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俺達は持病を持っていたり身体が不自由なお年寄りを小田原要塞に移送した…その時、乾から連絡が来た。


俺は彩斗。


先ほどワイバーンメンバーが集まって今後の方針を相談した。

結局保護した人達全員に最新の状況を伝える事にした。

その際、病気を抱えていて薬が切れかかっている人や手足が不自由でいざと言う時に移動が困難な人達に今のうち岩井テレサの小田原要塞に移ってもらう事にし、緊急時以外、地上での移動は困難があるので控えたいと明石達が言うと、リリーが岩井テレサに大型ヘリを送ってもらう事に決めた。


保護した人達全員を集めてその内容を話した。

そして、今のうちに移動してもらう事を決めた人達以外に岩井テレサの小田原要塞に移りたいと思う人を募った。

子供の事が心配な親達もいて、子供達でもと言ったが、当の子供達が全員強硬に死霊屋敷にとどまる事を主張して、司や忍達が先頭に立ってストライキを決行してでも死霊屋敷に残るなどと騒いだので結局残る事になった。

やはり親と子は切り離せない。

結局持病を持っていて手持ちの薬が少なくなったお年寄り、体が不自由で地下避難道への出入り、バスに乗りこむ時に時間が掛かるお年寄り達十数人が小田原要塞に移動することになった。


さて、岩井テレサにその事を連絡しようとしたが、自衛隊の基地を襲われて大量の武器を奪った集団がどこにいるのか判らないと言う事で、万が一通信を傍受されるとヘリコプター自体が撃墜される恐れがあると言う事で俺達は悩んでしまった。

明石がニヤリとして四郎の肩を叩いた。


「彩斗、リリーの方で伝令を出すと言っておったがな、陸を通ると通れない所があったり襲撃を食らう恐れがあるから、ここはひとつ、いにしえの通信手段を使おうじゃないか。

 外部に秘密が漏れない通信手段をな。

 四郎にひと働きしてもらおうか。」

「うむ、われがカラスに変化してひとっ飛びすればな、事足りる事だ。

 われらの内で空を飛べるものは我と凛、喜朗おじだ。

 だが凛のペガサスと喜朗おじのグリフォンではスピードは出せるが目立ち過ぎるからな。

 われが頑張れば片道2時間以内で小田原まで行けるぞ。

 それにカラス1羽が飛んでいても目立たないしな。」


四郎が胸を叩いた。

なるほど、伝書鳩の要領か。

これならヘリコプターの往復をする事が絶対に外に漏れないな。


早速四郎が岩井テレサへの言付けを頭に入れるとカラスに変化して、四郎カラスが死霊屋敷の上を数回旋回して小田原要塞に向けて飛び立った。


「成る程、あれは良い手ね~!

 ドローンなどと違って電子妨害も通用しないもの。」


飛び立っていった四郎カラスを見送るリリーが笑いながら言った。


俺達は塀に沿って掘りを掘り進む作業等を続ける一方で地下ガレージで候補者達の射撃練習をした。


最初は渡されたピストルの重さに驚き、徹底的に安全な扱い方を叩き込まれ、初めてピストルを撃ち、その反動の強さに驚いていた候補者たちは、やがて、構え方も様になって行き、的によく当てるものも出始めた。


射撃練習が一段落した後で候補者たちは今度はピストルの分解手入れを教えられて黙々と手入れを行っている。


まだまだ普段所持させるのは事故の恐れがあるので練習手入れが終わったピストルはガレージ地下や死霊屋敷の武器庫、俺達の家に分散しておくことにした。

なにかが起これば候補者たちはそれぞれ手近な場所に走って武器を手に入れる事が出来る。


練習が終わり、俺はダイニングに行きコーヒーを飲んだ。

教官役をしていた凛とクラもやって来てカップにコーヒーを注いだ。


「彩斗リーダー、あの人達、まだまだだけど役に立ちそうですね。」


クラがにっこりとした。


「うん、そうだね…練習で基本はしっかり身に着けてもらわないとね。」


俺はそう答えてコーヒーを飲んだ。

凛がコーヒーを飲みながら俺を見つめている。


「彩斗リーダー、まだ何か気が進まないようですね…。」


凛はアナザーなので俺の心を読んだようだ。


「うん、俺はユキにピストルとナイフを教えた時もそうだけど、あの人達が武器を使わないで済むようにと祈っているよ…それに、身を守るためと言えどヒューマンかアナザーを殺す事になるんだからね…今まで普通に生きてきた人達がさ…。」

「成る程、彩斗リーダーは武器の怖さを知っていますもんね…。

 武器を持つ事でもっと恐ろしい事が起きると感じているようですね。」


アナザーには本当に嘘はつけない。

確かに凛が言う通りの事を俺は心配していた。


「でも…自分だけじゃなくて周りの罪無き人達を生かすために武器を取らなきゃいけない事だってありますよ。」

「…。」

「彩斗リーダー達が武器を手に取ったおかげで、私は地獄から助け出されたんですよ。

 彩斗リーダー達が武器を取って戦ったおかげで私を奴隷にしていたアナザーを討伐した。

 そして、私も殺されてもしょうがない状況だったけど、加奈…今は栞菜だけど命を助けてもらった…。

 彩斗リーダー達が武器を手に取って戦う事を選ばなかったら、私は今も生き地獄の中にいて、クラとも知り合う事も、今ここにいる事も無かったんです。」


俺は顔を上げて凛を見た。

凜を保護したあの土砂降りの駐車場の夜の事は今でもはっきり覚えている。

栞菜がまだ加奈だった時、あの時加奈は充分凛の首を撥ねて殺せたが、殺さなかった。

凛の命を助けた。


「彩斗リーダー、武器はただの道具に過ぎないんですよ。

 人を殺したり傷つけたりも出来るけど、人を守ったり命を助ける事にも使える物なんです。」

「…。」

「あの人達に武器を渡し、きちんと使い方を教えて、その武器を悪用しないように、彩斗リーダー達のように人を守るために、命を助けるために武器を使う事をしっかり教えれば良いと思います。」


凛の言う通りだと思った。

俺の心は少し軽くなった。


「そうだね、凛。

 あの人達に武器の正しい扱い方をしっかり教えようか。

 自分や他の人達を守って命を守れるようにしっかりとね。

 ありがとう、気が楽になったよ。」


俺が答えると凛がにこりとした。


「その通りですよ彩斗リーダー。」


人生の最大のイベントは人との出会いだと言った人がいる。

俺は武器を持ち戦う事を選んだが、そのおかげで色々な人と出会い影響を受け、ある意味で充実した人生を送る事が出来るようになった気がする。

あの時俺が真鈴の言葉に賛同しなかったら、はなちゃん、明石夫婦や加奈、司や忍、喜朗おじやその他様々な人との出会いは無かっただろう。

戦いや武器を通じて知り合った事は皮肉だが。


午後遅くに四郎カラスが戻って来た。

2羽の大きな鷲が四郎カラスと飛んでいて、死霊屋敷の四郎の部屋の窓に飛び込んだ。

た。


やがて人間の姿に戻って服を着た四郎が屋敷から出て来た。

2羽の鷲が窓から飛び立ち、手を振る四郎の周りを旋回して飛んで行った。


「四郎、お帰り。」

「おお、彩斗。

 今帰ったぞ。

 岩井テレサには用件を伝えて返事を貰って来たからな。

 しかし、小田原までの道は少し遠いな。

 流石のわれにも少しきつかったぞ。」


少し息を切らせている四郎に、横に来ていた真鈴が尋ねた。


「それはご苦労様ね四郎。

 ところであの2羽の鷲は何?」

「おお、あれか。

 実は小田原に向かう最中に襲撃されたんだ。

 でかいカラスが襲ってきた。」

「え…?」

「恐らく…藤岡の組織か岩井テレサの対立組織のアナザーだろうな。

 何とか振り切って小田原要塞に辿り着いたぞ。

 岩井テレサの要塞で事情を話したらな、帰りに護衛を付けてくれたんだ。

 要塞内で鷲に変化できるアナザーが2人、帰りの護衛に一緒に来てくれたぞ。」

「成る程~。」

「そして口頭での伝言だと少し不安だったのでな純が伝言を入れたメモリを渡してくれた。

 パソコンで岩井テレサからの伝言、いつヘリを送るとか、あと、判っている範囲でこの死霊屋敷から小田原要塞まで大型バスなどが通れるルートも入っているぞ。

 われも小田原要塞に向かう途中、とても通れそうもなくいなった国道とか落ちかけた橋などを見たからな。

 ここを脱出する時は小田原要塞まで無事辿り着けるルートの参考になるだろう。」

「四郎、それは助かるよ。

 真鈴、ワイバーンメンバーで手が空いている者を暖炉の間に集めてくれ。

 リリーも呼んだ方が良いね。」

「彩斗、コピー!」


真鈴が走って行き、俺と四郎は死霊屋敷に入った。


岩井テレサの伝言を皆で観た。

翌日に小田原要塞に移動する人を運ぶヘリコプターを死霊屋敷に送ると言う事。

その時に大きなプロジェクトの準備にさととまりあを小田原要塞が一緒にヘリコプターに乗ってきて欲しい事。

藤岡の組織と岩井テレサと対立する組織の戦いが激化していて、もはや警察や自衛隊では手が付けられない大事になっている事。

岩井テレサのジョスホールは自分達の拠点などを守るのが精いっぱいでその争いを静観するしかないと言う事。

いざ死霊屋敷を脱出する時は可能な限り迎えの部隊を出動させてなるべき俺達単独で危険な避難をさせないように頑張るとも伝えてくれた。


そして翌日の昼前。

小田原要塞からヘリコプターが飛んで来た。

驚いたのは陸上自衛隊の攻撃ヘリが2機、護衛に付いている事だった。

2機の護衛ヘリコプターが旋回する中で大型ヘリコプターが着陸して追加の救援物資を下ろし、そして小田原要塞に移動するお年寄り達が乗りこんだ。

その中にはあの夜に不安な4歳くらいの女の子を膝に乗せてあやして寝かせたおばあさんも混じっていた。

女の子はおばあさんの体にしがみ付いて泣いていた。

女の子の母親が泣きながらおばあさんに別れを告げて女の子を手元に抱き寄せた。

その他でも、まるで仲の良い身内の様に移動するお年寄りと別れを惜しむ人達が沢山いた。


「彩斗さん。

 この子達をどうかよろしくお守りください。」


おばあさんが目に涙を受かべて俺にそう言って深くお辞儀をした。


「判りました。

 絶対に守ります。

 あなたもどうかご無事で。」


俺も深くお辞儀をした。


さととまりあが俺の横に来た。


「彩斗、何か良く判らないけど私達がテレサの計画に必要らしいわね。

 行って来るわ。

 頑張ってここを守ってね。

 岩井テレサは本当ははなちゃんも来て欲しかったようだけど、はなちゃんは今ここを離れるわけにいかないものね。」


圭子さんに抱かれたはなちゃんが手を上げた。


「さと、まりあ、わらわ達は充分に心を繋げたじゃの!

 もしもわらわの力が必要になった時は小田原から声を掛ければきっとわらわの心に届くじゃの!」

「そうね、はなちゃんの力が必要になったら小田原から声を掛けるわ。

 彩斗、ここを宜しく守ってね。」

「さと、まりあ、判ったよ。

 岩井テレサの計画が上手く行く様に手伝ってあげて。

 行ってらっしゃい。」


やがてさととまりあ、お年寄り達を乗せたヘリコプターが離陸をして死霊屋敷の周りを旋回して小田原要塞に機首を向けて飛び立った。


皆がヘリコプターが見えなくなるまで手を振って見送った。


手を振る人々が解散し始めた時、真鈴のスマホの着信音が鳴った。

スマホを手に取った真鈴の顔が引き締まった。


「彩斗、乾から電話だよ!

 今出るから…もしもし、恭介!あなた大丈夫?

 え?え?…判った、ちょっと皆来て!」


真鈴がスマホをスピーカーモードにして俺達ワイバーンメンバーが集まった。

あのとてつもなく強く、俺が知る限りで最強のアナザーである乾、今までどんな戦いでも息も切らさずクールにこなしてきた乾の疲労してゼイゼイと息を切らした声が聞こえて来て、俺達は緊張した。









続く



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