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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
103/114

オズの魔法使い⑨求めているもの

ヘイリー「えっーー!」

ブリキの兵士「ん?」

ライオン「え…」


ヘイリー「何を言い出すのさ…」

ブリキの兵士「そうだ。それは納得はできない…」

ライオン「うぅ…僕も…」


私「そうよね…」


私( どうしよう…)

私(とりあえず、私の目的を叶えてからとかでは、みんなの目的を叶える時間がない…)

私(それじゃあ嘘をつくことになる…)

私( それはよくない…)

私( どうする…)


ヘイリー「考え直しておくれよ」

ヘイリー「なぜそうなったのさ…」


私「あのね…私、思ったんだ…」

私「みんなが求めているものって、すでにみんなの中にあるんじゃないかなって…」


ブリキの兵士「ん?どうゆうこと…」


私「うん。説明するね」

私「今から私が言うことに、もし『そうじゃない』って思ったら正直に言ってほしい」

私「私、嘘はついてほしくはないの…」

私「お願い」


ヘイリー「あぁ」

ブリキの兵士「わかった」

ライオン「うん…」


私「まずはヘイリー。あなたがオズに何を求めているの?」

ヘイリー「そりゃあ。何でも考えられる脳さ」

ヘイリー「脳さえあれば何でも叶えられる!」

ヘイリー「脳があれば無限の可能性があるんだよ!」


ヘイリー「でも、僕はとうもろこし畑で鳥よけとして立っているだけ…」

ヘイリー「頭にはワラが詰まっているだけのただの人形…」

ヘイリー「無能の脳なし…なのさ…」

ヘイリー「僕なんて…さ…」


私「それは違うと思うな…」


私「ヘイリー…あなたはとっても賢い脳を持ってる」


ヘイリー「なぜそう言い切れるんだい?」

ヘイリー「ほら見てみろっ!僕の頭にはワラしか詰まっていないじゃないか!」


ヘイリーは帽子を床に落として、頭の中を私に見せた。


私「あの…私、正直に言うね。実はあなたに会った時、素通りしようとしたの…」

私「厄介ごとは嫌だなって思った…」


私「ごめん。本当にごめん」


床に落ちている帽子を手に取り、ヘイリーの頭に被せた。


ヘイリー「それはわかっていたよ。慣れっこさ…」


私「でもね。そうじゃなかった…」

私「あなたに付いて来てもらってよかったなって今では思っている」

私「トトと二人で、正直言うと…不安だったの…」

私「この先どうなるのかなって…」


私「でもその不安がね。あなたのおかげで少し和らいだ…」

私「ジャックってゆう私の大切なお友達がいてね」

私「なんだか少し似てるの…あなたに…」

私「だから、なんだか懐かしくて心強く感じた…」


私「ごめんね。これはあなたが求めるものじゃなかったね…」


私「でも、これは嘘じゃなくて本心だから…」

私「これだけはどうしても伝えたかった…」


ヘイリー「そうなんだね…」

私「うん…」


私「ここからが本題」


私「ブリキの兵士さんが動けなかった時、あなたどうした?」


ヘイリー「錆が酷かったから、油があれば動けるようになるかなって…思ったんだ」


私「私、そんなの知らなかったよ…」


ヘイリー「えっ!?」

ヘイリー「キミには脳があるのに!?」


私「やっぱりね。脳に対する捉え方に違いがあったのね…」


ヘイリー「どういうことさ…」


私「脳があるからといって、何でもいきなり出来るようになる訳じゃないんだよ」


私「脳があっても誰かに何かを教えてもらう。もしくは自分で調べて、本当に正しいか試す必要があるの」

私「そうやって、何回も繰り返して学習していく」

私「そして、脳に蓄積されていくの」


ヘイリー「えっ!そうなのっ!?」


私「うん」


ヘイリー「僕はてっきり、違うように思い込んでいたよ」


私「それでね。あなたにはとっても賢い脳があると思うわ」

私「あなたはおじいさんに教えてもらったことをしっかり覚えていた」

私「あなたはそれを知恵として蓄えていたから、ブリキの兵士さんを助けられた」

私「これは、あなたに脳があるからできたこと…」

私「それは偽りのない事実」


私「たとえ自分の頭に脳が入っていないように見えても、そんなものは関係ない」

私「あなたには知恵を蓄えて、必要な時に引き出せる素晴らしい脳がある」

私「私はそう思った」


ブリキの兵士「うん。確かに。私はヘイリー殿の知恵に助けられた…」

ブリキの兵士「だから、私はこうして動いていられる」


私「うん。ヘイリー…あなたは無能の脳なしなんかじゃないわ」


ヘイリー「…うん…」


私(どう思ったのかな…)

私(利用するためとかそうゆうのじゃなくて、私は思ったことをそのまま言ったんだけど…)


私「次はブリキの兵士さん」


ブリキの兵士「あぁ」


私「まずは自己紹介からかな」

私「私はマリ…」

ブリキの兵士「私の名はサイファー」

私「よろしくね」

ブリキの兵士「あぁ」


サイファー「私は兵士ではなく木こりだ」

サイファー「人間だった時は木こりだった…」


私「そうなんだっ…ごめんなさい」

サイファー「いや、問題ない」


私「初め会った時、魔女にココロを奪われたって言ってたけど、話…聞いてもいい?」


サイファー「あぁ」

サイファー「私は元々この森で娘と二人平穏に暮らしていた」

サイファー「だかある日西の魔女が突然やって来た」

サイファー「魔女は私のココロを奪い、奪われた私はこんな身体に…」

サイファー「そして、魔女は娘を連れ去った…」

サイファー「娘は私の名を呼び泣き叫んでいた…」

サイファー「だが、ココロを奪われた私は何も感じることなく只、娘が遠くなっていく様子を眺めていた…」

サイファー「…もう私には人としてのココロがない…」

サイファー「何も…何も感じられないんだ…」

サイファー「娘のことも…自分のことも…」


私「っうう…」


サイファー「…どうしたんだ…」

サイファー「泣いて…いる…のか…」


私「…ごめん…」


サイファー「なぜ謝る…」

サイファー「気にすることはない…」

サイファー「私はもう何も感じることはないのだから…」


私「私、西の魔女が許せないっ!」

私「なんでっ!」

私「酷い…酷すぎるよ…」

私「なんでそんなことができるの…」


サイファー「思ってくれているの…だな…」

サイファー「でも…いいんだ…過ぎたことだ…」


私「違うっ!」

私「そうじゃない…」

私「そうじゃないよ…」


私「じゃあ、なんであなたはココロを求めるの?!」

私「私はあなたがそれを求める理由がわからない…」


サイファー「それは、私が変化を求めているからだ…」

サイファー「ココロを得られれば何か…また人であった時のように…何かを感じられるようになるのでは、と…」


私「そう…」


サイファーは首にかけていたロケットペンダントを開いた。


サイファー「私の娘だ」


私「可愛いね…」


サイファー「…わからない…」


私「なんで…」

私「自分の娘なんでしょ…」

私「どうして…なんで…」


私(大切なたった一人の娘なんでしょ…)

なんで…


私(この人に思い出させてあげる)

私(何が大切なのかを…)


私「ねぇ。そのペンダント私にちょうだい」


サイファー「あぁ…別に構わない…」


サイファーは首からペンダントを外して私に渡した。


私「これ、今のあなたには不必要な物…なのよね?」


サイファー「…あぁ…」


私「そう…」


私はペンダントを右手に握りしめ、森の方向きながら腕を振りかざした。


振りかざした私の腕が誰かによって止められた。


サイファー「なぜだ。なぜ私は動いた…」


私「離して…必要ないんでしょ」


サイファー「 …」

サイファー「あぁ…」


私「私はサイファーの手を振り払い、もう一度振りかざした」


サイファーは、またもや私の腕を止めた。


サイファー「…ダメだ…」


私「えっ?」


サイファー「ダメだ…」


サイファー「お願いだ。頼む…」

サイファー「それを…返してほしい…」


私「あなたにとってこれは不必要なものなんでしょ?」


サイファー「それは…」

サイファー「それは…違う…」


サイファー「お願いだ。返してくれ」


私はペンダントをサイファーの掌の上にのせた。


サイファー「会いたい…娘に…」

サイファー「取り戻したい。娘を…」


私「やっと、気付いたのね…」

私「あなたはね。受け入れ難い現実からただ逃げていただけ」

私「ココロがないっ?」

私「それは違う…」


私「あなたは体が錆びても尚、なんとか動かそうとしていた…」

私「無理だとわかっていたとしても、心のどこかでずっと諦め切れなかった…」

私「なんとしてでも取り戻そうと…ずっと…」

私「そうなんじゃないのっ!?」


サイファー「キミの言う通りだ…」

サイファー「私は受け入れ難い現実からずっと目を逸らしていた」

サイファー「でも、忘れられなかった…」


サイファー「だって、娘は私のたった一つの宝物だから…」

サイファー「私の命よりも大切なもの…」


サイファー「取り戻したい…」

サイファー「会いたい。娘のナキに…」


サイファー「ナキ…私のナキ…どうか無事であってくれ…」

サイファー「ナキ…」

サイファー「ナキーっ!」

サイファー「っう…うわぁー…うわぁー…」


サイファー「どうしてだ…どうして私は…」

サイファー「何故だ。何故もっと早くに気づけなかったんだっ!」


サイファー「ココロを奪われた。だからなんだっ!」

サイファー「娘が大切であることを忘れる?」


サイファー「愚かだ…私は愚かだっ!」

サイファー「逃げていた。私はただ現実から目を逸らしていただけなんだ」


サイファー「うわぁーっ!」


サイファーは膝をつき、拳で地面を叩きながら悔やんでいた。


私「あなたが求めるものはココロ…じゃないよね…」


私「最後はライオンさんね」

私「お名前は?」

ライオン「僕は…レオンだよ」


私「よろしくね」

レオン「あっ…うん」


レオン「おいらへの説明は不要だよ…」

私「えっ…」


レオン「おいらはね。キミのように強くなりたい」

レオン「キミのように強くなりたいんだっ!」


私「私のように…?」

レオン「うん」


レオン「おいらが求めているのはね、力じゃない強さ」

レオン「感動した。今のキミはまさにおいらが求めているものそのものだった」

レオン「『勇気』っていう言葉では言い表せないほどに素晴らしかった」


レオン「おいらは決めたよ。キミに付いていく」

レオン「キミと一緒ならきっと自分を変えられる!」

レオン「そんな気がするんだ」


私「そう?」

レオン「うんっ!」


私「ありがとう」


私(これで全員に伝えられたかな…)

私(内心みんなどう思っているんだろう…)


私(エメラルドまで行くことを私は約束したから、彼らがそれを求めるのであれば仕方がない…)

私(時間がなくて、世界がもし閉じられてしまっても、メアリさんとネムさんがきっと救い出してくれるはず…)



ヘイリー「そうなの。そうなのかい。そーなんだねっ!」

ヘイリー「僕にはすでにあったんだねっ!

ヘイリー「脳がっ!脳がっ!僕には脳がっ!」

ヘイリー「見えなくてもあるんだねっ!」

ヘイリー「なんて…なんて嬉しいんだっ!」

ヘイリー「今まで初めてだよ。こんなに幸せを感じられる日が来るなんてっ」


ヘイリーは嬉しそうに木の軸を回転させてクルクルと回っていた。


ヘイリー「ありがとう。マリ…」


私「フフッ…」

私「ちゃんと名前覚えていてくれてたんだ…」

ヘイリー「当たり前だろ」


ヘイリー「僕はキミが初めてなんだ。真っ直ぐ僕に向き合ってくれる人がね」


ヘイリー「僕はキミに付いていくよ」


サイファー「私もマリに付いていく」


レオン「おいらもさっ」


私「えっ…いいの?」


ヘイリー「いいに決まっているじゃないかっ!」

ヘイリー「キミは僕に脳があることを気づかせてくれた」

ヘイリー「恩を返したいんだよ」


サイファー「あぁ…私もだ」


私「でも、サイファー。あなたに関しては娘さんを…」

サイファー「そうだな…」

サイファー「だが、その魔女もどこにいるかわからない…」

サイファー「ならば、マリとともに行き何か手がかりを得られるのではないかと思ったのだ…」

サイファー「オズに会って教えを乞うことも考えたのだが、必ず得られるかもわからない…」


私「私について来たとしても何も得られないかもよ」

サイファー「構わない。私の感がそう言っている」


私「そう…」


私(私が知っている物語ではオズは嘘つき)

私(私も行かない方がいいと思う…)


ライオン「僕はまぁ…そうゆうことだから」


私「うん!」

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