社会人、一旦街へと戻る
「仕事はどうするんだ?」
仕事、仕事かぁ。元の世界ですら何にもイメージが沸かず、結局求人の多かった大学の勉強とは関係のないシステムエンジニアやろうとしてたくらいだしな。
自分のことではあるんだけれど、考えれば考えるほどドツボにはまっていく。
「なら尚更いろいろみた方が良いだろうな。職無しニートでも良いと思うぞ?」
ひどい言われようだった。
まぁ間違いではないんですけれどね?
「一年ニートするとしても割と心もと無いですよね。これ」
「まぁな」
ポケットに入っていた餞別の硬貨を取り出してみる。
そもそもこれいくらあるんだ?
「過ごせて1ヶ月ってところだな。元の世界換算で金貨一枚がだいたい10万円、銀貨一枚がだいたい1万くらいか?」
「思ったより無いなぁ……」
つーか、何でそんなぽんと15万がポケットマネーから出せるんだよ。
「儲かってますね」
「いつでも入隊待ってるぞ」
嫌です……。口には出さなかったが。全力の愛想笑いで対応する。
しんどいのが避けられるのなら避ける。俺の決意は固いのだ。
まぁ、貰ったもんをとやかくいうのも何なのでとりあえずこの金でなんとかするしか無いか。
そんなことを考えていると、いつの間にか森を抜けていた。
「おすすめの仕事ありますか……軍隊以外で」
一人で探すのにはやはり無理がある。
「一応そこのところは役所の仕事なんだ。君が転移されてきた場所に窓口がある。そこに道具屋だったり食堂の店員の募集がたまにある。だが、俺のおすすめは」
首だけこちらを向くような体制で、
「冒険者だ」
溜めに溜めてそう言う。
「お、おぉー」
思わず感嘆の声を上げていた。
確かに役所に居た人は防具を付けていたり武器を持っていたりしていたな。
「給与形態はどんな感じですか?」
面接みたいなこと聞いちゃったな。
人知れず嫌なことを思い出していると、「たしか……」と思い出しながらホヅキは話す。
「基本は魔物狩りだよ。依頼、というかクエストだな。それがあればその魔物を倒して、ギルドを仲介して成功報酬を受け取る。それでなくても素材をギルド直営の武器屋に売り込むこともできるぞ」
なんて夢の世界なんだ。
とやかく言ってごめんね。
期待に胸を膨らませ、ノーズリー区の関所をくぐる。
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所持スキル
<スキル 稀代の魔術師>
・このスキルを所有する者のマナは1万倍に膨れ上がる。
・このスキルを所有する者のマナの消費量は一万分の一に抑えられる。
・このスキルを所持するものは、千年後魔族となる。
所持魔法
なし