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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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オズの魔法使い⑧やっぱりおかしい…

さらに森の奥へ進むと、日が差し込むひらけた場所に着いた。


私「疲れた…」


私は両手を膝につけて前にかがんだ。


ヘイリー「あっ…ここに着いたんだね」

ヘイリー「おじいさんが言ってたよ」

ヘイリー「ひらけた場所に着いたら、もう少しで森を抜けられるって…」


私「そうなんだ」


すると、草むらの茂みからガサガサと音がした。


私「何…」


トトは一目散に私の後ろに隠れた。


トト「クゥーン…」


私( …トト…)


ヘイリー「何かいるようだね」


ブリキの兵士「私の後ろに下がっていろ」


ブリキの兵士は『ガンッ』と拳同士をぶつけて音を立てた。


すると、草むらからはオレンジ色の動物の毛のようなものが見えた。


だか、ガサガサという草むらの音は段々と遠ざかっていく。


私( あっ…もしかして…)


私「ねぇ、あなた。もしかしてライオンさん?」


私が声をかけると草むらの音はビタッと止んだ。


すると、草むらからげっそりと猫のように痩せ細ったライオンが姿を現した。



ブリキの兵士「下がられよっ!」


「ガンッガンッ」


ライオン「ヒェー…」


ライオンは再び草むらに身を隠し、恐る恐るこちらの様子を窺う。


私「ブリキさん…たぶん大丈夫」

私「あのライオンさんは、襲ってはこない」


ブリキの兵士「そうなのか…」


トト「ワンッ!ワンワンっ!」


ライオン「うわぁっー!」


ライオンは逃げ隠れてしまった。


トトはこっちを見ながら、してやったりの顔をした。


私(トト…あなたって子は本当に…)


私「ねえ、トト…吠えないであげて」

私「ね?」


トト「クゥーン…」


私はトトの頭を撫でた。


トト「クゥーン…クゥーン…」


私(なんなんだこの犬…)


私「ライオンさんごめんね」


私「私たち何にもしないから…」

私「大丈夫だから…」

私「お願い。出て来てくれないかな…」


ライオンはゆっくりと怯えた様子で草むらから出てきた。


私「大丈夫?」


ライオン「うん…」


ライオンは頷いた。


私「あっ…あなた話せるの?」


ライオン「うん…」

ライオン「おいらさ…弱虫だからさ…」

ライオン「群れから追い出されちまったんだ…」


ライオン「そんなおいらに南の魔女様がよ…」

ライオン「人と話せるよう魔法をかけてくれたんだ…」

ライオン「『あなたは野生の動物としては生きていけない』って…」

ライオン「惨めだけどよ…おいらもそう思った」


私「そうなの…」


私(間違いない。このライオンはお話に出てくる…)


私(じゃあ、やっぱりおかしい…)


ライオン「だから、おいら決めたんだ!」

ライオン「オズに会って、強い『勇気』をもらおうって…」

ライオン「でもよ…おいら一人じゃ無理でよー…」

ライオン「探してたんだ…一緒に行ってくれる人を」


ライオン「だからお願いだ!もうこんな機会滅多にないと思う」

ライオン「おいらもエメラルドまで連れて行ってほしいっ!」


ライオンは私に向かいながら頭を下げて頼み込んだ。


私(初めて見たー。ライオンが頭を下げるの…)


私は空を見上げた。


すると、亀裂が更に大きく広がっていた。


トト「ワンっ!」


すると突然、トトは駆け出し、こっちの方を向いて吠えた。


トト「ワンッ!ワンワンッ!」


トトが再びこちらへ戻ってくる。


ヘイリーの足を咥えて、トトは必死に引っ張ろうとした。


ヘイリー「どおしたんだ。ワンちゃん…」

ヘイリー「やめっ…やめるんだっ!」

ヘイリー「そっちはエメラルドじゃないよ…」


トトは必死になって何かを訴えかけているようだった。


トト「ハァハァ…」


トトは私のスカートを咥えて引っ張った。


トト「ワンッ!」


私「トト…」

私「もしかして、あなたドロシーのところに行こうとしているの?」


トト「ワンッ!ワンワンッ!」


トトの必死の形相が崩れ、目を丸くした。


私「やっぱりね…」


私「じゃあ、この世界のお話も知っていたりしてー…」


トト「ワンっ!」


私「もしかして、陽葵さんをこの世界に連れ出したのもー…」


トト「ワンッ!」


私「まぁ、悪い子…」


トト「クゥーン…」

私「うそうそ」


私「ライオンさんが仲間になってから、あなたは突然、何かを知っていたかのように道を引き返そうとした…」


私「それは、この物語を知っていたからとしか思えない…」


私「こんな森の奥まで来てしまって…」

私「もっと早く気づくべきだったな…」


私「そう。おかしいの…」


私「だって、ヘイリーもブリキの兵士さんも、ライオンさんも」

私「まだ、ドロシーに会っていないんだもん…」

私「まるで私がドロシーかのように…」


私「でしょ?トト」


トト「ワンッ!」


私「でも、あなたがこのタイミングで引き返そうとしたのには理由があるのね?」


トト「ワンッ!」


ヘイリー「ん?ごめんよ。僕はキミが何を言っているのかさっぱりだ」


ブリキの兵士「あぁ…私もだ」


ライオンは首を横に傾げた。


私「ごめんね。三人とも」

私「私、今からおかしなこと言うよっ!」


私「今来た道を引き返しまーすっ!」



みんな「エッーーーーー!」


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