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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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オズの魔法使い⑦油さし

とうもろこしをかじっていた。


私「はぁ…」


私(結局、私は食べ物に釣られてしまった…)

私(トトのこと言えないな…)


ヘイリー「食べ終わった?」


私「うん!ご馳走様でした」

私「美味しかったね。トトっ!」

トト「ワンっ!」


ヘイリー「じゃあ、行くよ」



私たちは再び歩き出した。


私(ん?…何だろう…)

私(何か変…)


私「まぁ、いっか」


ヘイリー「どうしたの?」


私「ううん…何でもない…」


ヘイリー「ふーん…」


空を見上げると、最初の時よりも亀裂が広がっていた。


私(急がないと…)


ヘイリー「そうだ。キミの目的地は?」


私「んー…あー…」

私「ごめんっ!」

私「エー…エメラルドっ!」


ヘイリー「やっぱりね!」

ヘイリー「そうだと思ったんだよ」

ヘイリー「この道を行く人はみんなエメラルドに向かうんだ…」


私「ごめんっ!嘘ついて」


ヘイリー「ううん。気にしてないよ」

ヘイリー「みんなそう言って、僕の前を通り過ぎていくんだ」

ヘイリー「でも、キミはこうして一緒に歩んでくれた」

ヘイリー「それとも、とうもろこしで釣れたとでも言うべきかな?」


私「んー…」


ヘイリー「ヘヘッ…嘘さ…」


ヘイリー「キミの名前は?」

私「マリ…」


ヘイリー「ふーん」

私(何…聞いておいて興味ないみたいに…)


ヘイリー「僕はね。エメラルドにいるオズに会って、脳をもらうんだ」

ヘイリー「そう。考えられる脳を」

ヘイリー「キミにはあるんだろ?」


私「うん」


ヘイリー「良いなぁ…」

ヘイリー「羨ましいなぁ…」


私「そうなの?」


ヘイリー「そりゃそうさ」

ヘイリー「脳があれば何だってできる!」

ヘイリー「未来が広がるのさっ!」


とうもろこし畑を抜けると森が見えてきた。


私(森かー…虫とかいなければ良いけど…)


森の中へ入ると木々や草が鬱蒼と茂っていた。


中に進むたび、太陽の光が差し込まなくなった。


私(暗い…)


「ギー…ギー…」


私「何の音…」


ヘイリー「何かいるようだね…」


『ギー…ギー…』という音は道を進むたび強くなっていく。


音の先には、錆びたブリキの兵士が尻餅をついていた。


自ら立ち上がろうとしていたが、錆のせいか上手く力が入っていない。



あのブリキ…


ヘイリー「マリ、助けようよ!」

私「…ううん…」


ヘイリー「ねぇマリ…」

私「わかった」


私「でも、どうしたらいいの?」

ヘイリー「そうだねぇ…」


ヘイリー「そうだ。油だ」

私「油?」


ヘイリー「うん。油をさせばきっと動けるようになるよ」


私「でも、油なんて持ってないし…」

私「しかもこの森で…」



ヘイリー「うーん…困ったね…」

ヘイリー「油になるようなものを探そうか」


森の中を探索することにした。


ヘイリー「んー…何かー油になるようなものは…」


すると、小動物が目の前に現れた。


私「リスだ」

私「可愛いっ!」


リスは丸いものを必死に口の中に詰め込んでいた。


ヘイリー「そうだ!あれだよあれ」


私「えっ…リスをっ!」

私「そんなの…」


ヘイリー「ん?いやいや、それは僕らでは無理さ」

私「ん?」


ヘイリー「リスが口に含んでいるあれだよ」

ヘイリー「胡桃さ」


私「胡桃?」

ヘイリー「うん。胡桃の実を絞ると油がでるんだっ」


私「そうなの?」

ヘイリー「あぁ。そうさ」

ヘイリー「前に隣村のお爺さんに教えてもらったんだ…」


私「あれを沢山集めればいいのね」

ヘイリー「そうゆうことさ」


運がいいことに胡桃はあちらこちらに沢山落ちていた。


私は胡桃をブリキの前に沢山運んだ。


こんなことしてていいのかな…

私(間に合うのかな…)


ヘイリー「沢山集まったね」

ヘイリー「まずは胡桃の殻を割るんだ」


ヘイリー「砕く石があれば…」

私「これとか?」

ヘイリー「良いね!」


石を手にくるみの殻に叩きつけた。


すると、くるみの殻は割れ、黄色い中身が見えた。


ヘイリー「そう。それをすべて出して、絞れば油が出てくるはずさ」

ヘイリー「大体三十個ぐらいかな?」


私「三十個っ!」

ヘイリー「うん」


私「わかった。やるよ」

ヘイリー「ごめんよ。僕は見ての通りこんな体だからさ」

ヘイリー「手伝えそうにないんだ…」


私「大丈夫」


私はひたすら胡桃の殻を割った。


三十分ぐらいかけてすべて割り終えた。


ヘイリー「僕の左手首の中に布があるだろ?」

私「うん」


ヘイリー「引っ張って」


私は布を引っ張った。


ヘイリー「それに胡桃を包んで上から足で叩き潰して」

私「うん」


すると、布がじんわりと染み出した。


ヘイリー「良い感じだ」


ヘイリー「それを細い枝に付けて、させるかな?」


私「やってみる!」


ブリキ人形の関節の節々に油をさした。


何とか全て箇所に事足りた。


すると、ブリキ人形は再び立ち上がろうと力を入れた。


ブリキ人形は無事立ち上がった。


ブリキ人形の背は高く、思わず私は少し引き下がった。


ブリキ人形「あり…がとう…」

私「えっ…」

私「あっ…うん…」


ブリキ人形「キミ…の…おかげで…動けるように…なった…」

ブリキ人形「ワタ…シは…諦めるわけにはいかない…」

ブリキ人形「ココロ…ココロを取り戻したい…」

ブリキ人形「オズに会って…ココロもらいたい」

ブリキ人形「ワタシが…人間だった時のココロ…」

ブリキ人形「魔女に奪われたワタシのココロ…」


私「魔女に…?」


ブリキ人形「そう。ワタシは人間だった」

ブリキ人形「でも、今は…」


私「そうなんだ…」


私(でも、オズは多分嘘つきなんだよ…)



私「一緒にくる?」


ブリキ人形「行きたい…」


私「わかった。でも、急いで行くよ…」

私「私、時間がないんだ…」


ブリキ「わかった」


こうして、また一人加わり、森の奥へ突き進んだ。

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