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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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オズの魔法使い⑩魔女の傘

道を引き返し、森を抜けようとしていた。


トトは私たちが付いて来ているのか、たまに後ろを振り返る。


私はふと疑問に思った。

私(みんなドロシーのこと実は知っていたりして…)


私「ねぇ、みんな。ドロシーって人を知っている?」


ヘイリー「もしかしてお尋ね者のドロシー?」


私「詳しく聞かせて」


ヘイリー「えー。知らないの?」

ヘイリー「けっこう、有名だよ」


ヘイリー「それはねぇ…」

ヘイリー「悪名高い魔女さ」


私(ドロシーが?!)

どういうこと…


私「もっと詳しく聞かせて」


ヘイリー「うん。ドロシーはね。自身の若さを求めていてね」

ヘイリー「幼い少女を襲ってはその心臓を喰らうそうなんだ…」

ヘイリー「怖いよね…」


ヘイリー「ん?というより…」


ヘイリーが私の左耳に近づいてそっと囁いた。


ヘイリー「西の魔女さ。サイファーの娘をさらった…」


私「えっ…」

私「本当に?!」


ヘイリー「うん」


私(いや、そんなはずはない…)

私(私が知っている物語とは、似ても似つかない)


ヘイリー「もうすぐ森を抜けるよ」

私「ようやくね」


すると、ポツポツと雨が降り出した。


ヘイリー「まずいね。雨が降って来たよ」


私はローズさんから借りた傘をさした。


私(よかった。ローズさんから傘を借りていて…)


私「みんな…風邪引くといけないから、よかったら中に入って…」


レオン「うんっ!助かるよ。」

ヘイリー「僕は平気さ」


サイファー「おいっ!お前…」


サイファーは距離を取り、私に対して身構えた。


私「どうしたの?!」


サイファー「なぜお前がそれを持っている…」


私「えっ…」


サイファー「なぜだと聞いているんだっ!」


ヘイリー「おいおい…どうしたんだよ急に…」


サイファー「早く答えろっ!」


私「わかったわかった。話すからっ」


私「これはね。ローズさんって言う人から借りたの…」

私「とっても暑かったから持たせてくれたの…私に…」


サイファー「みんな離れろっ!」


サイファー「こいつは私の娘を襲った魔女…もしくはその手下だっ!」


ヘイリー「えぇ?」


サイファー「よくも…よくも娘を…」


私「ちょっと待ってっ!どういうこと?!」


サイファー「とぼけるなっ!」

サイファー「そうかい。俺らを騙して嘲笑おうとでも思っていたのかっ!」


ヘイリー「ちょっと、待って。落ち着きなよ」

ヘイリー「詳しく聞くからさー」


レオン「そうだよ。マリは魔女なんかじゃないっ!」


サイファー「魔女は人の良心を巧みに利用する」

サイファー「利用して心の中で嘲笑う…」

サイファー「もう騙される訳にはいかないっ!」


サイファー「娘を返せっ!」


サイファーが私に向かって拳を振り落とす。


私「えっ!?」


レオン「ガルゥーッ!」


レオンがサイファーの拳を口で受け止めた。


そして、レオンはそのままの勢いでサイファーを後ろへ押し倒す。


サイファー「ウォーッ!」


レオン「ガルゥーッ!」


レオンは激しく剣幕でサイファーに対して牙を向けた。


レオン「マリはそんなことしないっ!」

レオン「マリに手を出すようなら、オイラは黙っちゃいないっ!」


サイファー「貴様も魔女の見方をするのかっ!」

サイファー「フッ…騙されているとも知らずに…」


レオン「黙れっ!」

レオン「ガルゥーッ!」


ヘイリー「はーい。一旦、アイスブレイクー」

ヘイリー「一旦、二人とも落ち着こうよ」


ヘイリーが睨み合う二人の間に入った。


サイファー「邪魔だっ!どけっ!」

レオン「ガルゥーッ!」


ヘイリー「もー。こわ〜いなぁ〜」

ヘイリー「挟まれる僕はもっと怖い…」


ヘイリー「こんなの僕の性に合わないけど…さっ…」


ヘイリー「ねぇ、さっきから僕…」


ヘイリー「落ち着けっ!」


ヘイリー「って言っているんだよ…」


謎の空気に包まれ、ドス黒い声が響き渡った。


そして、ヘイリーの腕から濃い触手のようなものが現れて、両者の手足を拘束した。


ヘイリー「すまないが、二人が落ち着くまでこの状態にさせてもらう…」


私「あなた一体…」

サイファー「この魔力…間違いない..魔女の手下」


ヘイリー「ご明察…」

ヘイリー「そう私こそが魔女様の眷属…」

ヘイリー「魔女様によって、ただのカカシから命を授かったんだよ」


サイファー「貴様…」

サイファー「貴様ら最初から…」


ヘイリー「フフッ…」

ヘイリー「正確に言うと」

ヘイリー「魔女様の眷属だった…かな…」


ヘイリー「あのねー。キミ…」

ヘイリー「魔女だからといって全員が悪者ってわけじゃないんだよ」


ヘイリー「僕に命を与えてくれたのは心広い北の魔女様さ」


サイファー「魔女はみんな敵だっ!」


ヘイリー「あのねー。いちいち突っかからないでくれるかなぁ…」


ヘイリー「僕まで血の気が昇りそうになったよ…」

ヘイリー「まぁ、僕は人として?いや、ワラ人形として大人だから…さっ…」


ヘイリー「まぁ、そんなことはさておき…」

ヘイリー「サイファー。キミはなぜマリが魔女だと思ったんだい?」


サイファー「それは、その傘だ!」

サイファー「娘を奪った魔女もそのバラの刺繍が入った同じ傘を持っていた」


ヘイリー「ふーん。なるほど」

ヘイリー「だからキミは、マリを魔女かその手下だと思ったんだね」


ヘイリー「じゃあ、逆に聞こう」

ヘイリー「マリ、キミはどうしてその傘を?」


私「これは、ローズさんって人に借りたの」

私「暑いからって持たせてくれた」


ヘイリー「ふーん…」

ヘイリー「その傘見せて」


私はヘイリーに向けて傘を差し出した。


ヘイリー「ふーん…」

ヘイリー「間違いない。魔女の傘だ」

ヘイリー「微量だけど、魔力を感じる」

ヘイリー「強い魔力だ」


ヘイリー「ローズさんって人は知り合い?」


私「いや、私は暑くて汗だくでたまたま、寄った家の人がローズさんで」


ヘイリー「ふーん。要するにあまりよく知らない人に借りたってことだね?」


私「うん」


ヘイリー「ということらしいよ。サイファー」


サイファー「そんなもの信じられるかっ!」


ヘイリー「いや、サイファー」

ヘイリー「僕にはわかるんだよ」


ヘイリー「なんせ、魔女の眷属だったから」

ヘイリー「マリが魔女ではないことを」

ヘイリー「また、魔女の手下でもないことをね」


サイファー「…」


ヘイリー「キミはこれからどうする?」

ヘイリー「僕はこのままずっとキミを縛り上げておきたくはない」


レオン「ヘイリー…僕はもう何もしないから離して…」


ヘイリー「あぁ…ごめんよ」


ヘイリーはレオンの拘束を解いた。


ヘイリー「ここで、キミに提案だ」

ヘイリー「キミは西の魔女を追っている」

ヘイリー「マリはその魔女に会っている」

ヘイリー「ここにはその魔女の手がかりがある」


ヘイリー「もし僕がキミなら、多少の疑念は残るだろうけど付いていくね」

ヘイリー「だって、それが目的への近道なんだから」


ヘイリー「さぁ、どうする?」


サイファー「…」


ヘイリー「ん?!」


サイファー「私を離せ」


ヘイリー「ん?!」


サイファー「だから、私を離せっ!」


ヘイリー「いやいや、キミ、立場をわかっているのかい?」

ヘイリー「キミは拘束されているんだ」

ヘイリー「それに、離せば襲ってくるかもしれない」


サイファー「もう。襲わない。だから離せ」


ヘイリー「ふーん。約束だよ」

ヘイリー「破れば、僕はキミを許さない」

ヘイリー「わかったね?」


サイファー「あぁ」


ヘイリーはサイファーの拘束を解いた。


ヘイリー「僕らに付いていく?」


サイファー「…」

サイファー「あぁ…」


私(驚いた。本当に一瞬のような出来事だった…)

私(今はギクシャクしているけど、仕方ないよね…)


トトはまたも私の後ろに隠れてビクビクしていた。


私はトトに向かってしゃがみ込んだ。


私「怖かったよね…トト…」

私「私も同じ…」


トトを抱き抱え、そっと頭を撫でた。


こうして、色々あったけれど、歩みを進めた。

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