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忘却のグレーテ  作者: だい
第三章其の二
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オズの魔法使い⑥喉乾いたな…

私は日傘を片手にトトを抱き抱えながら一本道を歩いていた。


ようやく向日葵畑を抜けて、草原に出た。


私「トト、ちょっとあの木陰で休憩しよっか…」

トト「ワンっ!」


私「喉渇いたな…」


木を背にして座り込み、そう呟いた。


私「ローズさんに水筒とか聞けば良かった…」

トト「ワンっ!」

私「ねー…」


私「でも、今はそんなこと悩んでいる場合じゃない…」

私「進まないと…」


一本道はまだまだ先に伸びていた。


トトが歩き出した。


私「歩いてくれるの?」

トト「ワンっ!」


私「そう…」

私「じゃあ、行こっか…」


草原を抜けると、またも背の高い緑の植物に道が覆われていた。


私「これなんだろう…」


私「ん?」


緑の植物から黄色いものが剥き出しになっているものが見えた。


私「これって…」

私「とうもろこしっ!」


私「そう!絶対とうもろこしだっ!」

私「わぁ、食べたいなぁ…」

私「喉も乾いたし…」


私(んーでも、ダメだよね…)

私(人が育てたものを勝手に…なんて…)


私「よくない…」


私はぐっと堪えた。


そうすると、畑の方から何かガサガサと物音が聞こえた。


私「何っ!」


すると、黒い帽子を被り、青い服を着きた者が突然現れた。


私「きゃっ!」


私は全力で身構えた。


トトは怯えて私の後ろに隠れた。


改めて見ると、顔は布っぽく、目は丸とバツで刺繍のようであり、口もギザギザと糸で縫い付けられているようだった。

足は一本で、手首はブラブラとしており、力が入っていない様子だった。


?「ごめんよ…」

?「驚かすつもりはなかったんだ…」


?「でも、そんなに怯えなくてもいいだろ…」


私「…」


今起きていることの状況が読み込めなかった。


しばらくの間沈黙が続いた。


私(なんなのよ急にっ!)

私(びっくりしたじゃないっ!)



?「あのー…」



私(この感じ前にも同じことがあったような…)

私(そうだっ!ジャックと出会った時だっ!)



?「あのー…」



私(あの時、本当にびっくりしたんだからっ!)

私(急に飛び出して来るやつは基本ろくなやつじゃないって!)



?「あのー…」


布顔の者はゆらゆらと横に揺れた。



私はその者を睨みつけた。


?「あのですねぇ…」

?「そんなに警戒しないで頂きたくて…」


私はずっと睨みつけた。


?「んー…」

?「どうしよかな…」

?「困ったな…」



私(敵意はないみたいだけど…)

私(でも、急に現れるなんてイラッときた…)


?「そうだぁー!こういう時の自己紹介だねぇー」

?「僕は、カカシのヘイリー…」


カカシのヘイリーは胸を広げるように、上半身を後ろにそり返した。



私「びっくりしたじゃないっ!」


ヘイリー「だからさ、最初にごめんって謝ったじゃないか」


トト「ワンっ!」


トトは警戒するかのようにヘイリーに向かって吠えた。


私(トト…それ今じゃないよ…)


トトは私の方を向いて『守ってやるからな!』と言わんばかりに誇らしげな顔をした。


私(ねぇ…あなた真っ先に私の後ろに隠れたよね…)


トト「ワンっ!」


私(情けない…)



私「それで、あなた何の用?」



ヘイリー「僕はね。この先にあるエメラルドに行きたいんだ!」

ヘイリー「ずっと誰かこの道を通らないかを見ていたんだ」


ヘイリー「そうしたらキミがいた」


ヘイリー「キミっ!エメラルドに行くんだろ?」


私(あー。こいつ絵本に出てくる脳無しのカカシだ)


私「いいえ。違います」

私「私、先を急いでいるので失礼します」


ヘイリー「そうなのかい。もし、そうなら一緒に行こうと思っていたんだけれど…」


私(ドロシーと一緒に行くのがストーリーなはず…)

私(勝手に連れて行かない方が良いと思う…)


私(それにこの人ジャックに似ててデリカシーなさそうだし…面倒くさそうだし…)

私(一緒に行かない理由はほぼそれと言っても過言ではない…)


ヘイリー「因みになんだけど、この先にある場所ってエメラルドしかないと思うんだけど…」


ドキッとした。


私(疑われてる…)


私「あはは…トトー…行くよー…」


ヘイリー「もし、途中まで付いて行っても良いって言うなら僕の畑のとうもろこし…」

ヘイリー「あげてもいいなって思ったのに…」

ヘイリー「瑞々しくてとっても美味しいんだよねー…」



私は気がつくと、とうもろこしをほおばって食べていた。


私「美味しいーっ!」


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