表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

損な人(千文字作文)

作者: 下菊みこと
掲載日:2024/03/13

彼女はいつだって、損な人だった。


周りの人々のために祈り続け、そのたびに自分の魂を削る。


聖女、なんてものはなんの犠牲もなく成り立つものではない。


奇跡を起こすたび、魂を削られる。


対価を天に支払っている。


それは誰もが知っていて、けれど誰も彼女を止めない。


削られた分の魂を蘇らせるならば、それだけの幸せを養分として与える必要がある。


けれど教会は、彼女に幸せを与えない。


自由を与えない。


彼女の魂が完全に無くなるまで使い潰す気でいる。


そして彼女はそれを受け入れている。


だから、こうする他になかったのだ。

















「騎士様、ここは?」


「楽園ですよ、聖女様」


遅い時間にお目覚めになった聖女様。


しん…と静まり返った教会に違和感を感じているらしい。


けれど、魂があと一欠片ほどしかない彼女は…もう目すら見えなくなっている。


血みどろの教会も、放置された肉塊も見えていない。


…教会の外に広がる地獄も、知ることができない。


幸か不幸か、この島国は非常に狭い。


そして鎖国しているので、外国に状況を知られることもない。


二人だけの楽園だ。


削られた分の魂を蘇らせて、目が見えるようになる頃には肉塊も土に還っている頃だろう。


壁や床の血は、まあおいおい考えるとして。


虫が湧くのは不快だが、聖女様のいる部屋には入ってこられない。


結界があるから。


だから、バレることはまずないのだ。


「楽園…では、私はもう力を使い果したのね」


「はい…」


「でも、どうして騎士様が一緒にいるの?」


「…覚えていらっしゃらないでしょうか。運命を共にしたからですよ」


「え」


優しい聖女様は、俺の嘘に青ざめる。


そんな聖女様を抱きしめる。


「騎士様?」


「俺がそばに居ます。だから、どうかここで共に生きて欲しいのです」


聖女様はその言葉を聞いて、やや間を置いてから優しく微笑んでくださった。


「私の騎士様、どうか最期の日まで一緒に生きてくださいな」


「もちろんです、地獄の底までお伴します」


聖女様にはバレることはないと思う。


思うが、バレた上でこの言葉をくださったならどれだけ幸せだろうか。


聖女様は、ただ優しく微笑むばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ