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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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オズの魔法使い⑬本音

二人を残し、陽葵さんの車の後部座席に乗り入み、その場を離れた。


私( メアリさん…)

私( ネムさん…)


私( どうしてこんなことに…)


陽葵「きっと、あの魔女だろうね」


陽葵「私は東の魔女についてはよく知らない…」

陽葵「私の知っている彼女はドロシーの家に踏み潰されていたから」

陽葵「でも、そう考えるのが筋だと思う」


陽葵「本当、人をおもちゃのように…」


私「どうして…」

私「どうしてっ!私が…」

私「お父さんとお母さんを…」


私「…っうっうっ…」


陽葵「可哀想に…」

陽葵「あんまりだよ…」



陽葵「しゃがんで!」


言われた通り下にしゃがみ込んだ。


陽葵「警察が巡回している…」


窓からパトカーが通り過ぎていくのが見えた。


陽葵「行った…みたいだね…」

陽葵「一旦、人通りの少ないところに止めるから、悪いけどちょっとそのままにしてて…」


車が停止した。


陽葵「出てきていいよ」


私「これすべて現実…なんですよね…」

私「なんだか…よくわからなくて…」


私「怖くて…ただ怖くて…」

私「メアリさんも、私のせいであんなことになって…」


私「私…私…」

私「…っうっう…」


陽葵「アンタのせいじゃないよ…」


陽葵さんはそっと私の頭を撫でてくれた。


私「もう…嫌…」

私「こんな自分が嫌…」

私「もう全部が嫌なの…」


私「もういっそのこと…」


その時、私のカバンの中が突然、青く光り出した。


私「っ…」


カバンの中を確認し、光っているものを取り出した。


それは、お兄ちゃんの『クローバーのお守り』だった。


クローバーの葉は既に色褪せ、散り散りに…

それでも、お守りは優しい光を放っていた。


私「お兄ちゃん…」

私「お兄ちゃんなの…」


私「まだ、私に頑張れって?」


私「それはもう無理…」


私「私頑張ったんだよ…精一杯頑張ったんだから…」


私「でも、もう怖いの…辛いの…」

私「もう嫌なの…」


私「私はこれ以上、他の人に迷惑をかけたくない…」

私「それに、もう私が耐えられないの…」

私「…辛いの…」


私「っうっっ…」


青い光は私の言葉に応えるかのごとく、点滅を繰り返した。


私「っ…」


しかし、その光は次第に弱くなり、最後の力を振り絞るように何度も何度も点滅を繰り返した。


やがて、光は命が消えたかのようにゆっくりと…


私「…お兄ちゃん…」



陽葵「お兄さんにとってあなたは大切な存在なのね…」

陽葵「さっきの光がそう感じさせてくれた…」


陽葵「さっきの光はさ…」

陽葵「なんだか、ただ『諦めないで』とかじゃない…」


陽葵「なんて言ったらいいのかな…」

陽葵「自分は何もしてあげられない。だけど、助けてあげたい…悲しまないで…」


陽葵「ずっと側にいるから…一人じゃないからねって…伝えたいけれど伝えられない…なんだか…そんなもどかしい思いを伝えようとしているように思えたな…」


私「…っ…っう…」


私「お兄ちゃん…」


私「…っうっ…う…」



「トゥルル…」


陽葵「あっ…おばさまからだ」

陽葵「あっご無沙汰しています。空野です」

陽葵「えぇ。そうなんです…」


陽葵「はい。わかりました。彼女に代わりますね…」

陽葵「有栖川のおばさまより」


陽葵さんから携帯を手渡された。


私「っううっ…篠崎です…」

有栖川「篠崎さん。大丈夫?」

私「っううっ…」

有栖川「大丈夫じゃないようね…」


有栖川「まさか、あんなことになるとはね…」

有栖川「…」


有栖川「あなたにどうしてもこれだけは伝えたいと思って電話をかけたの…」


有栖川「それはね。あなたがどんな選択肢を取ろうとも最後の最後まで、あなたのお友達も、あなたのご家族も、そして私たちもあなたの味方だということ…」


有栖川「だから、そんなに思い詰めないでね」

有栖川「責任を感じる必要はないのよ」


有栖川「みんな必ず理解してくれるから…大丈夫」

有栖川「『これ以上、みんなに迷惑をかけられない』なんて思っているかもしれないけれど…」

有栖川「『あなたが本当にどうしたいのか』それが一番大切」

有栖川「正しさよりも清くあれ」


有栖川「私が伝えたかったのはこれだけ」

有栖川「ごめんね。こんな時に」

有栖川「でも、こんな時だから…かな…」

有栖川「ゆっくり考えて…」

有栖川「私にできることならなんでも」

有栖川「じゃあね…」


私「…」

私「あの…」


私「っううっ…」

私「お願いです…」

私「助けて下さい…っううっ…」


私「私…っううっ…私、やっぱり諦められない…」

私「私の大切なみんなと…っううっ…」

私「また、いつか…絶対…幸せに…」


私「っううっ…」


有栖川「わかった」

有栖川「わかったわ…」


有栖川「大丈夫。大丈夫だから…」

有栖川「安心して…ね…」


有栖川「あとは私がなんとかするわ」


有栖川「空野さんに代わってくれる?」


私は陽葵さんに携帯を渡した。


陽葵「ええ。あそこね」

陽葵「わかったわ。おばさま」

陽葵「じゃあ、またあとで電話するわ」


そう言って陽葵さんは通話を切った。


陽葵「アンタは強いね」

陽葵「私は最後までサポートするって決めたからね」


陽葵「これから、おばさまの知人の船乗りに会いに行く」

陽葵「とにかく、ここから出ないと」


こうして、私たちは約束の港へ向かった。

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