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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
105/114

オズの魔法使い⑪ドロシー

雨は止み、とうもろこし畑を抜けようとしていた。


私(ぎくしゃくしていて、誰も話そうとしない…)

私(ここは私が)


私「雨…止んだねっ」


ヘイリー「うん…」

レオン「そうだね…」

サイファー「…」


私(続かない…)

私(仕方ない…)


私(何か…何かないかな…)


私(あっそうだ。サイファーの娘さんを奪った魔女がローズさんと同じ傘を持っていた…)


私( つまりは…)


私(まさかね…同じような傘をなんていくらでもあると思う…)


私(それにしても、ヘイリーにあんな本性があったとは…)

私(でも、おかげで助かった…)

私(それにレオンも私を助けてくれた)

私(勇気がない?そんなことないよ)

私(弱いんじゃない。あなたは優しいの)

私(いざ、守りたい人がいる時にあなたは勇気を振り絞れるのね)


私( ステキ)

私(あとで、直接伝えてあげよう)


とうもろこし畑を出て向日葵畑に入った。



サイファー「マリ…」


私「ん?」


サイファー「…すまなかった…」

サイファー「伝えようとずっと思っていたけれど、遅くなってしまった」


私「あぁ。いいのいいの」

私「私は気にしてないよ」


サイファー「多分、私の勘違いだ」

サイファー「ヘイリー、レオン、すまなかった…」


ヘイリー「あぁ…」

レオン「大丈夫だよ」


サイファー「はぁ。危うくキミを傷つけるところだった…)


私「ううん。大丈夫」

私「それにね。私思ったの」


私「あれだけ感情的になれるってことは…」

私「何度も言うけれど、あなたにココロがあるからよ」


私「娘さん。無事だといいね」


サイファー「あぁ。ありがとう」

サイファー「今の言葉で確信した」

サイファー「キミは魔女の類ではない」


私「えっ。ひっどーい!」

私「まだ疑ってたの?」


サイファー「いや、それは…」


私「フフッ…」

ヘイリー「ハハッ…」

レオン「ヘヘッ」


私「アッ…ハッハッハー」

ヘイリー「ハッハッハー」

レオン「ハッハッハー」


サイファー「なぜ笑う?」


私「いや、だってそりゃ笑っちゃうよ」

ヘイリー「あぁ。そうだね」


ヘイリー「だって、まだ疑ってたのかってね」


サイファー「そういうことか…」


ヘイリー「キミは疑い深いね」

ヘイリー「でも、それは時に大切な時がある」

ヘイリー「決して悪いことじゃない…」


ヘイリー「それに、今からその魔女に会うかもしれない」

ヘイリー「キミの力がきっと必要になると思う」

ヘイリー「貸しておくれ」


ヘイリー「それに、さっきは僕の方こそキツく当たって悪かった」


レオン「僕も突き飛ばしてごめんよ」


サイファー「あぁ。構わない」

サイファー「もう一度言う。すまなかった…」


私「よかったー…」

私「あのギクシャクした雰囲気どうしようって思ってた」


私「これで一致団結ねっ!」


頭上には、私がこの世界に来た時の本の形をした元の世界への入り口があった。


私(ここに世界が閉じるまでに戻ってこないと…)


空を見上げると亀裂が空全体を覆っていた。


私(まずい…急がないと…)


向日葵畑を抜けた。


突然、抱き抱えていたトトが、手元からスルッと抜け出し駆け出した。


トトは赤い屋根のローズさんの家の前でワンワンと吠えていた。


私「やっぱり、ここなんだ」


私(赤い屋根の家…多分だけれど、この家はドロシーが竜巻で飛ばされた家…)


私( つまりは…)


私たちも家の入り口までたどり着いた。


そして、ドアを開けた。


開けるとすぐにトトはドアの隙間から入り、階段を登って二階へ駆け上がった。


私「トトっ!待って」


私は慌ててトトを追いかけた。


すると、階段を上がって正面のドアに向かってトトが、かぎ爪を立てて、私に開けろと合図した。


私(この部屋…)

私(気にはなっていた)

私(シャワー室に入る前に人の声のようなものが聞こえた)

私( まさか…)


私は恐る恐るドアを開けた。


そこには、椅子に縄で拘束され、衰弱した少女の姿があった。


トトは心配そうな顔で少女の足首をペロペロと舐める。


私「えっ!ちょっとっ!」


私は少女の息を確認するため、肩に触れた。


「冷たいっ!」


よく見ると少女は全身ずぶ濡れだった。


私「息はあるみたいっ!」


私「だれかナイフみたいなものない?」


ヘイリー「あったよー」


私はヘイリーから受け取ったナイフでロープを切った。


私「このままじゃダメだっ!」

私「そうだ。お風呂に入れて温めないと」


私「サイファー!運ぶの手伝って」


私とサイファーで少女を風呂場まで運んだ。


私「ねぇ。みんな」

私「私今からこの子をお風呂に入れるから、そと見張ってて」


私「もしかしたら、魔女が来るかもしれないっ!」

ヘイリー「あぁ。わかったよ」


少女の服を脱がせ、浴槽に入れて、お湯を注いだ。


少女の身体は凍えるように冷たかった。


私「大丈夫かな…」

私「こんな処置でいいのかわからないよ…」


少女の顔色が火照り、だいぶ良くなってきているように見えた。


少女が目を覚まし、ゆっくりと目を開けた。


少女「あなた…は…?」


私「よかった…」


少女「えっ…」

少女「私なんでこんなところに?」


少女「私は確か…」


少女「キャーッ!」

少女「そうだ…私…突然女の人に襲われて…」

少女「酷いことされて…」


少女は両手で手で顔を覆った。


私「もしかして、あなたドロシー?」


少女「えっ?なんで私の名前をっ!?」

少女「まさかあなたっ!」


少女は私を睨みつけた。


私「いや、私はね…」


すると、トトが浴室に入って来た。


ドロシー「トトっ!」


私「すると、トトは私にすりすりと顔を擦り付けた」


ドロシー「えっ…」


ドロシー「そうなのね。ごめんなさいっ」

ドロシー「私、勘違いしてたわ」


ドロシー「トトは滅多にこんな風にしないから…」

ドロシー「助けてくれたのね…」


私「うん…」


ドロシーは浴室からあがり、タオルで全身を拭き上げた。


浴室の棚の上には、以前私がシャワーを借りる際に着ていた服が洗濯されて綺麗に畳み上げられていた。


まるで、またここに来るのことを分かっていたかのように…


私「ドロシー…とりあえず、これ着てて」

ドロシー「うん」


ドロシーが着替えている隙に、私は彼女が使ったタオルに付着していた金の髪をそっと取った。


私(こんな感じでこそこそしたくはないけれど、変に髪の毛頂戴なんて言えないよ..)


ドロシーが着替え終わり、シャワー室から出て、一階へ降りた。


三人とも一階の入り口付近で壁の方を向いていた。


私「大丈夫だったんだ」

私「よかった…」


私「みんなっ!」


私「ん?」

私「あれ?…」


声をかけても三人とも微動だにしなかった。


私は三人に近付いた。


私「ねぇ。ヘイリー。聞こえているの?」


私はヘイリーの右肩をそっと叩いた。


すると、ヘイリーはバタッと後ろに倒れた。


ヘイリーの胸元を見ると、バラが胸に突き刺さっていた。


私「えっ…」

私「ヘイリー…」


ヘイリーはただのカカシのように生を感じられなかった。


私「…みんな…」


私はあと二人の正面に向き合った。


私「ううっ…!」


サイファーは立ったまま両手で少女の生首を抱えていた。

その少女はサイファーが森で見せてくれたペンダントの写真の少女だった。



私「うぅ…」



他の二人もヘイリーと同じようにバラが胸に刺さり、石のように固まっていた。


レオンのお腹には切り傷があり、そこに何か白いものが挟まっていた。


私は恐る恐るそれを取り出した。


それは白い封筒だった。


封筒には手紙が入っていた。


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マリ


私からの些細なプレゼント


喜んでくれたかしら


          ローズより

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