵「いや、ちょっと」


警察官「何か?」


陽葵「プライベートなものが色々あって…」


警察官「ご協力お願いいたします」


陽葵「…」


警察官「じゃあ、後ろ失礼しますね」



事前に私は後ろのトランクの中に移っていた。



警察官「それじゃあ、後ろのトランクも」


陽葵「えっ…」

陽葵「別にトランクまでは…」


警察官「何か困るものでも?」

陽葵「いや、そういう訳ではないんですけど」


警察官「失礼しますね」


警察官が後ろのトランクを開けた。


警察官「…」


警察官「ん?」


警察官が私の上に載っている荷物をどかした。


警察官「…」










警察官「異常なし…」


警察官は荷物を元の場所へ戻した。


警察官「ご協力ありがとうございました」


陽葵「えっ…あっ…はい…」


検問を抜けることができた。


私( なんで…)

私( 私確実に見られたと思うんだけれど…)


しばらくすると車が停止した。


トランクが開いた。


陽葵「出てきていいよ」


私はトランクから出た。


そこは、地下の駐車場だった。


陽葵「はい」


私は陽葵さんからいちごミルクと菓子パンを手渡された。


陽葵「いや、それにしてもヒヤヒヤしたねー」

陽葵「てっきり、バレたかと思ったよ」


陽葵「なんで見つからなかったんだろう…」


私「それは、私も不思議で…」


?「朱音どの」


私「この声…」

私「カノンさんっ!」


私「まさか。さっきのって…」


カノン「あぁ…」


カノン「朱音どの上に私が付いたリュックサックがあったのだ」

カノン「彼が私に触れた瞬間、幻惑の魔法をかけた」


私「そういうことだったんですね!」

私「ありがとうございます」

私「とっても助かりました」


カノン「いやいや、礼を言われるほどではないよ」


陽葵「剣のキーホルダーが喋っている」


陽葵「もしかして」


私「はい。私の世界の…勇者様です」


カノン「元…だがな」


陽葵「えぇ!」


陽葵「いや、あんたナイスだね〜」

陽葵「私も『ここまでか』って覚悟したよ」


カノン「なぁに、大したことではない…」



陽葵「ここから港までだいたい一時間ぐらいだね」

陽葵「函館に向かっているんだ」


私「函館…」

私「海鮮の…」


陽葵「あんた余裕だね。心配して損したよ」

陽葵「こんな時に食べ物の話って」


カノン「いつものことだ」

私「もー。カノンさんっ!」


陽葵「ッハッハッ」


陽葵「でも、よかった」

陽葵「最初はどうしようかと思ったよ」


私「フッ…」

私「なんだか。またいつもの自分に戻れた気がします!」


陽葵「よかった…」


陽葵「もう夕方の五時だね…」

陽葵「着いたら六時半ぐらいかな」


陽葵「そろそろ行こうか」

陽葵「また、狭いけど我慢してね」


私「はい」


私は再びトランクに入った。


陽葵「じゃあ、出発するよ」


車が走り出した。


私は眠気に誘われた。



陽葵「着いた」

陽葵「着いたよ」


陽葵「ん?」


陽葵さんは私の背中をトントンっと叩いた。


私「あっ…」

私「えっ…もう。着いたんですか?」


陽葵「フフッ。よくこんなところで寝られるよ」

陽葵「ッハッハッー」


私「はぁは…」


陽葵「出ておいて」


トランクから出ると外はすっかり暗くなり、周囲には月の光に照らされた漁船が並んでいた。


陽葵「いよいよだね」

陽葵「着いてきて」


陽葵さんの後に続いた。


ガタイの大きいサングラスをかけた男の人が立っていた。


陽葵「こんばんは」

サングラスの男性「こんばんは」


陽葵「翔太さん…で合っています?」

翔太「はい」

陽葵「よかった」


陽葵「昔、おばさまのお知り合いなんですよね」

翔太「はい。有栖川さんにはそれはそれは頭があげられないほどにお世話になりました」


翔太「こんばんは。キミが篠崎さんだね」

私「はい…こんばんは…」


私は少しこわばってしまった。


翔太「あぁ…ごめんね」


私( 悪いとじゃなさそう…)


翔太「よろしく」

私「よろしくお願いします…」


陽葵「私はここまでかな…」


私「そうですよね…」

陽葵「ご家族が心配されているでしょうし…」

陽葵「うん。ごめんね」


私「いいえ。本当にありがとうございました」


陽葵「ここから青森県の港まで送ってくれるらしいよ」


陽葵「頑張りなっ!あんたならきっと叶えられる」

陽葵「あんたが描く未来をね」


陽葵さんはそう言って私の頭を「ポンポンっ」と叩いた。


私「はいっ!」


翔太「じゃあ、乗りなっ!」

私「はい」


私は翔太さんに続いて船に乗った。



船は岸から離れた。


陽葵「頑張りなよー」

陽葵「二人のことは私が面倒を見るから心配しないでねー」


陽葵さんはそういって手を大きく振った。


私「どうか。よろしくお願いします!」


私も陽葵に大きく手を振った。


段々と手を振る陽葵さんの姿が小さくなっていく…



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